第51話 侵入者とわんちゃん2

 ポンコのダンジョン、その3階層へと続く部屋ではコボルト達の声が響いていた。


「がう!がう!がう!」


「がう!がうがう!」


 コボルト達は少数と多数の2手に分かれていて、多数の方が少数方に対し声を出していた。


「がう!がう!がう!」


「がう!がうがう!」


 そこに、一匹の大きな犬が現れる。犬はコボルト達に向けて困惑の目を向けていた。そしてゆっくりと口を開き、犬の会話方法である念話を飛ばした。


「(なんじゃこりゃぁぁぁぁ!?)」


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 ≪ポンコのダンジョン2階層・一狼と別れた直後のニコパパチーム≫


 一狼、ニコママチームと別れ、ダンジョン2階層を入口の方に向かってニコパパのチームは走っていた。

 その先頭を走るのは他のコボルト達より小さなコボルト『ミコ』であった。ミコはステータスは高いが体はまだ小さく、その歩幅は大人コボルトの約半分くらいであったが、体の使い方が上手いのか大人顔負けの動きを発揮して先頭に立ち、ニコパパチームを敵の元へと案内していた。


「あう!この先に10体くらいいる気がするあう!」


「がる!まず俺が突っ込んで一番後方まで行って反転するがる!そしたらお前たちと俺で挟み撃ちにして倒すがる!」


 ミコは索敵で感じた敵の情報をニコパパに伝えた。それを受けてニコパパは作戦を決めて実行に移そうとするが・・・。


「あう!ミコが先にいって後ろからこうげきするあう!」


 先頭を走るミコがそう言い、ニコパパが止めに入る間もなく、フッと姿が掻き消える。スキル『隠れ身』の効果だ。


「がる!?ミコ!がるるる・・・先走ったがる!急いで俺達も突っ込んで助けるがる!」


 ニコパパは話も聞かずに先走ったミコを心配し、後ろのコボルト達に急ぐように伝える。それを受けて、ミコの行動を後ろから見ていたコボルト達は走る速度を上げ、先にいると言っていた敵の元へと急いだ。

 コボルトの集団が少し走ると、前方で争う音が聞こえてきた。ニコパパ達大人コボルトはまだ幼いミコを心配して我先にと敵に突っ込もうとするが・・・。


「ギャウゥゥウン!」


 コボルト達に向けて前方から何かが飛ばされてきた。ニコパパはそれを敵だと瞬時に判断し、咄嗟に攻撃を仕掛け息の根を止める。大人たちは一瞬気を取られたものの、直ぐに意識を切り替え前方に走る。

 するとそこには最後の一体を倒すミコの姿があった。

 ニコパパ達はあっけにとられたが、ミコに近づき「よくやった」「すごいぞ」と軽く褒めて、その後にニコパパが軽く注意をした。


「がる、よくやったけど、勝手に飛び出すのは良くないがる」


 ミコはしゅーんとしたが、直ぐにニコパパは追加で話しかけた。


「がる、次からは気を付けて今回の事を挽回がる。さぁ次はどっちがる?」


 ニコパパは言葉と同時に、ミコの頭をポンポンと撫でながら言った。ミコはそれを受けて一度頷き、「こっちあう!」と声を上げ皆を誘導し始める。

 こうして、コボルト達は侵入者を屠る為、ミコの誘導でダンジョンを駆けまわり、敵の気配が感じられなくなるまで倒し終えた後、3階層の入口へと戻って行った・・・。


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『そして場面は冒頭、大活躍だった者を褒めたたえていた場面へと戻る』



「(なんじゃこりゃぁぁぁぁ!?)」


 俺が3階層への入口に転移してくると、ニコパパとニコとミコに向かって他のコボルト達が歓声を上げて3人を褒めたたえていた。一体何事!?

 キョロキョロと2つの集団を交互に見ていると、多数のコボルトの中にごぶ助の姿を見つけた。


「(ごぶ助、これは一体?)」


 俺は多数のコボルトの中にいたごぶ助に声をかけたが、ごぶ助は、ニコパパに肩車をしてもらっているニコに、更に肩車をしてもらっているミコに向かって拍手をしていて反応してくれなかった。


「(ニコ達トーテムポールみたいになってんな・・・。じゃなくて、ごぶ助!おーい!)」


 コボルトトーテムポールを見て俺も拍手したくなったが、その衝動をおさえてごぶ助に再度声をかける。すると今度は俺の言葉に反応して、何があったかを話してくれた。


 それによると、こういう事らしい。

 ・ニコパパチームに入ったミコが大活躍したらしい。

 ・それにより2階の侵入者は全滅。

 ・残る敵も俺の所に全て来ていたのをポンコが確認したので、ごぶ助はそれを知らせにここへ。

 ・コボルトトーテムポールは気が付いたら出来ていた。


 以上が事の顛末らしいが、詳しくは本人達に聞くのが一番かと思い、俺は未だにトーテムポール状態のニコ達に近寄っていった。


「(おーい、ニコパパ!何が有ったか教えてくれー)」


 俺が声を出しながら近づいて行くと、それに気付いたコボルトトーテムポールが俺の方を向き、一番上の部分が分離して俺の方に飛んできた。


「あう!ミコがんばったあう!ボス!ほめてあう!ほめてあう!」


「(うわっぷ!まずは顔の上からどいてくれぇぇ)」


 俺の方に飛んできたミコは、そのまま俺の顔にへばりついてきた。マズル部にへばりつく様な感じになって鼻と口がふさがってしまったので、取りあえずそこからどいてもらい、降りたミコの頭の上に前足をのせて、そのままなでなでしてあげた。


「(よーしよし、すごい活躍だったみたいじゃないかミコ。えらいぞー!)」


「あう!敵をやっつけまくったあう!」


「がる、ミコはがんばってたがる」


「わう!ミコはえらいわう!」


 俺がミコを褒めていると、ニコを肩車したままニコパパがやってきた。俺はニコパパに行動の詳細を尋ねることにした。


「(で、ニコパパ。侵入者は全部片付けたって聞いたんだがどうだったんだ?何も問題はなかったか?)」


「がる、敵はミコがあっという間に全部見つけてくれたがる。見つけた敵も、ミコが先制で『隠れ身』状態で敵をかき回してくれたがる。そしてその隙に俺達が攻撃をするって感じだったがる。問題は特にはなかったがる。しいて言えば最初ミコが勝手に突っ込んで行った事くらいがる」


「(何?ミーコー?)」


「あう・・・」


 どうもミコはニコパパのいう事を聞かずに敵に飛び込んで行ったらしい。俺はそれを軽く注意しようとしたのだが、その前にニコが話に割って入ってきた。


「わう!ミコを怒らないで上げてほしいわう!ミコはいっぱいがんばって一狼兄ちゃんにおんがえししたかったんだわう!そのために一狼兄ちゃんがダンジョンを攻めに行ってる時もがんばってたんだわう!」


「あうぅん・・・」


 そういう事だったのか。でも、その気持ちは有り難い事なのだが一応注意はしておくべきだと思い、怒られるのを怖がっているミコになるべく優しく語り掛ける。


「(ミコ、聞いてくれ。まずは頑張ってくれてありがとう、お前はとってもいい子だ。だけど、ニコパパのいう事を聞かずに勝手に飛び出したのはだめだぞ?お前は強くてもまだ小さい、だから経験豊富なニコパパのいう事は聞く事。いいな?)」


 ミコは俺の言葉を聞いて言葉では返してこなかったが、しっかりと俺の目を見て頷いてきた。俺も同じく目を見返して頷いてやり、そのあとまた頭の上に前足を置いて撫でてやった。

 暫くミコを撫でてやっていたのだが、途中でニコも自分も褒めてくれーと飛びかかってきたので褒めておいた。大人のコボルト達やごぶ助はそれを見て頷いていたのだが、何なんだ一体・・・。

 何やらホッコリした空気が流れたが、とりあえず話の続きをすることにした。


「(そういえばニコママの方はどうだったんだ?問題なかったか?)」


「がう、大丈夫だったがう。1回だけ10匹程度の集団がきたけど、問題なく倒したがう」


「(そうか、ありがとうな。あー、そういえば皆に聞きたいんだが・・・、今回の敵の魔物ってコボルトだったんだが・・・その、大丈夫だった?)」


 ここに来て思い出したのだが、今回の敵はコボルトだった。同じコボルトとして何か思うところがあったらちょっと気まずいなと思いつつ答えを待つ。

 しかしコボルト達は、何のこと?みたいな顔で俺を見ていた。


「(え?いやその、敵って皆と同じコボルトだったじゃん?同種族だから何かあるかなと・・・ね?)」


「がる!そういう事かがる!ボス、大丈夫がる。アイツラは別物がる。一目見て俺達とは何かが違うと分かったから何にも思わないがる!」


「(なるほど?やっぱりダンジョンが創り出した魔物は何かが違うってことか?)」


「がる。口では説明できないけど、多分そうがる」


 ニコパパ曰く、そうらしい。他のコボルト達も同意するように頷いていた。皆理由は解らないが何か違うものだと感じたらしい。

 ポンコなら解るかもしれないので、後で聞いてみるのもいいかもしれないな。そんな事を思っているとニコパパが、これが最後と報告してくる。


「がる、ボス一応最後に報告がる。敵が落とした物は拾ってる場合じゃなかったので、そのまま置いてきたがる」


「(あー、それはしょうがないな。後で余裕があったら拾いに行こう)」


 ドロップアイテムの事を報告してくれたが、それは仕方がない事だ。というか俺も全部置いてきたしな・・・。



 とりあえず今回の侵入者は対処できたはずなので俺達は一度ポンコの所へ戻ることにした。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

 皆様の応援のおかげで頑張れております。ありがとうございます。

 ところで、12/18日のPV数が一日の過去最高数の2倍ほどでした。ランダムお勧めでトップにでも乗ったのでしょうか?びっくりしました。

 何はともあれ、これからも最強ワンチャン物語をよろしくお願いします。


「面白い」「続きが気になる」「ミコ無双!」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると 作者が、無双します。

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