第50話 侵入者とわんちゃん
ダンジョンの中に悲鳴がこだまする。
「グルワァァァァアア!」
一匹のコボルトが傷つき体をよろめかせ倒れる、そのコボルトの仲間達はそれを助けようとコボルトの方に集まろうとする。しかしそれは敵対者達により阻まれ、コボルトは仲間もろとも敵対者の手により消滅させられた。
敵対者達は静かに頷き、ダンジョンの奥へと走っていった。そして激しい戦いが行われた場所には、コボルト達が落とした物だけが残った。
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(いいエ、大丈夫でス。放って置いタら他の迷宮ガポンコを狙っテ近くニ来るでショうかラ、ソレを待っテ攻めレばいいト思わレマス)
「(大丈夫だポンコ、聞こえなくて反応しなかったんじゃなくて、驚いて反応が出来なかっただけでちゃんと聞こえてたから)」
ポンコは中々すごい予想を話してくれた。
しかし何故ポンコを狙ってくるんだ?ポンコツだからカモだと思われているのだろうか?・・・そんなはずないよな?
俺はポンコに尋ねてみた。
「(なぁポンコ、他のダンジョンがポンコを狙ってるみたいな事言ってるけど、何かポンコを狙う理由とかあるのか?)」
(はイ、ありマス。理由は恐らク2ツ、1ツ目はポンコが幼体のママ隠蔽状態ガ解除さレたかラ、2つ目ハ場所ニありマス。先ほドお話しシタ通り、コの場所は魔の森ノ龍脈上ニあるノで割りトいい場所ナのでス。他ニも理由はあルのかもしレマせんガ、流石ニそレはポンコにハ解りマせン)
「(なるほどな)」
なるほどな。ポンコツだからと言うのも大きくは外れてないな。なるほどな!
ポンコは幼体だからと言ったが、俺には
まぁそれはともかくだ、明確に狙われる理由が2つもあると聞かされると、いい場所だと聞かされても移動した方がいいのではないかと思えてくる。
ポンコは「敵が狙ってくるならそれを狩れば丁度いい」と言ったが、皆はどう思うかと聞くことにした。
「(皆!聞きたいことがある!先ほどポンコは、敵が狙ってくるならそれを狩れば丁度いい、と言ったがどう思う?俺は狙われるならこの場所から移動するのも一つの手だと思うんだが)」
コボルト達はざわざわと相談を始めた。しかしごぶ助はさすがと言うか、ほぼノータイムで答えを返してきた。
「ごぶ、我はポンコの案はいいと思うごぶ。話を聞くに、移動しても狙われる気はするごぶ」
ごぶ助はそう発言し、コボルト達も相談が終わったのか、ニコパパがごぶ助に続き話し出した。
「がる、俺達もごぶ助と同じ考えがる。敵がわざわざあっちから来てくれるなら、それに応えてやってしまえばいいがる!」
皆の意見を聞いて考えてみる。確かに幼体だから狙われるのなら、移動しても同じく狙われる確率は高いだろう。それならポンコの案を採用でもいいだろうか?
俺が考えをまとめていると、ポンコが緊急事態を報告し始めた。その報告で、俺達の取るべき行動は否応無く決まる事となる。
(一狼様、話をすレば何とヤラでス。侵入者が現れマしタ。恐ラく先程話しテいたポンコを狙ってキタ迷宮の魔物でショウ)
運命は待ってくれないものらしい。早速ポンコを狙ってきた迷宮の魔物が侵入してきたらしい。
俺は慌ててポンコに状況を確認した。
「(なに!?今どこだっ!?敵の強さとか解るかっ?)」
(はイ、侵入者の現在地ハ1階層入口付近。敵の強サは・・・。はイ、コボルト達で迎撃できルと思ワれマス)
ポンコの話してくれた情報を元に、頭の中で取るべき行動を考える為に目を瞑る。1分ほどで考えがまとまり、それを話そうと目を開くと、目の前にはごぶ助とコボルト達が静かに俺を見ていた。俺はそんな皆の目の中に覚悟を見た気がした。
「(・・・ッ!ハハハ、頼もしい仲間を持ったもんだな!よし!敵の迎撃をする為に俺が考えた作戦を言うぞ!まずはごぶ助、お前はココで万が一の為にポンコについていてくれ。コボルト達は2階層の最奥、3階層への入口に一旦全員を連れて行く。そこから2チームに分かれて迎撃だ!俺は転移を使って色々動き回る!以上だが、何か意見のある者はいるか!?)」
皆に意見があるかと聞くが誰も声を上げず、ジッと俺の話の続きを待っている。
「(そうか。じゃあ最後に・・・勝つぞぉぉっ!そして死ぬなよぉぉっ!)」
「「「「がう!」」」」「ごぶ!」
「(よし!じゃあコボルト達は移動だ!ごぶ助、コボルト達の移動だけ手伝ってくれ!)」
俺の掛け声に皆は応え、それぞれ動き出した。
まずは3階層の入口へごぶ助と一緒にコボルト達を連れて行く。それが終わったらごぶ助にポンコを頼んだと言づけて帰ってもらった。
そして俺はコボルト達に指示をだす。
「(ここから2チームに分かれるんだ!チームはレベリングの時に分かれていた組で分かれてくれ!)」
俺の指示に従い、コボルト達はニコパパとニコママをトップにするチームへと別れた。そして俺の傍には、レベリングの時は俺にくっ付いていたニコとミコが残っていたので、彼女たちもチームへ振り分けて、更に指示を出す。
「(ミコはニコパパのチームへ行ってくれ!)」
「あう!わかったあう!」
「(ニコパパ達は階層の中間地点で遊撃を頼む。ミコが索敵を持っているから、敵を探して叩いて行ってくれ!)」
「がる!了解がるボス!」
「(ニコはニコママのチームへ!)」
「わう!まかせてわう!」
「(ニコママ達はこの場で敵を迎撃してくれ!やばそうなら引いてくれていいから!)」
「がう!わかったがう!」
「(よし、じゃあ頼んだぜ皆!行ったと思うけど死ぬなよ!やばかったら逃げろ!そしたら俺とごぶ助がどうにかする!)」
「「「「がう!」」」」
俺が最後に声をかけると、コボルト達は力強く返事をし、それぞれ分かれて行動をし始めた。それを確認し、俺はダンジョンの入口付近へと転移することにした。
何故俺が入口へ転移したかと言うと、俺が入口から攻めて逆からコボルト達に攻めてもらえば挟み撃ちにできるからだ。ポンコが言うにはコボルト達で侵入者の相手が出来ると言うなら、俺は一人でも多分大丈夫だろうとの考えからそうしてみた。
「(よし、行くぞ!)」
気合を入れるためにワザと声を出し歩き出す。さぁて鬼が出るか蛇が出るかっと・・・。
何が出てきてもいい様に、慎重に奥へと進んで行く。暫く進んでいると、やがて敵影らしきものをとらえた。
いつ戦闘になってもいい様に神経を尖らせ、見つけた影に近づいて行くと・・・。
「(あれ?もうこんなところに来たのか?)」
そこにいたのはコボルトだった。すでに1階層まで敵を倒してきたのだろうか?
声をかけ、そのまま近づいて行こうとしたが、ふと違和感を感じた。何かがおかしい気がする。原因は何かを探すために周囲を見回すが、周囲に異変はない。
「(なあ?何か違和感を感じるんだが解るか?)」
「グルルル」
俺は目の前のコボルトに問いかけるが、コボルトからは唸り声が返ってきた。そこで俺は違和感の正体に気付く。
「(なんだ・・・?お前から変な感じがするな。それに何時も微かに感じる繋がりを感じない?)」
そのおかしなコボルトを注意深く見ていると、コボルトの後ろから一匹のウルフが現れた。
危ない!そう思った俺だが、予想外の事が起こった。
なんとウルフはそのままコボルトの横に並び、コボルトと一緒に俺を威嚇して来たのだ。そしてここでやっと俺は気づく。
「(まさか!『鑑定』)」
名前:
種族:コボルト
年齢:-
レベル:5
str:58
vit:48
agi:60
dex:55
int:21
luk:16
スキル:ひっかき
ユニークスキル:
称号:
コボルトを鑑定した結果だ。注目すべきは年齢の部分。今まで鑑定してきて年齢表示がこのようになっているのは、ダンジョンが生み出した魔物だけだった。つまりこいつは現在攻めてきているダンジョンからの侵入者ということだ!
「(・・・っ!そんな事もあるのか!)」
少し抵抗があるものの、敵は敵だ。俺は気持ちを切り替えてコボルトとウルフに攻撃を仕掛けようと身構える。
標的はコボルトとウルフの2体と数は少なく、ステータスも俺と大分離れている。なので魔法を使う必要はないと考え、肉弾戦で勝負を仕掛ける事にした。
後ろ足に力を溜め、それを一気に解放させ敵へと近づく。そしてそのままスピードを乗せてコボルトに体当たりをかました。するとコボルトはすごい勢いで吹き飛び、ダンジョンの壁に激突して鳴き声を上げることなく消滅した。
俺はそれを確認する前に、コボルトに体当たりをした直後に今度はウルフへと攻撃を仕掛けていた。スピードはコボルトへの体当たりで完全に止まっていたので、爪で攻撃を仕掛ける!
「ギャワッ!」
あまり力を乗せられず、手打ちで放ったような攻撃だったが、まさにステータスの暴力といった感じでウルフは切り裂かれ吹き飛んだ。
「(っし、トドメッ!)」
「ギャウーーーーン!」
俺はそのまま追撃し、トドメを刺す。ウルフは最後に断末魔の声を上げて消滅した。敵が消滅したのを確認して、一旦コボルト達の元へ戻って敵もコボルトだと伝えようとしたのだが、その前に足音が多数響いてきた。
「(っちぃ!最後の断末魔か!)」
やけに大きな声を出して死んだな、と思ったのだが、どうやら仲間を呼び寄せる意味もあったらしい。
やがて直ぐに俺の元へ敵がやってきた。現れたのはコボルトとウルフが混合した群れ。そいつらは現れるなり俺に牙をむき威嚇し始める。
「「「「グルァァアア」」」」
「(直ぐに片付けるっ!氷の散弾!)」
俺は威嚇を受け、それを返すかのように啖呵を吐きだしながら魔法を使い、敵を一気に掃討しにかかる。
敵性魔物は俺の魔法を受け、見る見るうちに消滅していく。だが、後ろの方にいたウルフが俺の魔法に倒れていく仲間を見て、更に増援を呼ぶように吠える。すると奥から奥から増援が現れ、魔法を使ってもなかなか殲滅しきれなかった。
それがおよそ10分ほども続き、敵を掃討し終えた俺は少し魔法の使い過ぎで疲れていた。氷の散弾は割かし燃費がいい魔法なのだが、流石に10分連続使用していると少し疲れる。
しかし立ち止まっている場合じゃないと考え、一度ニコママの所へ転移することにした。
「(ドロップアイテムは後だ!取りあえず放置でニコママの所へ!『迷宮内転移』)」
俺はニコママが防衛している筈の3階層への入口へ転移した。
そこには俺の予想外の光景があった。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
皆様の応援のおかげで頑張れております。ありがとうございます。
これからも最強ワンチャン物語をよろしくお願いします。
「面白い」「続きが気になる」「ニコママ達は一体!?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると ミコが、エースになります。
※カクヨムコンテストに応募中です。ぜひ応援をよろしくお願いします。
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