第48話 迷宮核ゲットのわんちゃん

 俺達が入った石造りの部屋、その部屋の中央に置いてある台座が光を放っていた。

 正確には、台座の上にある丸い球『ダンジョンコア』が光りを放っていた。


「シュ~!?シャ~~!!シャ~シャ~!」


 その横で上半身が人型、下半身が蛇の魔物が俺達に気付き威嚇をしてきた。


「ごぶ?あれ、前にダンジョンに来た蛇女ごぶ」


 ごぶ助が俺達に威嚇をしている魔物に向けてそんな事を言った。俺はごぶ助の言葉を受けて魔物に鑑定をかけた。



 名前:

 種族:石蛇女

 年齢:-

 レベル:5

 str:168

 vit:143

 agi:172

 dex:125

 int:109

 luk:47

 スキル:巻き付き 麻痺視線 統率

 ユニークスキル:

 称号:



 確かにダンジョンコアの横にいる魔物は『石蛇女』と種族がなっている。俺達の事を警戒して見ている内に、こちらも改めてその魔物をよくみる。

『石蛇女』の上半身なのだが、確かに人型だった。しかし、その肌はうろこ状の皮膚になっており、しかも色が真っ青で顔の造形も目だけがすごく大きくアンバランスで髪もなかった、ギリギリ人型といった感じだ。下半身の方は蛇みたいになっており、ここは俺の想像したメデューサみたいな感じだった。

 そんな『石蛇女』を観察していると、その顔が何やら笑っているような気がした。俺はハッとして咄嗟に『火魔法』をその大きな目に向かって発動させる。


「(ぐっ・・・しまった。ちょっと痺れた・・・)」


 どうやら奴の『麻痺視線』を食らったみたいだ。ステータスも確認したのに迂闊だった・・・。

 横にいたごぶ助に大丈夫か尋ねようとしたら、ごぶ助は全く問題ない動きで『石蛇女』に近づき、俺の『火魔法』を浴びてのたうち回っていた『石蛇女』に向けて棒を振り下ろして『石蛇女』を仕留めた。そして『石蛇女』が消えて10秒もしない内に体の麻痺はとれ、自由に動けるようになった。


「(すまんごぶ助。ちょっと油断してた、ありがとな)」


「ごぶ、問題ないごぶ。相棒を守るのは我の役目ごぶ」


 ごぶ助に言うと、何時もの如くイケメンな答えが返ってきた。さすがですごぶ助さん!いや、さす助!・・・何かゴロが悪いな・・・。


「(さすごぶ!・・・いや、これもなんか違うな。と、それは置いといてだ。ごぶ助!いよいよ目当ての物ゲットだな!)」


「ごぶ!やったごぶ!」


 俺達は両手を合わせてハイタッチした。・・・大型犬にじゃれ付かれる子供みたいな図になっているのはご愛敬だ。

 ハイタッチして喜んだ俺達はいよいよダンジョンコアの前に立った。そして俺はダンジョンコアに語り掛ける。


「(よおダンジョンコア。ブラドの称号に『スネーク』と出てたからそう呼ぶがいいな?俺達はお前を奪っていく。恨むなら恨め、覚悟の上だ)」


 俺の言葉にスネークは声を返してこない。返答する気はないって事か。


「(まぁいい、じゃあお前を俺達のダンジョンに連れて行く。台座から外すぞ?)」


 これにも無言だ。なら作業を始めるとしよう。


「(ごぶ助、ダンジョンコアを台座から外してアイテムボックスに入れてくれるか?)」


「ごぶ、わかったごぶ」


 俺はごぶ助に頼んでダンジョンコアを回収してもらう。ごぶ助はダンジョンコアを台座から外して手に持った。そしてそのまま固まっている。


「(ん?どうした?)」


「ごぶごぶ、アイテムボックスに入らないみたいごぶ」


 ごぶ助はそんな事を言ってきた。ダンジョンコアは特殊な物だからアイテムボックスに回収できないのだろうか?


「(そうか、まぁそういう事もあるさ。仕方がないから手で持っていくしかないな。まぁ俺は持てないからごぶ助に運んでもらう事になるんだが、大丈夫か?)」


「ごぶごぶ、大丈夫ごぶ。もし敵が来た時はまかせるごぶ」


「(おうよ!それくらいは任せてくれ!いっつも助けてもらってるし、今回は俺がごぶ助を守るぜ!)」


「ごぶごぶ」


 俺の守る発言を聞いたごぶ助はニッコニコだった。まぁいつものお返しだ、きっちり守るぜ相棒!

 無事ダンジョンコアを確保した俺達は帰ることにしたが、俺は帰る段になり気づいたことを呟いてしまう。


「(そういえば結局このダンジョン何階層あったんだろうなぁ)」


「ごぶ?」


「(あー、いやな、来るときはラッキーで転移してこれたじゃん?けど帰りは歩かなきゃ行けないからさ・・・)」


「ご・・・ごぶ!そういえばそうごぶ!」


「(まぁ10階層くらいだと願おうぜ・・・)」


 そんな事を言いながら、ダンジョンコアが設置してあった石造りの部屋を出た時の事だ、いきなりダンジョンが少し揺れた。

 何事だ!?と俺達は瞬時に戦闘態勢へ、無言で周囲を警戒し見回した。暫くすると揺れが収まり、何事もなさそうなので俺達は警戒を解く。


「ごぶ、吃驚したごぶ」


「(だな・・・。そしてタイミングから見るに、恐らく原因はだな。ポンコの時みたいに敵が暴走していないといいが・・・)」


 恐らく揺れの原因はダンジョンコアだろう。石造りの部屋から出した直後に揺れたので、コアをあの部屋から出すとエラーでも起こる仕組みなのだろうか?帰ったらポンコに聞いてみよう。

 俺達は慎重に周囲の警戒をしながら進むことにし、石造りの部屋から離れて行った。


 ・

 ・

 ・


「(計15階層だったな)」


「ごぶごぶ」


 俺達は4日ほど歩いてスネークのダンジョンの入口にたどり着いた。結局このダンジョンの階層はポンコよりは少し多くて計15階層だった。しかしダンジョンコアをあの部屋から出したせいか、道中で魔物は一匹も見なかった。

 俺はダンジョンから出る前に一度立ち止まり、ごぶ助の持っているダンジョンコア『スネーク』に話しかけた。


「(スネーク、一応最後にダンジョンにお別れ言っておくか?)」


 しかし、返ってきたのはやはり無言だった。それならそれでいいだろう。

 俺はダンジョンコアから目線を上げ、ごぶ助を見て頷いた。ごぶ助もそれに頷き返してきた。

 そして俺達はダンジョンの外にでた。


「(むっ・・・眩しい。ダンジョンから出た直後は清々しい気分だが、ちょっと目が眩むな。というか、これだけ眩しいという事は・・・まだ昼くらいだな。今日中にはポンコダンジョンへ帰れそうだな)」


「ごぶごぶ、帰ったら勝利を祝ってパーティーごぶ」


「(ハハハ!そうだな!そうしようか!)」


 ごぶ助の提案で今日の夜は戦勝パーティーとなった。コボルト達に会うのも4,5日ぶりになる。元気でやっているだろうか?

 仲間の事を思い、帰ろうと足を動かそうとした時、1つ思い出したことがあった。その事はごぶ助に関係があった為、尋ねることにする。


「(そういえばごぶ助、お前ってまだ村へ一回も帰ってなかったよな・・・?)」


 そう、思い出したこととは、ごぶ助の元ゴブリン村への訪問だ。あの事件が起きた後、コボルトやらスネークのダンジョンやらで結局一回も村へ行けていないのだ。


「ごぶ」


「(だよな。丁度二人とも外へ出られてるし、寄っていこうか。コボルト達も少しくらい遅くなっても怒らないはずさ)」


「ごぶ」


 俺の質問へ、ごぶ助は短い言葉と頷きで返してきた。やはり思うところがあるのだろう・・・。

 俺達は元ゴブリン村の方向へ、終始無言で進んで行った。


 ・

 ・

 ・


 暫く歩きごぶりん村の入口へとたどり着いた。俺は一度立ち止まり、ごぶ助と一度視線をかわし、皆を埋葬した場所へと連れて行った。

 やがて俺が皆を埋葬した場所、墓石代わりに置いた石の前に到着し、ごぶ助に振り返った。


「(ここだ。この石の下に皆の遺体を埋葬した)」


「ごぶ」


 ごぶ助は持っていたダンジョンコアを一度地面へ置き、墓石の前へ行って立ち止まった。

 そしてごぶ助は墓石の前で片膝をつき、頭を下げて、手のひらを上にして両手を頭上へと上げた。

 初めて見たが、きっとあれはゴブリンの祈り方なのだろう。ごぶ助の墓石に対する真摯な所作や気配でなんとなく理解できた。

 俺もごぶ助に倣い墓石に向けて祈ろうとする。前世の日本で一般的だった手のひら同士を合わせる合掌は体の構造上難しかったので、目を瞑り頭を下げるのみにしておいた。

 祈っている途中で森の方から、草葉のこすれる音と小さな気配を感じたが、この状況で「肉だー」と狩りに行くこともはばかられたので放っておいた。


「ごぶ、もう大丈夫ごぶ」


 暫く二人で墓石の前で祈っていたが、ごぶ助が声をかけてきたので俺は顔を上げた。そのままごぶ助の顔に視線をシフトさせると、ごぶ助は何やらさっぱりした顔をしていた。何やらごぶ助の中で気持ちの整理がついたのだろうか?なんにしてもいい事だろう。


「(うん、そうか。じゃあ、俺達を待っているはずの仲間の所へ帰ろうか)」


「ごぶ、そうするごぶ。今回の活躍を話してやるごぶ」


「(ハハハ!そうだな!存分に話してやるといい!敵のボスを一方的に打ちのめしたとかな!)」


 ごぶ助の纏う空気がいつもより優しくなった気がして、俺は何やら気分が良くなった。そして二人で明るく話しながら村の出口へと進んで行った。

 そこで俺は、そういえば獲物の気配を小さく感じた事をごぶ助に話した。すると。


「ごぶ!お肉ごぶ!捕まえるごぶ!」


「(いや、アイテムボックスの中にもめっちゃ入ってるじゃん。それより早く帰ろうぜ!)」


「ごぶごぶ・・・」


 優しいごぶ助は消え、肉バーサーカーのごぶ助が出て来た。だがこの方がごぶ助らしくていいかと思う。


 俺達は帰った後の肉パーティーの事について楽しく話しながら帰った。


 尚、ダンジョンコアが置きっぱなしだった事を思い出し、慌てて取りに帰ったのはご愛敬である。



 こんな感じも俺達らしいよな!              と誤魔化しておく。



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