第43話 レベリングとワンチャン

 俺とごぶ助は、ダンジョン入口辺りにいるコボルト達と一緒にご飯を食べる為に、ダンジョン最奥から入口まで転移してきた。

 入口付近に転移し終わると、いきなり出てきた俺達にコボルト達が驚いていた。


「(あーすまんすまん。おーい、ニコはいるかー?)」


 とりあえず話が通じないのでニコを呼ぶことにする。ニコは近くにいたらしく声が聞こえてきた。


「わう!ここにいるわう!一狼兄ちゃんもう平気わう?みんなしんぱいしてたわう」


「(おう、すまなかったな。もう大丈夫だ!それでニコにまた通訳をお願いしたいんだけど、いいか?)」


「わう!まかせるわう!」


 勘違いでフリーズしてしまった俺をコボルト達は心配していてくれたみたいだ。

 俺はニコに通訳してもらい、いきなり現れて吃驚させた事と、フリーズして心配をかけた事を謝った。そしてそのお詫びではないが、一緒にご飯を食べようと誘う。


「わう、みんなだいじょうぶっていってるわう。だけど、その前にケガをした人達をみてあげてほしいわう」


「(あっ!すまない!そのことも忘れていた!)」


 コボルト達に許してもらい、ご飯も一緒に食べるのも了承をもらってよかったのだが、怪我をした2人のコボルトの事をすっかり忘れていたみたいだ。

 しかし、俺は薬草を持っていないので、ごぶ助に聞くことにした。


「(すまないごぶ助、怪我をしているのが二人いるんだ。まだ薬草残ってるか?)」


「ごぶ、まだ薬草はあるごぶ。まかせるごぶ」


 俺がごぶ助に聞くと、ごぶ助は自信満々に任せろと言う。そういえばごぶ助はニコの怪我も処置してたな・・・ってそういえばごぶ助の薬草の使い方って・・・。

 俺がその事を思い出している内にごぶ助は迅速に動いていた。俺が何をいう暇もなく、ごぶ助はアイテムボックスから薬草を取り出し口に入れ、かみ砕いた薬草を怪我しているコボルト達に張り付けた。


「ごぶごぶ・・・、ペッ、ごぶごぶ、ごぶ。これでいいごぶ」


「(うちのごぶ助は薬草を口ですり潰すんだぜぇ?ワイルドだるぅおおぅ?)」


 コボルト達は薬草をすりつぶすために、持ってきた道具からすり潰す用の道具を手に持ったまま固まっていた。俺の言葉が解るニコも、俺の言葉に反応せずに固まっていた。


「(あー、うん。大丈夫大丈夫。この方法でも大丈夫だから。むしろこっちの方がよく効くかもしれないから、うん。)」


「わ、わう。」


 俺がニコにそういうと、ニコは皆に説明してくれたみたいだ。それに気づいてないかもしれないが、ニコもこの方法で怪我を治したんだぜ?まぁ黙っておくが。


 その後、ごぶ助のアイテムボックスと道中取ってきた食料を合わせて、食事会を始めることにした。ここに来る道中でもそうだったが、俺が肉を焼いたりして調理にかかわると、何故か美味しい感じになるので皆喜んでいた。・・・料理スキルでも覚えたかな、後で見てみよう。

 そうやって食事をすませた後、コボルトの皆に『眷族化』の事を話した。すでにニコは眷族になっているとも。

 コボルト達は少し待ってくれと相談し始めた。そして相談が終わりこう伝えてきた、今いない長が戻ってきたら改めて相談して答えを出すと。

 俺はコボルト達に頷いて、それでいいと言っておいた。まぁそれもそうだよな。全員眷族にしようっていうんだから、全員そろってから話を決めないと・・・それに最後の村からも人を連れてくるかもしれないしな。

 俺達ダンジョンにいる全員は、ニコパパが返ってくるまではそれぞれやれることをやり、その日を待った。

 そしてニコパパが合流する日を迎えた。


 ・

 ・

 ・


「(お前たちは猫にも劣る犬である!否!貴様らは今からモグラだっ!その口から言葉を垂れる前にモグラとつけろ!解ったかっ!?)」


「「「「?????」」」」


「(うむっ!・・・忘れてくれ。それじゃあこれから2手に分かれる!狩りに出かける組は俺に、ダンジョン防衛組はごぶ助の所へそれぞれ分かれてくれー)」


 俺達が何をしてるかって?それはレベリングの為に狩りをしに行くところさ!ちなみに最初のは見なかったことにしてほしい。鬼軍曹ごっこがしたかったんだ。


 さて、現在はニコパパが合流して翌日である。ちなみにだが、ニコパパの合流は問題なくできた。しかし様子を見てきてもらった村はすでに敵側ダンジョンの魔物に襲われたのか、人はほとんどおらず、僅か5名だけが外に狩りに出かけていて難を逃れて助かっていた。

 ニコパパはその5名を説得し、予定通り合流地点にたどりついた。同じく俺も予定通りに動いたので無事合流し、一度全員でダンジョンへ移動。ダンジョンにたどり着いたところで、前もって決めてあった俺の眷族になる件をコボルト達に話し合ってもらった。

 その結果、総勢18名+ニコの19名のコボルトは、俺の眷族になることを決めた。なので俺は早速その日の内に18名へ『眷族化』スキルを使い、無事コボルト達全員を眷族にした。

 そして、日が明けて翌日の朝、あのハー○マン軍曹モドキへと話が繋がるのである。


「(よし、それじゃあ出発するぞー?じゃあダンジョン防衛は任せたからなごぶ助!それとニコママも!)」


「ごぶ、いってらっしゃいごぶ。守りは任せるごぶ」


「がうがう、いってらっしゃいがう。旦那と娘をよろしくお願いしますがう」


「(ああ、いってきます!)」


 俺達はダンジョン防衛組に挨拶して出発した。ちなみにダンジョン防衛組は、ごぶ助、コボルト組サブリーダーのニコママ、後コボルト8名が防衛組だ。

 対してレベリング組は、俺、ニコ、コボルト組リーダーのニコパパ、後コボルト8名で行う。

 ちなみにレベリングと防衛は交互に行い、全員をある程度鍛えることにした。


「(よし、それじゃあ敵側のダンジョンから出て来た魔物を探して狩り、レベリングだ!まずはあっちの方に行ってみよう)」


「がるる、了解がるボス」


「わう!了解わう!一狼兄ちゃんボスわう!」


「(いや、普通に一狼兄ちゃんでいいぞニコ)」


 最初にボスと言ったコボルトはニコパパだ。『眷族化』を受けた後、なんか俺をボスと呼び始めた。なんでもケジメだそうな?

 そしてそんなパパの真似をしたがる子供のニコなんだが、一応レベリングはしておく事にした。俺やニコパパがいて安全マージンが取れる内に、レベリングしておくことにしたのだ。


「(そうだ、一応アレ使っておくか)」


「わう?あれって何わう?」


「(あー、まぁ気にするな)」


 俺の独り言を、俺の背中の上から聞いていた奴が訪ねてきた。何故かニコは今日も俺の背中の上に乗っている。まぁいいんだが・・・。


「がる・・・」


 パパンがジーッと見てくるのよ・・・。

 そんなパパンに気付かない振りをしてアレを発動させる。ユニークスキルの『ワンチャン』だ。まだ敵のダンジョンは攻めないし、何か良い事あるかもだから一応ね?


「(さぁ、結構進んできたし、索敵はしっかり頼んだぜ皆)」


「「「了解がう」」」


 ダンジョンから結構進んできたので、警戒しつつ索敵しながら進む。すると地面を這いずる大量の気配をとらえた。

 当たりかなと思い皆に注意するように促し、そちらの方向へ進む。やがて相手の発する音がはっきりと聞こえ始め・・・、接敵した。


「(出たぞ!数が多い!まずは俺が魔法を使って壁を作り、敵の動きを誘導する!阻めっ!氷の壁よ!)」


 気配で感じた通り、パッと見だけでも数が多い、50匹はいるだろうか。これだけいると、単体の強さでは圧倒的なコボルトも数の暴力に押されるかもしれない。なので数の暴力を少しでも埋めるべく、『氷魔法』を使い壁を設置し、うまい事少数だけ相手を出来る様に調整した。


「(よし、後はやって見せてくれニコパパ!)」


「がる!任せてくれがる!」


 魔法で壁だけ設置して、俺はそこから戦いを見守ることにする。あくまでコボルト達のレベリングなので極力手を出さないことにしたのだ。

 戦いの主軸を任せたニコパパは、周りのコボルトにうまく指示を出し蛇共を狩っている。群れの長だけあって、慣れた感じで危なげなく蛇共を狩っていた。


「(うん、あれなら大丈夫そうかな。すまんニコ、ちょっと降りてくれ)」


「わう?」


 ニコパパ達の方は付きっ切りじゃなくても大丈夫そうなので、俺はある事をするためにニコを背中から降ろす。そしてニコが背中から降りたら、目を付けていた一匹の蛇に向かって駆け、サッと咥えてニコの元へ戻ってきた。そして体の一部を凍らせて動きを鈍くして、ニコの前に放った。


「(よしニコ、お前はこいつを倒すんだ!)」


「わう!わうわう!」


 俺がニコに言うとニコはやる気満々に吠え、蛇に飛びかかる。

 ステータス的にも大体同じくらいで、尚且つ蛇は体の一部が凍っている。これならば倒せるだろうと見守っていると、ニコは思っていた以上にあっさりと蛇を倒してしまった。


「(おお、やるじゃないかニコ。次イケるか?)」


「わう!ガンガンいこうぜわう!」


「(命も大事にな・・・。まぁ次連れてくるわ)」


 ニコにお代わりを聞くと、イケイケで返してきた。ごぶ助2号か?

 俺はニコパパ達の様子も見つつ、ニコの相手を繰り返し捕まえる事を繰り返した。

 やがて蛇共が全ていなくなり、勝利の雄たけびが上がる。


「「「「がうがう!がーう!」」」」


「わうわう!わーう!」


「(おー、危なげなくイケたなぁ。)」


「がる、ボスの助けもあったし、あれくらいの数ならいけるがる。俺達の村が襲われた時は、地面が見えなくなるほどの数だったがる」


 数で押してくるタイプだと思っていたが、そんなに大量だったのか。

 ニコパパが言った言葉に、少し考えた。このまま暫く狩りをして数を削っていくべきなのかもと。帰ったらポンコとごぶ助にも相談することにしよう。


「(よし、じゃあドロップ品を拾って、まだ籠が余裕そうなら次を探そう。)」


「がる!お前ら!落ちてるモノ拾って次行くがる!」


「「「「がう!」」」」


 ニコパパに言うと、他の皆にも伝達してくれた。いいなニコパパ、ナイス補佐役だ。



 俺達はドロップ品を拾うと、次の獲物を探し始め、森の中を進んで行った。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。本日もう1話上げる予定です。

 皆様に1つお礼です、一日200PV達成できました!ありがとう!そしてありがとう!皆様のおかげです!この調子で流行れ!最強ワンチャン物語!


「面白かった」「続きが読みたい」「レベリングは廃人のたしなみ」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

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超不定期連載予定作ですが如何でしょう。↓ ワンチャンとは一味違う作品です

『吾輩は神である』https://kakuyomu.jp/my/works/16816700429356103400


お詫び:○ートマン軍曹のくだりをただの鬼軍曹とだけ修正。 2021/12/14 

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