第45話 レベリングとワンチャン2

 ある迷宮の入口前、少し開けて広場になった場所で一匹の犬が、大勢のコボルトと一体のゴブリンの前に胸を張り立っていた。その一匹の犬は大きく息を吸い込み、一度力をためる様に力み、やがて口を開き大声を発した。


「(お前たちは猫にも劣る犬である!否!貴様らは今からモグラだっ!全員そろって寝坊とはお粗末だな!この寝坊助モグラめっ!反論は言うんじゃないぞっ!そしてその口から何か言葉を垂れる前にはモグラとつけろ!解ったかっ!?)」


「「「「????」」」」


「ごぶ、よく解らないけど寝坊したのは相棒も同じごぶ」


「(モグラ!確かにそうだな!モグラ!)」


 再び鬼軍曹風に喋ってみたがやっぱり理解されず、それどころかごぶ助には反論されたわっ!

 あ、どうも、俺です。ニコの進化祝い騒ぎで皆と同じく寝坊した犬の一狼です。

 いやぁ、ウッカリウッカリでござる。全員の戦力の底上げとダンジョン攻めの布石として狩りだ!とか言ってた直後にウッカリでござるよ。


「(あー、皆聞いてくれ。昨日は結局ニコの進化で騒いでしまって話せなかったが、今日から暫くはレベリングついでに敵を狩りまくる事にした!)」


 俺は気を取り直し、ごぶ助やポンコに相談して決めた作戦を話し始めた。コボルトの皆は敵方の魔物により被害を被った張本人なので、相手の力を削ぐためなら是非!という感じで賛成してくれた。

 なので、すでに日は高く上り恐らく昼くらいになっていたが、かるく食事を済ませて狩りに出かけることにした。


「(おし、んじゃあ出かけるが・・・本当にもう大丈夫なのか二人共?)」


「ガウ、大丈夫ガウ、ボス」


「あう!大丈夫あう!ボス!」


 俺が声をかけたのは大小のコボルト2人、怪我をしていた二人だ。ごぶ助の治療法が効果抜群だったのか、二人ともすでに怪我は動けるほどに回復したと言う。

 まじですげぇなごぶ助式ワイルド治療術・・・。


「(じゃあ行ってくる。ダンジョンの防衛は頼んだぜ、ごぶ助にニコパパ!)」


「ごぶ、まかせるごぶ。だからお肉を頼むごぶ」


「がる、娘は頼んだがる、ボス」


 出発する為に防衛組に声をかけて出発した。

 今回は、前回ダンジョンの防衛に回っていたニコママのグループが狩りに出る。引率の俺とダンジョン防衛の要であるごぶ助は役割を変えなかった。

 役割を変えなかったのはスキル構成にある。魔法を使って外でもうまく敵を誘導できる俺。『守護者』の力を持ちダンジョン防衛に優れるごぶ助。この様にはっきりと分かれている為、俺達の役割は変えなかったのだ。


「わう、今日もがんばってえものたおすわう!」


 ちなみに、ニコも狩り組固定にしておいた。鍛え上げれば間違いなく戦力になると分かっているからだ。まだ幼くとも、魔物であるならば鍛えておいた方がいいはずだしな。


「(張り切るのは良いけど、『ミコ』が落ちない様に見ていてやってくれよ?)」


「わう!まかせるわう!」


「あう!まかせるあう!」


 俺の背中に乗る二人のコボルト、姉貴分の真似をする『ミコ』に俺はホッコリした。

『ミコ』はコの次でコだ。コボルト達の中で、ニコ以外だと一人しかいない幼体なので、ニコと仲良くなってほしくてなんとなく名付けてみた。他のコボルト達のもその内考えようかな・・・。


「ガウ、娘がすみませんガウ、ボス」


「(大丈夫だミコママ、まだ小さいから仕方ない)」


 因みに、声をかけてきたのはミコの母親、怪我をしていた大きい方のコボルトだ。


「(でも、もうすぐ敵が出てきそうなエリアに入る。全員警戒だ!)」


「「「「がう!」」」」


 ミコママの声に返答した直後辺りで、敵方の魔物が出てきそうなエリアに入っていたので、全員に警戒を促す。その声に全員気を引き締めたのかいい返事が返ってきた。

 おっし、イッチョヤッテミッカーと気合をいれ、ユニークスキルを発動。準備万端になった所で、第2回レベリング回が始まった。


 ・

 ・

 ・


「がる、ボス、今日も大漁がる」


「(そうだなニコパパ、だから今日も肉パーティーができるぞ)」


「がる、早く帰るがる、ボス!」


 2回目のレベリングから1週間程が経ち、今回も無事に狩りを終えた俺達はダンジョンへの期間途中だった。


「わう!お肉わう!お肉わう!」


「あう!お肉あう!お肉あう!」


「(二人とも、肉を食べた後は今日も練習するからな?それも覚えとけよ?)」


「「はーい」わう」あう」


 俺の上が狩りに行くときの定位置になってしまった二人、ニコとミコも肉パーティーを喜んでいた。

 ちなみにニコママグループのはずのミコだが、この子もニコと同じく狩り固定メンバーにした。その理由はミコのステータスを見てもらうと解るかもしれない。



 名前:

 種族:コボルト・亜種

 年齢:0

 レベル:2

 str:80

 vit:65

 agi:98

 dex:78

 int:27

 luk:51

 スキル:隠れ身

 ユニークスキル:




 ニコと比べると斥候よりのステータスと言う感じだが、ミコも亜種に進化して、スキルまで得ていた。その為、鍛えたらかなりの戦力になると思われたので、狩りの固定メンバーに入れたのだ。


「(しかし毎日順調に狩れているのに、敵の数はあんまり減った気がしないな)」


「がる、でもボス、俺達も強くなれてるからいいんじゃないがる?それに毎日肉が食えるのは良い事だがる」


「(それもそうかもな。それにニコパパ達コボルトの皆、毎日腹いっぱい肉を食べているからか、体の調子よさそうだからな。うむ、今日もナイスバルクだぜニコパパ)」


「がる・・・、褒めてもポージングしか返せないがる」


 そう言ってニコパパは走りながらナイスポージングを決めていた。ニコ達はそれを見てキャッキャと笑っていた。

 このポージングを決めているコボルト・ニコパパだが、何故ポージングを取っているかというと・・・俺が教えたからだ。

 それは2日前の事だった。ここ最近、コボルト達は連日腹いっぱいになるまで肉を食べていた。そのおかげと魔物の特性か、コボルト達の毛並みや体の大きさが良くなっていた。それを見た俺は、何となく前世で見たことのあるボディービルのポージングをコボルト達に教えた。

 すると、コボルトの男達の琴線に触れたのか、ポージングが流行り出したのだ。更に俺がポージングに対して掛け声をかけると、皆嬉しかったのかポーズの研究までやりだして、今やコボルトの男達の中でポージングは大流行だ。

 ちなみにコボルトの女子供は、ポージングを決める男たちを見て喜んでいた。やはり野性の中だと逞しい者がいいのだろうか?


「がる、がるがる」


「(いいよーいいよー!肩に小っちゃい重機が乗ってるよー!)」


 ポージングが流行った事の回想から戻ると、ニコパパはお礼のポージングを決めていたので、俺は掛け声をかけた。

 掛け声で褒めると皆喜ぶので、気が付いたら言うようにしているのだ。やめれなくなっただけとも言えるのだが。


「(その調子で逞しく進化してくれニコパパ!頼んだぜ!)」


「がる!ムッキムキに進化するがる!」


「(そ・・・そうだな。そうなると逞しそうだ)」


 子供2人のコボルトは、まだ幼体だった為かすぐ進化したのだが、大人組ではまだ進化したものは出ていない。


「(お、そろそろダンジョンに帰りつくな。今日も肉パーティーで英気を養って、明日からも頑張ろうぜ皆!)」


「「「「がうがう!」」」」



 なので英気を養い、大人組の進化を目指して、明日からも狩りをがんばるぞぃ!



 ------------------------------------

 作者より:読んでいただきありがとうございます。

 皆様の応援のおかげで頑張れております。ありがとうございます。

 最強ワンチャン物語を流行らせるための「流れ」を、どうか皆様の力でお願いします。


「面白いよニコ」「続きが読みたいねミコ」「ナイスバルクッ!」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると 作者の肩が、メロンパンみたいになります。

 ※カクヨムコンテストに応募中です。ぜひ応援をよろしくお願いします。


お詫び:ミコのステータスを修正。○ートマン軍曹を少し修正 2021/12/14

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る