第53話 ダンジョン捜索のわんちゃん

 ざわざわと近くから何者かが喋る声が聞こえる。


「・・・・、・・・・・ッ!」


「・・・・、・・・・・。」


 うるさいな、何なんだ?


「・・・・」


「・・・・・、・・・・・」


 俺のぼんやりした意識は聞こえてくる騒めきを煩わしく思い、体は騒めきを断つように体勢を変えて音が聞こえにくい姿勢になった。

 そうすると聞こえていた騒めきは聞こえなくなり、心が少し安らいだ。

 何やら少し前に嫌な事があったみたいな気がして、まだ休みたかったのだ。そうして俺のぼんやりした意識は再び何処かへ行こうとしたのだが・・・。


「(グエッ!)」


 腹辺りに衝撃を感じて変な声が出た。それと同時に意識も強制的に目覚めさせられ、俺は現実の世界に帰ってきた。


「(な・・・なんだ一体?敵襲か・・・?)」


「わう!朝わう!起きるわう!」


「あう!朝あう!起きるあう!」


「(なんだお前達か・・・。起きたよ、おはよう)」


 衝撃の正体はニコとミコだった。どうやらなかなか起きない俺を起こしてくれたみたいだった。

 腹の上からニコとミコを退かして立ち上がり、体をほぐすために一度体を伸ばす。グググーっと体を伸ばすと気持ちが良くなり、う~っと声が出てしまう。

 体を伸ばし終わり、目をしょぼしょぼさせながら辺りを見るとすでに皆起きて朝ご飯の準備をしていた。


「(起きたのは俺が最後か)」


(おはヨうゴざいマス一狼様。そウですネ、起キたのハ一狼様が最後でス。珍シいでスネ)


「(・・・おはようポンコ。イマイチ覚えてないが良くない夢を見た気がしてな。そのせいかもな)」


 ポンコが俺に挨拶をしてきたが、何故か凄く驚いてしまい一瞬固まってしまった。直ぐに挨拶を返せはしたが、これも夢見が悪かったせいだろう。

 少しポンコとそのまま喋っていると、ごぶ助が器に肉を乗せて俺達の方に近づいてきた。


「ごぶ、おはようごぶ相棒。これ、朝ご飯ごぶ」


「(おはようごぶ助。いただくわ、ありがとさん)」


「ごぶごぶ、後で用意してくれた人にも言うごぶよ?」


「(ああ、そうするよ。いただきます)」


 いつもなら、俺が大体一番早くに起きるのと、スキルを持っている俺が用意した方が美味しいご飯になるので俺が準備するのだが、どうやら俺が寝ていたからコボルト達が用意してくれたみたいだった。

 ごぶ助も言っていたし、後で礼は言っておくとして食べ始める。

 俺とごぶ助がご飯を食べ始めると、ニコとミコも自分の分を持って俺達の方に来たので話をしながら一緒に食べることにした。

 和気あいあいと話をしながら朝ご飯を終わらせた後、今日の役割分担を話す為に皆に集まってもらう。


「(おはよう皆!そして、ご飯を用意してくれた人はありがとな。さて、朝ご飯も終わったところで今日の役割分担を言います。まずはごぶ助、前回に引き続き防衛を頼む。ニコママのチームも今日は防衛で)」


「ごぶ、まかせるごぶ」


「がう、わかったがう」


 ごぶ助とニコママが了承の意を示す。俺はそれに一言「頼んだ」と言い、話を続ける。


「(俺は今回も外へ出て敵を削るのと敵のダンジョン探索を行う。ニコとミコは毎日俺と一緒に来てくれ。そしてニコパパのチームが、今日は俺と一緒に外だ)」


「わう!わかったわう!」


「あう!わかったあう!」


「がる、了解がるボス」


 ニコとミコ、それにニコパパが了解の意を示す。それにも「頼んだ」と返し、一度皆を見る。


「(よし、それじゃあ皆頑張ろう!行動開始っ!)」


「「「「がう!」」」」「ごぶ!」


 行動開始と合図を出し、それぞれの行動を始めさせる。ニコ達の俺と一緒に外へ出る組が俺に寄ってきたので、順次ダンジョン入口まで転移させ、全員揃ったら出発し、森の捜索を開始させる。


「(さてと・・・ミコ!)」


「あう?」


 普通に走ってもついてこれるはずだが、何故か俺の背中の上に乗っているミコに呼びかける。


「(適当に敵の気配が多いところに案内してくれ。そしたらその内敵のダンジョンが見つかるかもしれないし、見つからなくても敵の戦力を削れるはずだ)」


「あう!わかったあう!」


 とりあえずは前回と同様に敵の魔物を削りつつダンジョン捜索をする。正直これしかやり方が思い浮かばないというのもあるのだが・・・。


「あうぅ・・・あう!あっちあう!」


「(わかった、あっちだな)」


 ミコが早速気配を感知したようなのでそちらへと方向を変える。やはり敵を探知する能力では俺よりミコのが上回っているみたいだ。


「わう!ニコもお手伝いわう!わうぅぅ・・・わう!速く、疲れなくなれわう!」


 ミコの活躍を見て姉貴分の自分がまけていられないと思ったのか、これまた俺の背中の上にいるニコが『補助魔法』を使い俺達の能力を高めてくれた。


「(おっ、ニコもありがとうな。これは速さとスタミナを上げたのか?)」


「わう!そうわう!うまくいったわう?」


 ニコの詠唱から予想したが当たったみたいだ。効果のほどをニコパパに確認すると、確かに速さとスタミナが上がっているみたいだった。ちなみに俺はニコパパ達に合わせる為大分スピードを落としているので、どれだけの効果があるのかはよくわからなかった。

 ニコの魔法によってペースを速めた俺達は、直ぐにミコが指示した気配の元にたどり着いた。


「(見えたな。ん?あれは・・・『鑑定』)」



 名前:

 種族:センチピード

 年齢:-

 レベル:6

 str:49

 vit:72

 agi:68

 dex:43

 int:14

 luk:9

 スキル:毒攻撃・弱  

 ユニークスキル:

 称号:


 名前:

 種族:ビッグホッパー

 年齢:-

 レベル:2

 str:22

 vit:37

 agi:29

 dex:11

 int:3

 luk:4

 スキル:跳躍強化・弱

 ユニークスキル:

 称号:



 見つけたのは虫型の魔物だった。年齢の部分が-となっているのでダンジョン産の魔物で間違いないだろう。


「(ムカデの方はステータスが昨日のコボルトくらいだ!バッタの方はかなり弱い!)」


 すでに相手側からも見える位置にまで来ていたので、見えたステータスから解ることを簡単に伝えた。

 伝えた通りムカデとバッタの敵なのだが、かなりの数がいた。見えるだけでムカデが4匹、バッタの方は50匹くらいいるのではないだろうか。

 数が数なので一応魔法を使い、戦いやすいように戦場をコントロールすることにした。


「(前の時みたいに壁で敵の動きを誘導するぞ!阻めっ!氷の壁よ!)」


 氷の壁を出すと、敵は狙い通りに動きが誘導されて数の有利が効きにくくなった。ニコパパ達はそれをうまく利用し、着実に敵の数を減らしていく。


「がる!ニコ、一旦引くがる!ミコはニコが引いてできた穴に誘い込まれた敵を叩くがる!」


「わう!わかったわう!」


「あう!でばんあう!」


 ニコとミコはステータスが大分上がって、俺がわざわざ敵を連れてきて倒させる必要もなくなった。なので今では皆に混じって敵を狩っている。


「がる!これで最後がる!」


 一応周囲を警戒しながら見ていると、どうやらニコパパが最後の敵にとどめを刺したみたいだ。


「(よし、じゃあドロップ品を回収して次に行こう)」


 コボルト達に辺りに散らばったドロップ品を回収してもらい、終わり次第ミコに索敵してもらい次の敵に向かう。

 また暫く森の中を進み、やがて敵の姿が見えてくる。


「(見えた!今度はコボルトとウルフだな!行くぞっ!)」


 次に見つけたのはコボルトとウルフだった。これらも同じくまずは魔法で動きを制限し、後はニコパパ達に任せた。

 やがてニコパパ達は危なげなく勝利する。俺やニコの魔法、それにニコパパの指示の差があるから、大分余裕があるみたいだ。


「(なぁニコパパ、次は一度俺の魔法はなしでやってみるか?)」


 これだけ余裕があるなら、この先を見据えて俺が魔法を使わないやり方に慣れるのもありかなと思い提案する。ニコパパは少しだけ考えたが、直ぐに返事を返してきた。


「がる、そうするがる。今の感じだと余裕過ぎてイマイチ訓練にならないがる。強くなるためにはもっと厳しくしなくてはがる」


「(わかった。じゃあ次は俺は見ているだけにするな)」


「がる、俺達を気遣ってくれてありがとがるボス」


 ニコパパはポージングをしながらお礼を言ってきた。だが流石は魔物だ、ヌルゲーは好みじゃないらしい。まぁ俺も楽して最強になれるとは思わないので好ましい考えだ。

 なので、お礼を言いながらポージングしていたニコパパをめっちゃ褒めといた。


「(いいってことよ!このプロポーションお化けめっ!体の厚みがすごすぎなんだよっ!よっ冷蔵庫!)」


「がる・・・がるがるっ!」


 俺が褒めるとニコパパは更にポージングを取り出した。すると他のコボルト達もポージングを取り始めたので、そっちも褒めておいた。

 暫くポージングと褒め言葉が続いたが、ミコが敵の接近を知らせてきたので、迎撃態勢をとり迎え撃つ。

 やがて敵が現れたが、今度はさっき言った通りに俺は見ているだけに徹した。

 現れた敵は虫型で数が多かったが、それでもニコパパ達はうまく連携して戦いを進め、俺が魔法を使った時よりかは苦戦したが敵を殲滅させることに成功した。


「がる、いい感じだったがる」


「(そうだな。けど俺がやばいと思ったら手を出すからな?)」


「がる、そうならない様に頑張るがる」


「わう!がんばるわう!」


「あう!がんばるあう!」


「「「がうがう!」」」


 ニコパパだけでなく、他の皆もやる気十分だった。頼りになる仲間だ。


「(よし、じゃあもうちょっと続けて帰るとするか)」


「「「「がう!」」」」


 皆はやる気十分なままその後も狩りを続け、やがて暗くなり始めたので、俺達は狩りを切り上げてダンジョンに帰った。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

 皆様の応援のおかげで頑張れております。ありがとうございます。

 これからも最強ワンチャン物語をよろしくお願いします。

「面白い」「続きが気になる」「ラブコメ系の目覚まし方法!?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると ニコとミコが、幼馴染系ヒロインになります。

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