第58話 虫ダンジョンとわんちゃん

 ドロップアイテムが散乱する中、こんもりと土が盛り上がり山になった場所にぽっかりと開く穴があった。


「わう!ニコ達のところと同じ穴わう!」


「あう!ミコ達のおうちといっしょあう!」


「(ああ、そうだな。一緒だ、俺達のダンジョンの入口と)」


 俺達の探していた、敵性ダンジョンの入口である。


「(さて・・・、目標だった敵のダンジョンを見つけたわけなんだが・・・。ニコ!ミコ!少し頼みがある)」


「わう?」


「あう?」


「(ざっとだがドロップアイテムを回収しておきたい。手伝ってくれないか?)」


 周りに散乱しているドロップアイテムを見ながら二人に向かってそう言った。せっかく俺もアイテムボックス的なスキルを手に入れたのだ、ダンジョン内がどうなっているかも分からないし、とりあえず拾えるだけは拾っておいて損はないだろう。


「わう!わかったわう!」


「あう!わかったあう!」


「(よし、じゃあ拾った物をこれに入れていってくれ)」


 ニコとミコは俺の頼みを快く引き受けてくれたので、『レモンの入れもん』スキルを発動させて50cm程の大きさをしたレモン型の入れ物出現させる。俺は二人にその入れ物へドロップアイテムをドンドン入れていってくれと二人に頼んだ。


「わう?これに入れるわう?」


「あう?いれるあう?」


 俺の出現させたレモン型の入れ物をテシテシと手で触りながら二人は俺に聞いてきたので、俺は二人に実演してみる事にした。


「(そうだ、こうやってだな・・・)」


 すぐ傍に落ちていた魔石を1つ咥え、それを入れ物に押し付ける。すると魔石はスルスルっと入れ物に吸い込まれるように入っていった。二人はそれを見て驚き、再び入れ物をテシテシと叩き始めた。


「(はは、不思議だろう?まぁこんな感じで一杯物が入る入れ物なんだ。さぁ二人とも、いつまでも不思議がって入れ物を触っていないで落ちてる物を回収していってくれ)」


 入れ物を不思議そうに触っていた二人にそう促し、散乱しているドロップアイテムをざっとだが回収してもらう。

 もちろん俺も回収はするのだが、いかんせん4足歩行なのであまり効率が良くない。途中でスキルを使って回収することを思いついたので、『黒風』を使って物を浮かせて運んだのだがあまり効率は上がらなかった。まだ使い慣れていないので繊細な動きができなかったのだ。

 そうしている内に、ニコとミコが頑張り、大体回収が完了したのでスキルを解除してレモン型の入れ物を消す。


「(ありがとうな二人とも、助かったよ。よし、それじゃあいよいよダンジョンに入るか・・・)」


 ドロップアイテムの回収を頑張ってくれた二人に礼を言ってダンジョンの方を見る。

 ダンジョンの入口は依然変わらず、俺達の前にぽっかりと黒い穴をさらしていた。

 俺はニコとミコに、ココからは俺の背中から降りて歩いて行ってくれと頼んだ。ダンジョン内ではそれほど速く移動しないし、咄嗟の時に危ないかもしれないからだ。


「わう!じゃあ全員にまほうかけるわう!わうわう・・・全部強くなるわう!」


 俺が二人にそう言うとニコが魔法を使ってくれたのだが・・・。


「(なぁニコ?それはどういう効果の魔法なんだ?)」


 ニコの詠唱を聞いた俺は疑問に思い聞いてしまった。ニコはざっくりと「全部強くなれ」と詠唱したのだが、それは一体どのような効果になるのだろう?


「わう?とりあえず全部強くなるわう?」


「(そ・・・そうか、ありがとうな?)」


 ニコからはイマイチ明確な答えは返ってこなかった。まぁざっくりと身体能力が全部上がるとでも思っていればいいのかもしれないな。

 気を取り直して、ダンジョンの中へと入ることにした。

 フォーメーションは、俺とミコが横並びで先頭に立ち、その後ろにニコが進む感じにしてみた。

 ニコとミコにも戦闘はしてもらうが、今回は余り時間をかけていられないので、俺も普通に戦闘に参加することにした。


「(ミコ、取りあえず一番強い敵が居そうな所が次の階層へ繋がっている筈だ。だから強そうな気配を察知したら教えてくれ)」


「あう!わかったあう!」


 恐らく次の階層への通路は中ボス的な魔物が守っている筈なので、強そうな気配を感じたら教えてくれるようにミコへ頼んでおいた。

 そう言ったところで、俺達はダンジョンの中を進んで行く事にした。

 第1階層はそこまで分かれ道もなく、ポツポツと現れる雑魚を3人で倒しながら進んでいると、ミコが強い気配を察知した。そしてその強い気配の方へと案内をしてもらい、気配の元へたどり着くと広めの部屋へとたどり着いた。


「(さすがだミコ、当たりみたいだ!)」


「あう!」


 広めの部屋の中には大きな魔物が一匹と小さな魔物が10匹いた。



 名前:

 種族:幻粉蝶

 年齢:-

 レベル:1

 str:25

 vit:36

 agi:58

 dex:40

 int:13

 luk:18

 スキル:幻鱗粉

 ユニークスキル: 

 称号:階層主


 名前:

 種族:肉食蝶

 年齢:-

 レベル:1

 str:7

 vit:13

 agi:26

 dex:10

 int:3

 luk:8

 スキル:突き刺し

 ユニークスキル: 

 称号:



 部屋の中にいたのは蝶型の魔物だった。名前やスキルから察するに、大きな蝶は幻を見せて惑わせて来る魔物で、小さな蝶はあの口吻で突き刺してくるのだろう。

 しかし、今の俺には何ら障害になる魔物ではなかった。


「(二人とも、あいつらは俺がやるな?切り裂け黒風!)」


 ニコとミコに一言断り、『黒風』を蝶達に向かい発動させる。黒い風は蝶達をあっという間に飲み込みあっさりと消し去る。そして蝶達が居た場所にはアイテムだけがぽつんと残った。


「(よし、アイテムだけ拾って次に行こう)」


 二人にそう言いドロップアイテムの回収を頼む。ニコとミコは元気に返事をしてからドロップアイテムを拾い出すが、あるアイテムを触った時に二人から声が上がる。


「わう!?わうわう!」


「あううぅ!?」


「(あー、それは大丈夫だ二人共)」


 二人は『1層ボス討伐証』を触った時にでる光の球に驚いて声を出してしまったようだ。確かにあれは初見だと驚くのも無理はない。

 俺は二人に、あれはダンジョン1階層のボスを倒したという証になるすごい物と説明すると、二人は顔をニッコリさせて喜んでいた。

 そんな二人に2階層へ行こうと声をかけて促し、俺達は2階層へと続く道を進みだしたのだが、俺は前回のダンジョン攻めの時の事を思い出した。

 前回はダンジョン2階層へ降りた時、たまたま転移罠を踏みボスの間近へと行く事が出来た。

 なのでもしかしたら今回も同じように行くのではないかと思い、今日はまだ使っていなかった『ワンチャン』を発動させてみる事にした。


「(頼むぞーっと・・・。『ワンチャン』発動っと)」


「わう?」


「あう?」


「(あー、なんでもない。ダンジョン探索が上手くいきます様にって祈っただけさ)」


 つい口に出して発動したのを聞かれて不思議がられたが、何でもないと誤魔化しておく。正直このスキルは博打みたいなものなので、俺は何かあったらいいな程度に思っている。だから話す事はやめておいた。


「(さー、そんな事より2層が見えて来たぞー?)」


 丁度2層が見えてきたので、誤魔化すようにそのことを口に出す。二人はそれにすんなりとかかり、2層はどんなのだろうと話し出した。

 確か前は迷路だったと二人に話そうとしたところで2層に着いた。そして着いた2層を見て驚いてしまい、前の迷路の事は頭から吹き飛んだ。


「わうぅ・・・、すごいわう」


「あう、ひろいあう」


「(本当だな・・・ダンジョンって不思議だな・・・)」


 俺達は2層の様相を見て驚き、知らず知らずの内に口が開いて間抜けな表情をさらしながら突っ立っていた。



 何とこのダンジョンの2層、壁が無い広大な森になっていたのだ。



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