第3章 森でのじゃと
第68話 のじゃとわんちゃん
お詫び:取り下げた覚えはありませんでしたが、取り下げがされてました。
ご迷惑をおかけしました。
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そこはまるで楽園だった。
柔らかい風が吹き、花は咲き乱れ、そこにいる全員の顔は笑顔だった。
争いのない皆が安心して暮らせる世界・・・。
そんな世界の中、俺は安らかに眠っていた。
やがて降り注ぐ日の光が強くなり眩しいと感じていると、誰かが俺の上に覆いかぶさり日の光を遮ってくれる。
そしてその人は俺の頬を優しく撫で、キスでもしてくれるのか顔を近づけて来る。
俺はそれに応えようと、俺からも顔を近づける。俺とその人が交わる寸前、その人が声をかけて来た。
『いやぁ一郎君、君はかわいいねぇ?』
わんこ神様!?
「(ぬっほおおおおおおおおおおお!?)」
俺は飛び起きた!どうやら夢だった様だ。・・・何か前にも同じ様な事あったな。
「(・・・っ!あがっ!ぐぎぃっ!?)」
飛び起きた後、一瞬遅れて俺の体に激痛が走った。
暫くのたうち回った後、体をくねらすと余計に痛いとようやく気づき、なるべく動かない様に我慢をする。
すると段々とましになり、なんとか落ち着けた。
「(クソ痛ぇ・・・)」
(痛みを感じるという事は生きているという事じゃ。妾に感謝せい童)
「(・・・っ!?誰っ・・・!)」
俺が痛みに愚痴をこぼすと、それに対して声が返ってきた。まさか誰かが応えると思っていなかった俺は吃驚して又もや飛び起きた。しかし、先程と同じ様に再び地面をのたうち回ってしまう。
「(あだだだっ!・・・ぐぅ・・・!)」
「大人しくしとるほうがええのじゃ童。死なぬ程度にしか治しておらぬ故」
そんな俺に、又もや誰かが声をかけて来た。しかし、地面をのたうち回っている俺には応える余裕はなかった。
声をかけて来た者は、これだと話が進まないと感じたのか、何やら唱え始めた。
「彼の者に癒しを、ヒール!・・・これで口が利けるのじゃ?」
「(ぬ・・・!?ああ、まだ変な感じはするが・・・。死にかけなのを助けてもらったみたいだな。ありがとう誰とも知らぬひとぉぉぉっ!?)」
「む?なんじゃ?」
声をかけて来た人はどうやら回復魔法をかけてくれたらしく、俺は立ち上がれるまで回復した。
瀕死だった筈の俺を助けたみたいな事も言っていたので、それも併せてお礼を言いつつその人の方へ振り向くと、そこにいたのは・・・。
「(あ・・・あの時のやばい奴!)」
そこにいたのは、俺達にダンジョン移動をしようと決意させた原因である、竜犬とかいうやばい奴だった。
俺は無駄だと解りつつも慌てて戦闘が出来る様に構える。
しかし、そんな俺に対して相手は何の脅威も感じていないのか、のんびりと声をかけて来た。
「命の恩人に対してやばい奴とはなんじゃ。今も回復させてやったであろうに」
竜犬のそんな言葉に、確かにとは思った。だが・・・
「(それは感謝する・・・。だがお前は、長谷川・・・ヴォルフか?まぁどっちでもいい。あいつの仲間なんじゃないのか・・・?)」
俺は竜犬に対しての疑念を聞いてみる。こいつは俺達に襲い掛かっては来なかったが、状況的には長谷川の仲間という可能性があった。
俺はそれを聞かずにはいられなかったので聞いてみる。すると竜犬は軽い感じで答えて来た。
「まぁそうじゃな、妾はあの小物の陣営に属しておったのじゃ」
「(や・・・やっぱり!)」
俺はその答えを聞いてここからの行動を考える。しかしどう動いてもこいつからは逃げられそうにない。
俺が何かをしようとしている気配を感じたのか、竜犬は話しかけて来た。
「まぁ言うても無駄かも知れぬが、安心せい。妾は小物の陣営に属しておったと言っても本当にただ居ただけじゃ。小物の行動については一切関与しとらんし、する気もない」
「(な・・・なに?一体それはどういうことだ?)」
俺は相変わらずどうするか考えたままだったが、時間稼ぎと状況を見極めるために会話を続けてみる。
竜犬は、俺が会話を続けようとしたことが以外だったのか少し眼をすがめ、俺の問いに対して答えはじめた。
「妾は故あって、あやつの事を観察をしておったのじゃ。だから陣営に属する形にはなっておったが、観察する以外はなにもしておらんのじゃ」
「(なら一度俺達の前に姿を見せたのは・・・?)」
「ただ散歩をしておっただけじゃが?なんじゃ、妾は散歩もしてはいかんのかえ?」
竜犬は心外そうな顔をして、最近の若いモノはとか、妾だってたまには動くのじゃ、だのグチグチ言いながら怒っていた。
しかし口で愚痴を言うだけで、俺に襲い掛かってきたり等手を出したりはしてこなかった。
強さはぶっとんでそうだけど、意外と平和的な魔物なのだろうか?そう思った俺は、これなら大丈夫かもと少し警戒を緩め、友好的に接してみる事にした。
「(すまない、俺が悪かった。あんたの圧倒的な強さを感じてビビッてたんだ)」
「む?おお、そうかえそうかえ。まぁ大体の者が妾を前にすると同じようになるのでな、気にするでないのじゃ」
「(まぁそうだろうな・・・。あー、ところで俺は一狼って言うんだけど、あんたの名前は?)」
「・・・積極的じゃのぉ童よ。まぁよい、妾はニア。今はまだこれしか教えてやらんのじゃ」
「(何かわからんがニアだな?よろしく頼む)」
「うむ」
竜犬には先ず謝り、そして自己紹介をしてみた。すると、感触は存外よく、これなら戦闘になる事は無いだろうとほっとした。
そしていい感じになった今なら、すんなりと俺の事を見逃してくれるかなと思い、ニアに別れの挨拶をしてみる。
「(ニア、世話になったな、ありがとう。んで、俺にはちょっとやることがあってな、だからもう行くことにするよ。本当に助かった、ありがとう!)」
ごぶ助達の事が気になるので、移動先に急いでいかなきゃなと思い移動を始めようとしたのだが・・・。
「待て童」
ニアに呼び止められてしまった・・・。やはりお前は殺すとか言って襲い掛かってくるのだろうか・・・。
俺は緊張しながらニアへと返事を返した。
「(な・・・なんだニア?何かあったか・・・?)」
「うむ、あるのじゃ」
俺はゴクリと唾を飲みこみ、落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせて、なるべく冷静にニアへと問いかける。
「(一体それは何だ・・・?言っておくが俺はニアよりかは大分弱い。だから力を貸せとか言われても無理だぞ?)」
「そんな事は言わんのじゃ」
ニアはやれやれといった感じで言ってくる。ならば一体何だ・・・?
俺はニアの言葉の続きを待つ。
「童よ、何故妾がわざわざ主を助けたと思っておる?」
「(そ・・・それは・・・ニアが超絶強くて優しい美人だからです)」
俺は助かる可能性を上げるために、ニアをヨイショしておいた。少しでも効果あればいいなぁと思いつつ、ニアの反応をみる。
「そんなことを言っても何も良い事は無いのじゃ。だがたまたま美味しい果物が余っているのであげるのじゃ」
「(ありがとうございます、超絶強くて優しく宇宙一美人なニアさん)」
「うむ」
こ う か は ば つ ぐ ん だ 。
これならヨイショしながらフェードアウトすればいけるんじゃ?
俺はニアから謎の果物を受け取りつつ試してみる事にした。
「(ありがとうございます、強く優しく美しいお嫁さんにしたい魔物ナンバーワンのニア様。それでは俺はこれで失礼いたします)」
俺はニコニコのニアから果物を受け取ると、そのまま踵を返して歩き出した。
「待て童」
しかし回り込まれてしまった。やっぱだめか・・・。
俺は覚悟を決めて話を聞いてみる事にした。
「(で・・・俺を助けた理由って何だ・・・?なるべくなら殺したりはしないでくれるとありがたい・・・)」
「殺しはせん。多分」
・・・。
「見込みがないと思わぬ限りは何もせんのじゃ。だから小物も生きておったじゃろう?まぁもう少ししてあのままだったら解らんかったがのお」
「(あのままとは・・・?下衆な性格だった事か?)」
「それはどうでもよいのじゃ」
「(なら一体何があのままだったらダメだったんだ?)」
話が読めない・・・。なので、俺はまず一番の結論を聞くことにしてみた。
「(いや、それよりもだ、まずは助けた理由とやらを聞かせてくれないか?それを聞いてからじゃないと解らなさそうだ)」
「よいじゃろう。童を助けた理由は単純じゃ、お主・・・神が使わせし転生者じゃろう?」
俺は確信を持ってそう言ってきたニアに衝撃を受けた。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
今回より第3章となっております。面白くなるように頑張っていきますので、応援よろしくお願いします。
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『女の子になったと思ったら霊が見えるようになった話』 ※一応ホラーです。
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