第59話 虫ダンジョンとわんちゃん2

 俺は改めて思った。ダンジョンとは摩訶不思議な物であると・・・。


「わう、キノコがあるわう」


「あう、こっちには木の実も落ちてるあう」


 ニコは木からニョッキリと生えているキノコを採り、ミコは何の木の実か定かではないが恐らく食べれる木の実を拾う。


「(小さいが川も流れているみたいだな)」


 そして俺は森の中に流れる川を見つける。


「(本当に不思議だなぁ・・・、ダンジョンって・・・)」


 俺は、今俺達がいる森の中を見渡しながらそう呟いてしまう。

 そう、目の前に広がるこの森が存在するのはダンジョンの中、今俺達が攻め込んでいるダンジョンの第二階層なのだ。


「わうわう、もっとキノコ集めるわう」


「あう、お肉もほしいあう」


「わう!お肉いいわう!」


 俺は食べ物の事を話す二人をボケーっと見ていた・・・。そうしていた時、森の奥から何かがこちらへ来る音が聞こえて来た。


「(・・・っは!そうだボケっとしてる場合じゃない!ニコ、ミコ、楽しく食材探ししてる場合じゃないぞっ!ここは森に見えてもダンジョンの中だ!)」


 俺はハッと今いる場所を思い出し二人に注意を促す。俺に言われて二人も、そういえばと今いる場所が何処なのかを思い出したみたいで、持っていたキノコや木の実を放りだし近づいてくる音に戦闘態勢をとった。

 やがて、遠くに聞こえていた音が近くなり、音を出していた何者かが現れた。


「「「キチキチキチ・・・」」」


 現れたのは大きな蜘蛛で、その蜘蛛は3匹いた。とりあえず鑑定をかけてみる。



 名前:

 種族:フォレストスパイダー

 年齢:-

 レベル:4

 str:42

 vit:34

 agi:59

 dex:51

 int:15

 luk:16

 スキル:粘着糸

 ユニークスキル: 

 称号:



「(左と真ん中の奴は俺がやる。二人は右のを頼む。あの蜘蛛のステータスは二人の半分くらいで、スキルは恐らく粘着性の糸を放ってくるから気を付けろ)」


「わう!」


「あう!」


 相手は直ぐに攻撃してきそうだったので、鑑定結果と担当の敵を簡単に伝え、俺は攻撃を仕掛け始めた。

 流石にこれくらいの敵だとスキルを使う必要もないと思ったので、一気に敵へと近づく。

 まずは横に並んだ3匹の中央にいた敵へと近づき、左側の敵に向けて吹き飛ばすようにパンチをする。真ん中にいた敵は俺のパンチを受けて凄い勢いで吹き飛び、そのまま左の敵にぶつかり2匹とも重なり合って倒れた。

 俺は直ぐに倒れた2匹に突っ込んで追撃でパンチを繰り出す。すると、パンチを受けた2匹の敵は直ぐに消滅しドロップアイテムへと変わった。

 ニコとミコはどんな感じだと二人の方を見ると、ニコが敵の正面に立ち、ミコが後ろから攻撃をしていた。

 恐らくだが、ニコが敵の気を引いている内にミコが後ろに回り込んだのだろう。うまいこと挟み撃ちに持って行った形だな。

 そのまま周囲を警戒しながら見ていたが、直ぐに決着がついた。


「(おつかれ二人共、怪我はないか?)」


 敵を倒した二人にそう聞いたが、まったくの無傷で勝ったらしいので褒めておいた。ドロップアイテムを回収してから、ミコへと話しかける。


「(ミコ、ココの階層でも強そうな気配を見つけたら教えてくれないか?多分だが、基本的には1階層と同じで、強い敵が3階層への道を守っていると思うんだよな)」


「あう、わかったあう。けどこの森かなり大きいみたいで、見つけるのに時間がかかるかもあう」


「(そうか、まあそれは仕方ないさ。とりあえずは適当に動き回る事にするから、見つけたら教えてくれ)」


 この森はミコの索敵が届く範囲よりかは大きいみたいだ。本当に不思議だな・・・ダンジョン・・・。

 そんな事を思いながら早速動こうとした時、ニコが声を上げる。


「わう、ミコに追加でまほう使っておくわう。わうぅ~敵を感じる力あがるわう!」


 どうやらニコは、ミコがより索敵できるように魔法を使ってくれたみたいだ。効果のほどは解らないが、今よりかは見つけやすくなるのだろう。


「(ナイスだニコ。さぁ進もうか)」


 ミコの索敵精度も上がった?ところで2階層の探索を再開することにする。

 暫くは、あっちへ行きこっちへ行きと動き回っていたのだが、ニコの魔法の効果でミコの索敵の精度が上がり、結構細かく敵の位置を感知できるようになり、その結果あまり敵に出会わない様にして進むことが出来た。

 敵に出会わずスムーズに探索できたからか、やがてミコが強い気配を見つけたと言ってきた。俺達はミコが見つけたその気配の方向へと進むことにした。


「あう、もうちょっとで強そうな敵がみえるはずあう」


 敵にかなり近づいたのかミコがそう言ってきたので警戒を強める。それから少し進むと俺にも敵の姿が確認できた。どうやら今回も複数の敵が居る様で、頭が二つあるデカいムカデが1匹と、外の森で見たことのあるムカデが5匹いた。

 まだあちらは俺達に気付いていないようだったので、先に敵のステータスを確認する為に鑑定をかけることにした。



 名前:

 種族:ダブルヘッドセンチピード

 年齢:-

 レベル:2

 str:80

 vit:103

 agi:91

 dex:78

 int:21

 luk:13

 スキル:毒攻撃・弱 毒噴射

 ユニークスキル:

 称号:階層主



「(二人共、当たりの様だ。あの頭が二つあるムカデが階層主らしい)」


 二人にそう言って確認したステータスも教えておく。それからどう戦うかの作戦を少し話し合い、作戦が決まったところでいざ戦闘開始だ!

 と言っても、せっかくまだ敵に見つかっていないので、奇襲をかける為に隠れたまま攻撃を仕掛ける事にした。


「(それじゃあニコ、頼む)」


「わう、まかせるわう。わうぅ~スキル強くなれわう!」


 作戦は簡単だ。俺に向けてニコの補助魔法を使ってもらい、後は俺が『黒風』で仕留めるのだ。まさにパワーイズ力という脳筋戦法である。


「(ありがとうニコ。それじゃあやってみるか、黒き風よ相手を切り刻めっ!)」


 こっそりと叫びスキルを発動させ、敵に黒い風を放った。すると・・・。


「(うわ・・・、なんだあれ・・・。何か雷出てない?)」


 その渦巻く黒い風の中には気圧の極端な変化からか雷光が見え、乱気流と雷で敵が酷い事になっていた。


「わうぅん・・・」


「あうぅん・・・」


 二人は雷が発する音が怖かったのか、両手で目を塞いでしゃがみ込み、プルプルと体を震わせていた。


「(耳を塞がないと意味がないかそれ・・・?)」


 敵の方を見つつも、しゃがみ込んでいる二人とチラチラと確認しながら俺はそう言った。頭隠して尻隠さずみたいな感じになっているので気になってショウガナイ。

 そんな二人をチラチラと見ていたのだが、やがて風が収まってきた。


「(ほら、おさまったぞ二人共。そして戦いは終わりだ)」


 目を塞いでいた両手を取りながら恐る恐る頭を上げた二人に、俺は敵がいた位置を足の先で指し示す。

 その場所に敵の姿はなく、あるのは破壊の後とドロップアイテムのみであった。


「(本当に凄い威力だな『黒風』は。当たりスキルだわ)」


 正直、『黒風』が進化特典のスキルだと言われても信じる程の結果だ。今回はブーストしてもらってこの威力だが、使い込めばもしかしたら素でこの威力になるかもしれないな・・・。


「わう・・・怖かったわう・・・」


「あうぅ・・・」


「(あー、ごめんな?俺もあんなになると思ってなくてな。けどあれは俺が使ったスキルだし安全だから怖くないんだぞ?)」


 未だに二人はプルプルしていたので、取りあえず謝りあやしておいた。二人は最終的に、確かに俺が使っているなら怖くないかも?となったみたいで、俺がドロップアイテムを回収し終わる頃にはすっかり元気になっていた。


「(ふぅ、二人共元気が出たみたいで良かったわ・・・。っと、ダンジョン入って来て結構経ったしそろそろ休憩するか・・・おーい二人共)」


 俺は元気を取り戻しわちゃわちゃしていた二人を呼び寄せる。


「(二人共、ダンジョン入って来てから結構時間が経ったから休憩しよう)」


「わう、わかったわう!」


「あう、ご飯あう?」


「(そうだな、ご飯を食べてそれから・・・)」


 俺はご飯の後交代で仮眠を取ろうと言おうとしたが、ココでふと思い出す。


「(それから・・・少し実験したいことがあるから着いてきてくれ)」


「わう?」


「あう?」


 俺は二人にそう言い、まずはご飯を食べることにして、スキルを使い食材を取り出した。



 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・




 ≪???≫


 ある石造りの部屋で数体の影が集まり、何やら話していた。


「ああ?使えねえ雑魚どもだなぁ・・・。婆は見てるだけだし、お前も動けねえし、どいつもこいつも・・・」


 その中で恐らく上位者である一人がそう発言する。


 他の者は何も言わず、その者の言葉をジッと聞いていた。


「はぁー・・・しゃあねぇ、俺が動くかぁ・・・。けどもうちょいあの玩具で遊んでから動くかな」


 上位者はそう言い、何やらニヤニヤとした表情を浮かべていた。


「じゃー、そういう事で。取りあえずは今まで通りでヨロー。俺はあの玩具で遊んでくるんでシクヨロー」


 そう言って上位者は石造りの部屋を出ていった。後に残された者達は上位者が言っていた事を実行する為にそれぞれが動き出す。


 ある者は、自分達の拠点を守るために策を練り。


 ある者は、配下をそろえ侵略の準備を。


 ある者は、その配下を魔力を使い生成する。




 全ては、目標とする迷宮核奪取の為・・・。




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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

もしかしたら12/28は更新お休みするかもしれません。お休みしたらごめんなさい。

「面白い」「続きが気になる」「黒風様?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると 黒風が、シップウージンラーイします。

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 『女の子になったと思ったら霊が見えるようになった話』 ※一応ホラーです。

 https://kakuyomu.jp/works/16816927859115427347


 お詫び:58話をミスで一度取り下げてしまいました。不思議に思った方がいたらすいませんでした。

 追記:少しだけ修正しました。 最後の方の


 俺達は2層の様相を見て驚き立ち止まり、知らず知らずの内に口が開き間抜けな表情をしていた。

                 ↓

 俺達は2層の様相を見て驚き、知らず知らずの内に口が開いて間抜けな表情をさらしながら突っ立っていた。

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