第49話 戦勝記念パーティーのわんちゃん

 森の上から降り注ぐ日は山にかかり、その山から刺す夕暮れの神秘的な紅の色が森を染め上げるころ、あるダンジョンの前ではコボルト達が勢ぞろいしていた。

 コボルト達は無意識に感じる繋がりから、己の主がダンジョンへ近づいているのを感じて、主を出迎えるためにダンジョン前へ集まっていた。

 やがて、コボルト達の視界に2つの影が見えた。コボルト達が影に気付いたのと同じく、影の方もコボルト達に気付き、見る見るうちに影ではなくはっきりとした姿が見えてきた。

 双方ともに気持ちが高まり、どちらからともなく声を上げた。


「「ただいまーー!」ごぶ」


「「「「おかえりがう!!」」」」


 ・

 ・

 ・


 時刻は少し進んで夜、現在は・・・。


「(ふぅぅぅ!戦勝記念の肉パーティーの始まりだぁー!)」


「「「「いぇぇぇぇえええい!」」」」


(いエ?いえエエえい?)


 全員でポンコのいる部屋に入り、食卓を囲んでいた。

 それぞれが楽しく、焼いた肉や焼いた肉や焼いた肉を食べている。


「(いや!誰も肉以外食ってねぇーな!?)」


「ごぶごぶ、だって皆お肉が大好きごぶ。お肉最高ごぶ」


 俺の突っ込みにごぶ助はさらりと返してきた。ははは!こやつめ言いおるわ!

 ごぶ助は俺の突っ込みに言葉を返した後、大勢のコボルトの前でスネークダンジョンの活躍を語りだした。

 コボルト達はそれを聞いて「おぉー」だの「すげぇー」だの「デカい蛇の肉食べてみたかった」だの言って騒いでいた。

 俺もそこに参戦し、自分の活躍を3割増しくらいに語っておいた。宴会の席だからちょっとくらい盛ってもばれへんやろ!

 盛りに盛って自分の活躍を話し、渾身のどや顔を決めると、コボルト達はポージングを決めて返してきた。

 気分はハイになっていたので、普段の3割増しくらいコボルト達に掛け声をかけ、それからポンコの方に歩いて行く。


「(すまんなポンコ、お前は何も食えないのに。でも仲間だし一緒に祝いたいと思ってな)」


(はイ、あリガとうゴざいマス。後、ポンコは魔石ナラ食べれマス)


 ポンコに声をかけると、魔石をおねだりされた。

 っふ、愛いやつめ。今日は無礼講じゃ!ごぶ助!魔石をもてい!

 宴会で頭が緩んでいる俺は、ポンコに魔石を投入しまくった。まぁ特に使い道もないしいいだろう。

 それに魔石を吸収しているポンコは、何となく嬉しそうな気配を出していた。ポンコも一緒に楽しめたならよしだ。


 その夜、俺達は大いにはしゃぎ、楽しんだ。


 ・

 ・

 ・


「(さぁー、皆さん朝です!軽くご飯を食べたら会議のお時間ですよ!)」


 戦勝記念の肉パーティーを開いた夜が明け、はしゃぎ過ぎて早めに眠りについた俺は朝から元気だった。そんな俺に声をかけられたコボルト達は、まだ眠たそうにしながらも起き上がり始めた。


「わうわう!ご飯配っていくわう!どーぞわう!どーぞわう!」


「あうあう!どーぞあう!どーぞあう!」


 ステータスは強くても、まだ幼体の為、俺と同じく早めに休んで元気いっぱいのニコミココンビは、起き上がった大人たちに順次食事を配ってくれていた。


「(うんうん、二人はエエ子やな!ごぶ助も見習い!)」


 何故か関西弁でニコ達を褒める俺は、大人コボルト達と同じくまだ眠そうなごぶ助に声をかける。しかしごぶ助は口をもごもごさせながら、半開きの目で宙を見ていた。完全に寝ぼけている顔だった。

 やがて全員が朝ご飯を食べ終え、頭も覚醒したころに俺はその場の全員に向かって声をかけた。


「(よし!朝ご飯を食べて全員意識もはっきりした事だろうし、会議を始めます!)」


 俺のかけた言葉に、全員がちょっと真面目な顔をして話を聞く体勢を取った。それを確認した俺は話を続けることにする。


「(まずは俺達の報告からする。俺達は無事敵性ダンジョンを攻略した。ちなみにごぶ助の横にあるのがそのダンジョンのコアだな)」


 俺がそういうと、ごぶ助はダンジョンコア『スネーク』を持ち上げる。コボルト達はそれに注目し、唸ったり睨んだりポージングしたりしていた。


「(憎い気持ちは解るが、壊さない様に。そいつはポンコに吸収させるから。そしてなぜポージングをした?)」


 誰がポージングをしていたか解らなかったが、誰も答えなかった。・・・まあいい。


「(次に行くとする!ニコパパ、こっちのダンジョンの様子はどうだった?異常はなかったか?)」


 俺が今回のダンジョン防衛の隊長に任命したニコパパに声をかけると、ニコパパは一度ポージングを決め、それから何事もなかったかのようにポージングを止めて話し出した。・・・さっきもポージングして他のお前か?


「がる、こっちのダンジョンの様子は問題なしがる。敵も初日の夜辺りから見なくなったがる」


「(なるほどな、みんなありがとうな!あ、因みにだが敵を見なくなったのは恐らくは俺達のせいだな)」


 俺はダンジョンであった揺れなどの事を踏まえ推察したことを説明した。するとポンコから補足が入る。


(はイ、一朗様の推察で正解デス。ポンコ達迷宮核はコの部屋ヨり出ルと致命的ナエラーが発生しマス。補足すルと、迷宮領域ヨり完全ニ外に出マすト、迷宮は2日程デ崩壊しマス)


 驚きの新事実を聞かされた。つまり明後日くらいに見に行くと、スネークのダンジョンは消えているわけか。


「(補足サンキューポンコ。んでこれからの事について何だが・・・。と、その前に取りあえずポンコにダンジョンコアを吸収させてみようと思う)」


 これからの行動方針について話そうと思ったが、先にポンコのパワーアップを済ませることにした。その方が出来ることが増えるだろうとの考えだ。

 俺はごぶ助に頼み、スネークをポンコの前まで持ってきてもらう。


「(じゃあなスネーク。・・・で、ポンコどうしたらいいんだ?)」


(はイ、ポンコにアててクだサイ)


 俺はごぶ助に目配せをする。ごぶ助は頷き、最後まで何も話さなかったスネークをポンコに押し当てた。

 すると、スネークがズブズブとポンコに埋まっていく。取り込んでいるって感じだった。やがてスネークは全てポンコの中に入り、消えてしまった。

 それを見ていた皆はポンコの事を注視していたのだが、特に何か起こるわけでもなく時間が過ぎる。さすがに焦れてきたので俺はポンコに話しかけてみた。


「(特に変化があるってわけでもないけど、成功なんだよなポンコ?)」


(はイ、成功でス。無事取り込メマしタ。そシて一狼様、迷宮核『スネーク』ノ記録を参照シた所、色々話かケていたミタいですガ、迷宮核『スネーク』ハ一応返答をシておりマしたヨ?)


「(え?そうなの?)」


 どうもスネークは俺の言葉に返答していたらしいが、何も聞こえなかったんだがな。詳しく聞いてみると、スネーク・・・というか若いコアは自我が薄く、意思を伝えるのもコア表面に短く文字を表示するだけらしい。

 なので、一応だが俺の言葉に返答はしていたらしい。まあ、「はい」か「いいえ」くらいだったらしいが。


「(というか、お前もその若いコアなんじゃないのかポンコ?)」


(はイ、ポンコはまだ発生シてかラ20年程の若い迷宮核でス。自我ガ強い理由ニついテは不明でス。推察トしてハ、エラーにヨり『守護者』ニ本来付与さレる自我強化ノ処置がポンコにさレタのだと思われマス)


 ポンコの話を聞いて『スネーク』ダンジョンの『守護者』ブラドの事を思い出す。あの時は疑問に思わなかったが、確かにダンジョン産の魔物で言葉を話し、意思疎通できた奴は今までいなかった。だが奴はダンジョンモンスターにしてはペラペラと何やら喋っていた。

 魔物の自我を強化したらあのように言葉を話し、『我』が出てくるという事だが、なんとなく納得だ。


「(なるほどな・・・。教えてくれてありがとうポンコ。それと意外と歳いってるんだな)」


(はイ、どウいたシマしテ。いいエ、ポンコはマだ幼体でス。ピチピチでス)


「(そ・・・そうか。・・・んで、それは解ったんだが、結局のところどうなったんだ?ポンコは強化されたのか?ポンコマーク2になったのか?)」


(いいエ、自分はポンコですヨ?ヤングなポンコでスヨ?龍脈接続強度は迷宮核『スネーク』を取リ込んダ事にヨり無事強化さレマしタ。ナので、様々な事が出来ルようニ戻りマしタ)


 ポンコは若いアピールをしているので、これ以上は触れないことにしよう。

 さて、どうやら龍脈の接続強度は無事強化されたらしい。それにより、色々な事が出来るという事なので、次の行動方針にも選択肢が増えた。

 なので次の議題は、それらを踏まえて今後の行動方針を決める事だな。


「(了解だポンコ。なら次は色々出来ることを踏まえて今後の行動方針を決めようと思う。質問何だがポンコ、ダンジョンは移動できると言ってたけど、今できるのか?)」


(はイ、出来マス)


「(・・・ちなみに、移動するにあたって何かある?)」


 ポンコは「移動できる」とは言った。だがここで話を止めてはいけない。詳しく効かなければ恐らく何かあるだろうから・・・、それがポンコクオリティー。

 そして俺の読み通り、ポンコから移動に当たっての追加詳細が語られ始める。


(はイ、ありマス。マず移動は基本何処デも行けマス。然シ、移動先は龍脈上が好マしいでス。龍脈上でナいと接続が安定シなくなリ、色々な物ノ生成の質などガ下がりマス。因みニ、現在のポンコが定着シていルこノ場所も龍脈上ニありマス。そシて割とイイ場所ナので、移動すルと他の迷宮が移動シてきて、こノ場所は埋マってしマうと思われマス)


「(なるほど・・・そんな事があるのか。じゃあ俺達がレベル上げたりするのも、ポンコは固定させておいて俺達が遠征した方がいい感じか?)」


 行動方針が決まるかなーと思ったところで、ポンコからすごい情報が出て来た。


(いいエ、大丈夫でス。放って置いタら他の迷宮ガポンコを狙っテ近くニ来るでショうかラ、ソレを待っテ攻めレばいいト思わレマス)



 なん・・・・だと・・・・



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