第56話 ダンジョン移動の話し合いのわんちゃん
「(実は・・・)」
俺はまず、ポンコにダンジョン探索を始めてから現在までの経緯をざっと話した。そしてその話の最後に、俺達の今の戦力では到底かなわないような力を持った魔物と出会ってしまった、だから逃げるしかないという事をポンコに伝えた。
ポンコは俺の話を聞いて、軽く答えを返してきた。
(ハイ、解リマシタ)
「(・・・いいのか?流石にもうちょっと何か言われるかと思ったんだが?)」
(イえ?特ニ言う事ハアリマせんよ?)
ポンコはこの場所の事を『いい場所』と言っていたので、そんな場所を捨てて移動すると言う俺達に何か一言くらいは言ってくるかと思っていた。
しかし結果は、解りました、特にいう事はない、との事だったので、何もないならいいかと思いダンジョン移動について話を詰めていく事にする。
「(そうか。じゃあダンジョン移動について色々聞きたいんだがいいか?)」
(ハイ、何をお聞キニナリタイのですカ?)
「(それじゃあまず・・・もし今すぐ移動するって言ったらすぐ出来るものなのか?)」
(ハイ、場所の選択等ガお決マリでシタラ、5~10分程で移動でキマす)
「(ふむふむ。じゃあ次に、前に聞いた時には移動しても結局狙われるって言ってたけど、それについて解決策とかないのか?)」
まずは気になった懸念点を聞いてみる。これでポンコが「ある」と言ってくれれば幾分か気が楽になるのだが・・・。
(ハイ、アリマす)
ポンコはこの問いに「ある」と答えてくれた。光明が見えた気がした俺は、ポンコの話の続きを静かに待つ。
(方法ハ2つアリマす。1つ目ハ移動先を龍脈ガ通ってイナイ位置ニシて、尚且つ移動シてカラ龍脈を一切使ワずニ他の迷宮カラ身を隠す方法です。2つ目ハポンコを成長サせて他の迷宮カラ狙ワれナくする方法です)
ポンコは2つの解決策を提示して来た。どちらも一長一短ありそうな感じなので、詳しく聞いてみる事にする。
「(なるほど、質問がいくつかあるんだがいいか?)」
(ハイ、ポンコに答えラれる事ナラ)
「(それじゃあまず、1つ目の方法なんだが・・・静かに暮らすにはいいと思うんだが何かメリットやデメリットがあったりするのか?)」
(お答えシマす。メリットハ他の迷宮カラの探知を逃れラれるので、敵ガ攻めて来る事ガほぼ無くナりマす。デメリットとシてハ、迷宮ハ存在するダけでも魔力を消費シてイくのですガ、1つ目の方法ダと龍脈カラ魔素を取リ入れラれナイ状態ニナリマすので、その内魔力ガ尽キてポンコハ終ワリマす)
「(それは・・・あまりよろしくないな・・・)」
(ハイ、よろシくナイです)
ポンコが提示した1つ目の方法は、余り良くない方法だった。
第1に、静かに暮らすことになりそうなので、理不尽に対抗する為に最強になるという目標がある俺にとって、これは強くなるためにはそぐわないやり方である。
第2に、その状態を長く続けるとポンコが死んでしまうからだ。そしてポンコが死んでしまうと、もしかするとポンコの『守護者』となったごぶ助も連鎖的に死んでしまうかもしれないので絶対だめだ。
しかし1つ目の方法は、一時的にならアリかもしれないと考え、頭の片隅に残しておいて、2つ目の方法について聞くことにする。
「(次の質問だ。2つ目の方法でポンコを成長させるといったが、具体的には?)」
(はイ、具体的ニ言いマすと、迷宮核を後1つ取り込みマすと狙わレない基準ノ1つニ達すルかと思わレマス。ソの状態ニしテ更ニ場所を移セば、他の迷宮がポンコを美味い獲物と見ル事はなくなルかと思われマス)
「(あと1個ダンジョンコアを取り込ませればいいのか!?)」
存外緩かった成長方法にこれならばと一瞬思ったのだが・・・。
「(でも、ダンジョン移動をせざるを得なくなった原因が、恐らくその後1個が取れそうなダンジョンにいると思うんだよな・・・)」
2つ目の方法を取りポンコを成長させようと思うと、ダンジョン移動を決めた理由がいると思われるダンジョンに攻めいらねばならないという、矛盾した状態になってしまう。
さすがにそれは・・・と頭を悩ませていると、ポンコが話しかけてきた。
(一狼様、恐ラくにはナるのですガ、いい知らせガありマス)
「(いい知らせ・・・?)」
(はイ、一朗様カら聞いたお話カら推察シたのですガ、今ポンコの近クに来ている迷宮は2つあると思わレマス)
「(何っ!?本当かっ!?)」
(はイ、確定デはありマせんガあると思われマス)
ポンコは今の俺達にとってとてもいい情報を教えてくれた。その情報の詳しい話が聞きたかったので、もう少し話を聞いてみる事にした。
「(因みにポンコ、何でダンジョンが2つあると思ったのか教えてくれないか?もし理由があるならそれを元に今後の事を考えてみたいんだ)」
(はイ、お答えしマス。ポンコが2つ迷宮がアると何故推察シたのか、そレは一狼様方が倒さレた魔物の種類ニありマス)
「(魔物の種類・・・?それで迷宮が2つある事が何でわかるんだ?)」
(はイ、それは・・・)
ポンコは魔物の種類から迷宮が2つある事を推察したと言う。俺がそれを疑問に思い聞いてみると、知らなかった事と共にその理由を話してくれた。
ポンコが言うには、他のダンジョンを狙って移動してくるダンジョンは比較的若いダンジョンだけらしい。十分に育ったダンジョンは、自分に合った良い場所を定位置と決めて動く事が無くなるそうなのだ。
そして育ったダンジョンならそうでも無いのだが、若いダンジョンだと生み出す魔物は同じ系統を生み出す事がほとんどで、獣と虫といった別系統の魔物が出たのならば、それは・・・。
(そレは即ち、ダンジョンが2ツあるト言う事ナのでス)
「(なるほどな・・・)」
ポンコの教えてくれたことについてよく考えてみる。
魔物の種類からポンコが推察したダンジョンが2つあるという説、ダンジョンの本体ともいうべきポンコが言うのならば正解なのだろう。
ならそれを前提に行動してみてもいいのではないだろうか?だが最後に一つだけ懸念点があったので聞いてみる事にした。
「(ポンコ、最後に1つだけ聞きたいんだが・・・やばい魔物が居ない方のダンジョン、そっちにもやばい奴がいるって可能性はあるのか・・・?)」
疑問に思った重要な事を聞いてみた。もしも両方共に、俺達の手に負えないやばい魔物がいるならばお手上げになるからだ。
(はイ、可能性ダけなラありマス。しカしトても低い確率でス)
「(それはほぼないってことでいいのか?)」
(はイ、今の一狼様ガステータスを確認デきない魔物がイるとすれば、迷宮だと移動を止めタクラスにしか居ナい筈でス。今回一狼様が出会っテしマった強力ナ魔物は本来若い迷宮ニは居ナい筈のイレギュラーな存在ですのデ、まず出会う事はナイでしょウ)
「(そうか・・・だとしたら一安心だな)」
(はイ、よっぽど運ガ悪くなイ限り大丈夫でス、問題ありマせン)
「(・・・なんか急にダメな気がしてきた)」
ヤバい魔物はまず居ないと言ったので安心したのだが、最後の一言がフラグ過ぎてダメな気がするんだが?ポンコ???
「ごぶ、大丈夫ごぶ。我は運がいいごぶ。だからやばい敵はでてこないはずごぶ」
さらにフラグ臭くなったんだが?ごぶ助???
「がる、そうが「(いわせねぇよ!?ニコパパ!)」
更にニコパパがフラグを重ねてこようとしたので慌てて止めに入った。なんだウチの仲間たちは・・・実は敵なのか?
「(ふぅ・・・、脱線仕掛けたが話を戻すとして、2つある内の一方、虫系統のダンジョンにはヤバい魔物が居ないはずだからそちらへ行き、そしてダンジョンコアを取って来てポンコに取り込ませる。そしてその後ダンジョン移動を行えば、他のダンジョンに狙われることもない筈。そういう事でいいんだなポンコ?)」
(はイ、そうデス)
「(皆、もしかしたらこの案が終わるまでにやばい魔物に攻め込まれるって可能性もなくはない、だけどやばいと思うギリギリまでこの案を実行しようと思うんだがいいか?)」
「ごぶ、いいと思うごぶ」
「がる、もとより俺達コボルトはボスについて行くがる。つまり賛成がる」
(ポンコも賛成でス。移動先の選定等をシておきマすネ)
皆が俺の言った案に賛成し、ポンコはダンジョンの移動先まで探しておいてくれると言う。
そうして皆の取るべき方針が固まり、早速明日から動く事に決めた俺達は、今日はもう休むことにした。
俺やニコママチームはあいつに出会って受けたショックもあったので精神的にも疲れていた。なのでニコママ達は、休むと決まったら速攻眠りについてしまった。
俺も自分では気づいていなかったが大分疲れていたみたいで、話がまとまった後急に眠気が襲ってきた。
一応寝る前にポンコとごぶ助の所へ行き、もし夜中にダンジョンへと敵が侵入してきたら対処等は任せるとだけ頼んで眠りにつく事にした。
ポンコとごぶ助は任せろと言ってくれたので、俺は安心して夢の世界へと旅立った・・・。
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「(うぅ~ん・・・、・・・朝か、ふぅあ~)」
朝起きると、まだコボルト達は寝ていた。どうやら起きるのが大分早かったらしい。俺は昨日眠る直前大分疲れていて、後をポンコとごぶ助に押し付ける様に寝てしまったのを思い出したので、挨拶ついでに聞いてみる事にした。
辺りを見るとごぶ助は見当たらなかった、なのでポンコへと話しかける。
「(おはようポンコ、昨夜は後を押し付ける様に寝てしまって悪かったな。大丈夫だったか?)」
(おハようゴざいマス一狼様。大丈夫でスヨ、そレと侵入者も居りマせんでしタ)
「(そうか、ありがとう。ごぶ助が見当たらないけどどうしたんだ?)」
(ごぶ助様ナら・・・来マした)
ポンコがそう言った瞬間、ポンコルームの入口にごぶ助が現れた。
何処へ行っていたのか聞いてみると、夜から入口で見張りをしていたらしい。どうも『守護者』になった影響か、4,5日なら眠らなくても大丈夫になったとかで、昨夜は見張りをかって出たそうだ。
そしてタイミング良く戻ってきたのは、ごぶ助とポンコはダンジョン内でならどこでも意思のやり取りができるらしいので、予め俺が起きたら知らせてくれとごぶ助がポンコに頼んでいたとの事。
「(なるほど、ありがとなごぶ助。)」
「ごぶごぶ」
見張りをかって出てくれたごぶ助に礼を言うと、大丈夫といった感じに返してきた。そしてごぶ助は、どうせならコボルト達が起きてくる前にご飯の準備をしておこうと誘ってくる。俺はその誘いにのり、俺達はダンジョン入口へと転移して朝食の準備を始めた。
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「(よし、それじゃあ行ってくる。もしもやばい魔物が来たら俺達を待たずにダンジョン移動を進めてくれ。場所は大体聞いたからなんとか後で合流してみせる)」
「ごぶ・・・、最悪の場合そうするごぶ・・・」
朝食も終わり、いよいよダンジョン探索の時間がやってきた。
そして、朝食をとる前の少しの合間に、ポンコとも話をして転移先の候補もいくつか聞いたりして、着々とダンジョン移動の準備も進めたりもしていた。
「(ニコパパチームとニコママチームもすまないな、今日からはレベリングは休みだ。その代わりのダンジョン防衛を頼んだ)」
「がる、大丈夫がる。それより娘を頼んだがるボス」
「(ああ、任せてくれ)」
「わう!がんばってくるわう!」
「あう!がんばってくるあう!」
本日の探索からは少しやり方を変えることにした。今まではレベリングも兼ねてダンジョン探索をしていたが、今回からはレベリング作業を止めて、ダンジョン探索に専念することにしたのだ。
そしてダンジョン探索編成として、俺とニコとミコの3人でチームを組み迅速に発見&攻略を行う事になった。
「(まぁ今日中に見つからなかったら一旦帰ってくるわ、それじゃあいってきます!)」
「わう!いってきますわう!」
「あう!いってきますあう!」
「「「「いってらっしゃいがう」」」ごぶ」
防衛組と挨拶を交わした後、ニコとミコを背中に乗せた俺は風の様に走り出した。その速度はとても速く景色が流れる様に過ぎていく。
「わうぅぅう!すごいはやいわうぅぅ!」
「あうぅぅう!はやいあうぅぅ!」
「(っふ、今の俺はサラマンダーより速いぜ?)」
「「??」」
「(ふははは!)」
今の俺は先日の俺よりも速かった。それもそのはず。
俺は再び進化をしていたからだ。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
皆様の応援のおかげで頑張れております。ありがとうございます。
これからも最強ワンチャン物語をよろしくお願いします。
「面白い」「続きが気になる」「サラマンダーよりはやーい」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると ごぶ助が、サラマンダーになります。
※カクヨムコンテストに応募中です。ぜひ応援をよろしくお願いします。
↓こちらもコンテストに応募して見ました。よろしければお願いします。
『女の子になったと思ったら霊が見えるようになった話』 ※一応ホラーです。
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