第52話 会議の続きとわんちゃん 

 唐突にポンコのダンジョンへ侵入してきた敵を倒した俺達は、一度ポンコの元へ戻りそこで再び会議を開くことにした。


「(途中で切り上げざるを得なかった会議の続きをする!みんな注目だっ!)」


 ポンコの部屋へ来ても未だにミコの周りに集まっていたコボルト達に、こっちを見ろっ!と注意を促す。そうするとコボルト達はようやくこっちに注目してくれた。


「(はーい、皆が静かになるまで1分ほどかかりましたー。・・・。うん、こんなネタを挟んでいる場合じゃないな。おっほん・・・)」


 ついつい挟んでしまった前世の小ネタだったが、今世ではイマイチ通用しなかった。俺はちょっと恥ずかしくなってしまったのでさらりと流し話を続ける。


「(えーっとだな、まずはポンコに一応確認だ。もう敵はいないんだな?)」


(はイ、今回侵入シた敵は全て撃退完了でス。お疲レ様でしタ)


「(わかった、ありがとうポンコ。皆、聞いたな!?今をもって無事撃退完了とする!)」


 俺が撃退完了の合図を出すと皆は歓声を上げようとした、だが俺はそれに制止をかける。


「(・・・だがっ!喜んでばかりもいられない!今回は敵に先手を打たれ、ダンジョン内まで攻められてしまったからだ!半面、俺達は敵の居場所を知らない。これはとても不利だっ!だから、えーっとぉ)」


 今回の撃退が上手くいったのをポンコからも確認して心が軽くなったのを感じ、そして更に3階層入口での一幕でテンションが上がっていた俺はノリノリで演説をかましていた。ココからどういう感じに話そうかなーと考えていたところに、ごぶ助の的確な言葉が発せられた。


「ごぶ、つまり前回と同じ感じごぶ?」


「がる、なるほどがる!さすがごぶ助がる!ボスの相棒は伊達じゃないがる!」


「「「「がう!さすがごぶ助がう!」」」」


 ごぶ助の発言にコボルト達が納得し、場の空気を全部ごぶ助がもっていった。ごぶ助は褒められてまんざらでもないのか、少しドヤ顔をしていた。


「(うん、まぁそうね。ごぶ助の言うとおりね)」


 ここで何か場の空気を壊すのも悪いかなと、実に日本人的な気質を発揮した俺は皆に紛れるような感じでごぶ助に賛同しておいた。

 コボルト達は俺の撃退は無事完了の言葉を聞いて完全に気が緩んだのか、暫くはごぶ助を褒めたたえる会みたいなモノが続いていた。

 流石に長くなってきたので、一旦声をかけてごぶ助を褒めたたえる会を中断させた。そして脱線して中断していた会議の続きを始める。


「(それじゃあ会議の続きをしていくぞ?確か侵入者を撃退する前は、ダンジョンを移動することはせずにやってきた敵を倒す、っていう方針で決まりかけてたんだけど、これで進めていいよな?)」


 俺の問いに皆は頷き了解の意をしめした。なので俺も一度頷き、話の続きを進める。


「(で、今の状況はごぶ助が言った通りで、先に攻められて敵の本拠地が解らない、まさに前回のダンジョン騒動の時と同じような条件だな。これに対してどのような手を打つかだが・・・これも前回と同じように進めるしかないと思う)」


「ごぶ、敵を狩りつつ敵のダンジョンを探すごぶ?」


「(そういうことだな)」


 今日のごぶ助は冴えているみたいで、俺が考えていた事を言ってくれた。コボルト達もごぶ助の発言を聞いて理解してくれたのか頷いていた。そんな中、一人のコボルトが飛び上がりアピールをしてきた。


「あう!ミコ!ミコにまかせてあう!てきを探すのとくいあう!」


 今回の騒動で大活躍だったミコがピョンピョン飛び跳ね、精一杯のアピールをしてくる。それを見た姉貴分のニコも触発され、同じように飛び跳ねアピールしてきた。


「わう!ニコも!ニコもがんばるわう!てきを探すのは負けるけど皆を強くしてたすけるわう!」


 索敵能力では敵わないと認めているのか、自分の得意分野をアピールしてきたニコ。そんな二人を見て嬉しくなり、同時に頼もしく思った。

 二人は小さいながらもその能力は凄く、特に今回の事でミコの索敵能力の凄さがはっきりとわかった。もちろんニコの方も『補助魔法』という俺には使えない魔法を使えるのでそちらも頼りになるだろう。

 そんな二人がやる気満々で任せろと言ってくれるのだ。これが頼もしくないはずがない!


「(ああ!二人が手伝ってくれるなら最強だな!敵もイチコロだ!)」


「がる!俺達も負けてられないがる!」


「「「「がうがう!」」」」


 大人組も小さい二人に触発されたのか、ニコパパ達もやる気を滾らせていた。ダンジョンを攻める際はニコパパ達が守りの要になるので、これも頼もしく感じた。


「ごぶ、我もやる気満々ごぶ」


 そして何より頼れる相棒のごぶ助が頼もしい。なんせやる気が出過ぎてオーラみたいのが出ている・・・。


「(ご・・・ごぶ助、どうどう。そのオーラみたいなの抑えて!)」


「ごぶ?ごぶごぶ」


 ごぶ助は、ゴメーンみたいな感じで謝ってきた。ええんやで?


「(まぁ取りあえず会議はこれで終わりだ。今日は疲れたし、ご飯食べて休もうぜ皆。動くのは明日からだ)」


 そう提案すると、やはり皆も疲れていたのか、賛成と言いながら座りだすものもいた。俺はごぶ助にアイテムボックスから肉を出すように頼み、それを手早く焼き上げ皆に配っていった。

 肉を焼いたり配ったりしていて食べるのが最後になったしまった俺とごぶ助だが、俺達が食事を終えた頃には、すでにコボルト達は全員夢の中へ旅立っていた。


「(もう皆寝たのか・・・。やっぱり実戦をすると疲れるってことだな。俺も眠いし・・・。ってことで俺も寝るわ。お休みごぶ助。ポンコもおやすみ)」


「ごぶごぶ、我も寝るごぶ。おやすみごぶ」


 俺達は就寝の合図をして眠りについた。



(おヤすみなサイ皆様。ヨい夢ヲ)



 ・

 ・

 ・

 ・

 ・



 俺はふわふわと雲の上を漂っていた。ふわふわふわふわ。


 やがて、これは夢だという事に気付いた。


 そう自覚すると、俺の体は雲の上から地面の上に移動する。


 降りた地面の先は森の中だった。それも見たことがある様な森の中。その森の中は晴れ渡り、風も穏やかに吹いているとても心地のいい場所になっていた。


 やがて誰もいなかった森の中に、ぼやけた何某かの像が現れる。


 その像は段々と色彩を帯び、はっきりとしてきて、やがては俺の仲間たちを映し出した。


 ごぶ助、ニコ、ミコ、ニコパパ、それに他のコボルト達も。ポンコさえ森の中にいた。


 皆はニコニコと嬉しそうに笑っていた。楽しそうに踊っていた。


 俺も嬉しくなって笑って、踊って、そんな風に長い時間楽しく過ごした気がする。


 このまま皆で楽しく過ごせたらいいな。そんな風に思い、皆を眺めた。



 しかし唐突にこの幸せな世界に終わりが来た。



 森の天気は一変し、晴れ渡っていた空には暗雲が立ち込め、風もびゅうびゅうと吹き出した。


『がううううう!』


 一人のコボルトの絶叫が響き渡る。そしてそれは一人の絶叫から、二人、三人とドンドンと増え、やがてコボルト達は全員倒れ伏してしまった。


 その倒れ伏したコボルトの横に、何某かの像がゆらゆらと揺れている。それは徐々に色彩を帯び、はっきりとした像を象っていった。


『『『魔物共は皆殺しだぁぁあ』』』


『『『グルルルル』』』


 それは人と魔物であった。


 それらはこの場に残っていた俺とごぶ助に向かって迫ってきた。


『ごぶ!』


 しかし迫りくる人と魔物をごぶ助が食い止める。


 俺はごぶ助を助けようと動こうとしているつもりなのに、なぜか体が動かなかった。


『『『死ねぇ!魔物め!』』』


『『『グルアアァァ』』』


『ごぶぅぅ』


 やがてごぶ助は人と魔物の波にのまれ消えてしまう。


 人と魔物はごぶ助を飲み込むと、煙の様にフッと消えた。


 そしてその場には俺だけが残った。


 何時の間にか、周りが森の中からただの暗闇へと変わっていた。


 俺は暗闇の中一人で立ち続けた。すると何処からか声が聞こえてきた。


(おヤすみなサイ皆様。ヨい夢ヲ)



 その言葉を最後に、徐々に俺の意識は消えて行った。



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