第46話 ダンジョン攻めのワンチャン
ある晴れた日の朝、迷宮の入口前、まだ少し薄暗い時刻の事。少し開けて広場になった場所で一匹の犬が、大柄なコボルト達と一体のゴブリンの前に胸を張り立っていた。その一匹の犬は大きく息を吸い込み、一度力をためる様に力み、やがて口を開き大声を発した。
「(はいっ!ポージングっ!)」
「「「「がうっ!」」」」
一匹の犬の合図で、コボルトの約半数程が、それぞれ思い思いのポージングを取った。
続けて残りのコボルト達が、ポージングを取ったコボルト達に声援を送る。
「「「「キれてるがう!キれてるがう!」」」」
「(中でも体が一番仕上がってる人!今日は頼んだよっ!)」
コボルト達の声援の後に犬がそう言うと、コボルト達の中でもより一層体格が良いコボルトが一人だけ犬の前に進み出てポージングを決める。
「がるっ!任せるがるっ!っふん!」
「(よっニコパパ!肉詰まりすぎて密になってるよっ!だけど筋肉は密でいいんだよ!)」
犬は体格のいいコボルトに称賛を送る。そんな称賛を送っている一匹の犬・・・そう、俺です。一狼です。
朝も朝、日が昇った直の早朝から俺達が何をしているかって?ボディービルのコンテスト?いやいや、断じて違う。
レベリングを初めて1月と少し、いよいよ今日から敵性ダンジョンの攻略に乗り出す為、防衛に残るコボルト達へエールを送り、敵が攻めて来たら無事防衛出来る様に気合を入れているのだ。
そしてダンジョン攻めの為にごぶ助がダンジョンから離れるので、ニコパパにダンジョン防衛の隊長を頼むことにしたのだ。
「ごぶごぶ、ニコパパ、我の代わりにダンジョンの守りは頼んだごぶ。」
今回の防衛隊長のニコパパにごぶ助はそう言っていた。大丈夫さごぶ助。ニコパパも大分強くなったんだから。
名前:
種族:マッスルコボルト
年齢:8
レベル:1
str:124(31↑)
vit:104(33↑)
agi:120(21↑)
dex:101(16↑)
int:37(7↑)
luk:35(12↑)
スキル:統率 ひっかき 仲間呼ぶ声 腕力強化・小
ユニークスキル:
称号:群れの長
ステータスはこのようになった。進化もしていて種族名は『マッスルコボルト』、がっちりした感じの名前に違わぬ見た目だ。
他のコボルト達も進化はしていないが、前のニコパパのステータスに近い能力値まで強さが上がっている。なので、ニコパパがコボルト達を率いてくれれば、俺達がダンジョンを攻めている間の防衛は大丈夫そうだ。
それと、今回はこの二人にも防衛を頼むことにした。
「(ニコとミコも皆を助けてやってくれ、頼んだぜ)」
「「まかせる」わう!」あう!」
コボルト達の秘蔵っ子、ニコとミコだ。彼女たちも凄まじく成長している。
名前:
種族:コボルト・亜種
年齢:0
レベル:5(4↑)
str:95(20↑)
vit:74(16↑)
agi:100(20↑)
dex:89(20↑)
int:68(28↑)
luk:59(12↑)
スキル:補助魔法
ユニークスキル:
称号:
名前:
種族:コボルト・亜種
年齢:0
レベル:5(3↑)
str:95(15↑)
vit:80(15↑)
agi:119(21↑)
dex:96(18↑)
int:36(9↑)
luk:60(9↑)
スキル:隠れ身 索敵
ユニークスキル:
前者がニコ、後者がミコのステータスだ。この二人はすでに大人コボルト顔負けの強さとなっている。
更にニコは補助魔法による支援で味方を強化できるし、ミコは隠れ身と索敵を使って、敵の背後から攻撃や索敵による敵の先制攻撃を防ぐ等ができる。なので二人がいれば取れる作戦が増えて戦況を有利に運べる。
そんなスーパーなお子様二人にもダンジョンの防衛を頼んで、出発する準備は整ったはずだ。
予めポンコには声をかけておいたし、最後のコボルト達への話も終わった。
なので・・・。
「(よし、じゃあ後はコボルト達に任せて、行くかごぶ助!)」
「ごぶ!行くごぶ!」
「「出発!!」」
気合を入れるために一声発して、久しぶりの犬とゴブリンコンビは、敵性ダンジョンに向けて出発した。
・
・
・
「(えーっと、確かこっちの方なんだが・・・。見えたっ!)」
ポンコのダンジョンを出発し、薄暗かった森はすっかり明るくなり、太陽が頭上に移動したころに俺達は敵性ダンジョンへと到達した。
「ごぶごぶ、道中はあんまり敵がでなかったごぶ。もう全部倒したごぶ?」
「(どうだろう、大分狩ったとは思うんだが、ダンジョン内に温存してるかもだな)」
俺達が敵性ダンジョンにたどり着くまでに、ダンジョンから放たれた魔物にはあまり会わなかった。10匹のグループに2回ほど遭遇しただけだ。
ダンジョン内にも魔物がいなければいいなと思いつつ、ダンジョンの入口から中を覗き見る。
「(ポンコのダンジョンと見た目はあんまり変わらないな。入り口付近にも敵はいなさそうだ)」
俺はポンコのダンジョン以外だと、この蛇が一杯溢れてきたダンジョン、名付けて蛇ダンジョン、ここが初めてみるダンジョンなのだが、見た感じポンコのダンジョンと変わりなかった。
入口部分は、こんもりと土が地面に盛られて洞窟みたいになった穴。そしてその穴は地面の下に続く感じになっており、見える範囲の壁や床も変わりがないように見えた。
「(んー、入ってみるしかないか。ごぶ助、それでいいか?)」
「ごぶごぶ、入ってみるごぶ」
見ていてもどうしようもないので、入ることにした。俺達は警戒しながらダンジョンの入口を下っていく。
さぁ、ダンジョン攻略の始まりだ!
・
・
・
「(さて・・・内部へと侵入して暫く経ったが、ポンコのダンジョンと同じで薄暗いな)」
「ごぶ、分かれ道は全然ないごぶ。あ、この先広い部屋があるごぶ」
俺達は順調に1階層を進んでいた。蛇ダンジョンは分かれ道もなく、敵も放出しきったのか全然敵がいなかった。そしてごぶ助の言う通り、前方に広い部屋があるみたいだ。ポンコのダンジョンみたいにボス的なのがいるのだろうか?
「(たしかにあるっぽいな。気を付けろよごぶ助?恐らく中ボスだ)」
「ごぶごぶ、わかったごぶ」
ごぶ助も薄々感づいていたのだろう、俺が声をかける前から『ごぶ助カリバー』を構えて戦闘態勢だった。俺も同じく心を戦闘態勢に切り替え、いつでも魔法を使えるように準備する。そして一応ダメ押しとばかりにユニークスキルを発動。
「(よし、焦らずに行くぞ。最悪一度引いて体勢を立て直すことも視野に入れよう。そもそもダンジョン攻略にどれだけ時間がかかるかも解らないしな)」
「ごぶ」
部屋に入る前に最後の確認をし、気を張っているのか言葉少なく返してきたごぶ助を先頭に部屋へと入った。
すると部屋の奥に一つの影があった。
「(やっぱり何かいる!俺が先制攻撃として魔法を放つ!食らえ!氷の弾丸!)」
俺は先制して攻撃を入れる為、魔法を放った。そしてその魔法が敵影に重なる。
「ッシャーーーー!?」
「ごぶ!やったごぶ!?」
「(・・・)」
何時もの如くフラグくさいセリフを言うごぶ助に反応せず、じっと敵の出方を伺う。
「ごぶごぶ、やったみたいごぶ」
再びごぶ助が言うが・・・本当みたいだ。敵の姿は消え、ドロップ品が落ちていた。俺達はそのドロップ品に近づく。
「(魔晶石に蛇の肉、それに討伐証か。ドロップから見るに、そんなに強い奴じゃなかったのかもしれないな。ちょっと気負い過ぎたか・・・?)」
「ごぶごぶ、かもしれないごぶ。思えばここ、まだ1層ごぶ」
「(それもそうだよな・・・。何が起こるかわからないからって緊張しすぎてたみたいだな)」
どうやら自分達では気づかなかったが、大分緊張していたらしい。よくよく考えれば、ごぶ助の言う通りここはまだ第1階層、ダンジョンの初めだ。そこまでヤバい奴は現れないだろう。
まぁウチのごぶ助みたいな奴じゃなければ、だが。だってごぶ助ったらダンジョンの入口で待ち構えるという、初見殺しみたいな事してるんだもの。
あれ?もしかしたらその事が頭にあって、自分でも知らないうちに警戒していたのだろうか?
「ごぶごぶ、次行くごぶ。はやく帰って肉パーティーごぶ」
まぁダンジョンのトップでこんな奴そうそういないか。ウチのもう一人のトップ、ポンコも変わった奴だしな。
「(そうだな!サッサーと終わらせて、楽しく肉パーティーしよう!)」
すっかりいつも通りな感じになってドロップを回収したごぶ助に、俺も明るく言葉を返した。こんな入り口から気を張っていたら持たないし、ごぶ助みたいに軽くいくとしよう。
「(あ、そうだ。ごぶ助、ここでランチタイムにでもしないか?)」
俺は気が抜けたとたん、急にお腹が減ってしまいごぶ助に提案した。いつもは昼ご飯は食べたり、食べなかったりなのだが、気分を変える意味でもいいかなと思ったのだ。
ごぶ助はそんな俺の誘いにのり、うきうきとボス部屋の真ん中で肉を取り出した。
・
・
・
「(ふぅー、いい感じに腹も満たされたな。そろそろ出発しよう)」
「ごぶ、腹ごなしの運動するごぶ。それで夜も美味しくお肉食べるごぶ」
良い感じのランチタイムを終え、俺達は出発することにした。次は第2階層だ。そういえばここは何階層くらいあるのだろう?
疑問には思ったが特に口には出さず、2階層へと降りていく。そして2階層へたどり着き、通路を暫く進むと何か妙な感じがした。
しかしその妙な感じが何かわからず、通路に出て来た分かれ道を適当に選んで進む。
「(んー、ごぶ助さっきから妙な感じがするんだが・・・何か感じるか?)」
「ごぶ?ごぶごぶ・・・、わからないごぶ。あ、次こっちの道行くごぶ」
「(そっか・・・、何だろうなぁ・・・。んー、あ、行き止まり。戻ってあっちに行こう)」
「ごぶごぶ、しかし分かれ道多いごぶ。帰り道覚えてるごぶ?」
「(あー、それは多分覚えてる。俺って意外と道は覚えられるんだよな。ってまてよ?ちょっとごぶ助ストップ)」
俺は妙な違和感の正体が解った気がする。ごぶ助にも止まってもらい、今までの道を思い出す。すると違和感の正体に気付いた。
「(解った!この階層迷路だ!この感じ間違いない!)」
「ごぶ?迷路ごぶ?」
そう、迷路だ。妙に多い分かれ道、時々あった行き止まり、そして迷宮とくればこれは迷路階層に違いない!
これは俺の地味な特技、道は何故かよく覚えられる、が火を噴くぜ!更に迷路には攻略法もあるしな。
「ごぶごぶ、迷路ってわかっても進むしかないごぶ。こっち行くごぶ」
「(あー、まてまて、迷路には攻略法があってだな)」
俺は先に行ってしまったごぶ助に、前世ではよく知られていた迷路の攻略法『左手・又は右手の法則』を披露してドヤってやろうとごぶ助を追いかける。追いかけた先は行き止まりで、ごぶ助は行き止まりの先を見て止まっていた。
「(あー、ゴホン。えっとだねぇごぶ助君、迷路には実は・・・。)」
と、俺がドヤ顔で攻略法を話そうとした時、ごぶ助が呟いた。
「ごぶ・・・。ここ、何か怪しいごぶ」
「(攻略法が・・・って、え?壁が怪しい?)」
俺はドヤ顔をやめ、ごぶ助が怪しいと言った壁を調べ始める。隠し通路や迷路のショートカット通路でもあるのだろうか?
触ったり叩いたりしても何も起こらず、これならどうだ!と魔力を流してみる。すると壁が消え、奥に小部屋が現れた。
「(おぉ!ポンコのダンジョンにもあった、隠し宝部屋とかか!?ナイスだごぶ助!)」
「ごぶごぶ、そんなこと・・・あるごぶ」
ごぶ助は渾身のドヤ顔を決めていた。
くそう!次は俺が攻略法を話してドヤってやるんだからな!
俺は心にそう決め、ドヤりながら部屋の中に入るごぶ助の後に続く。すると妙な事が起こった。
「「??」」
イキナリ視界が切り替わった。俺は少しあっけにとられたが、これは転移だと気づいた。
ごぶ助がまだポカーンとしている横で、ごぶ助に注意するように呼びかけようとすると、前方に何かがいることに気付いたため、慌てて気配を殺す。そしてごぶ助にも同じように、なるべく気配を殺させた。
それは大きな蛇だった。その大きな蛇は丁度俺達に背を向ける形でとぐろを巻き、前方にいる何某かに報告を受けている様だった。
「なにぃ!?侵入者は1階層のボス部屋で肉を焼いて食っていただと!?呑気な奴らメ!次の迷路階層で彷徨うといいわっ!なにぃ?すでに迷路に入り込んで不正解の道をウロウロしていた?シャーッハッハ!いい気味だ!何々?そして迷路と気づいて攻略法が
おまえ おれ おこらせた。かばやきにして まるかじり。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
皆様の応援のおかげで頑張れております。ありがとうございます。
最強ワンチャン物語を流行らせるための「流れ」を、どうか皆様の力でお願いします。
「面白いよごぶ助」「続きが読みたいねごぶ助」「おれ おまえ まるかじり」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると おれ おまえ すき なる。
※カクヨムコンテストに応募中です。ぜひ応援をよろしくお願いします。
お詫び:43~45話を少し修正→ミコのステータス。○ートマン軍曹→ただの軍曹
名探偵→ただの関西弁
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