第42話 勘違いのわんちゃん
ごぶ助から出てきた言葉を聞いて、俺は自分の耳を疑った。なのでごぶ助にもう一度聞くことにした。
「(聞き間違いかなぁ・・・ごぶ助、ダンジョンに何か変わった事ってあった?)」
「ごぶ、ダンジョンに蛇女が来たごぶ」
聞き間違いじゃなかった!?
「(ヤバイ!ヤバスギ!ヤバエモン!ッウエエエェェェイイ!?・・・っは!ごぶ助!それでメデューサは何処にっ!?まさかポンコはすでに・・・?)」
俺は余りのことに混乱してしまった。だがそれも仕方ないだろう!?伝説級の化け物が来て、ポンコを・・・うばい・・・。
俺が再び失ってしまった仲間の事を考えようとした時、ごぶ助はサラリととんでもない事を言った。
「ごぶ?蛇女なら倒したごぶ。これが戦利品ごぶ」
ごぶ助はそう言ってアイテムボックスから少々大き目の魔石と小瓶を取り出した。俺はそれを聞いて脳がフリーズした。
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「(・・・っは!?ここはだれ?わたしはどこ?)」
(はイ?こコはポンコで一狼様ハこコでスヨ?)
つまり俺はポンコだった?って違わーーーい!
と、そこで俺は横にポンコがいたことに気付いた。そしてあらためて周りを見回すと、何時の間にかポンコのいるダンジョン最奥にいた。
「(あれ?俺はいつの間にここへ?ダンジョンの入口でごぶ助と喋っていたはずなんだが・・・?)」
「ごぶ、いきなり反応無くなったから、とりあえず連れてきたごぶ」
俺が呟くと、背後からそう答えるごぶ助の声が聞こえた。俺は振り向きごぶ助の顔をが眼に入る、するとダンジョン入口で聞いたことが思い出された。
俺はすぐさまごぶ助に突進し詰め寄った。
「(ごぶ助っ!?メデューサ倒したってどういうことだよ!?相手は恐らく神クラスなんだぞっ!?・・・っは!?さてはごぶ助・・・おまえが神か)」
「ご・・・ごぶ!?」
ごぶ助は様子のおかしい俺に詰め寄られ、何かを話すどころではなくなっていた。その代わりにポンコが、その答えを話してくれた。
(いいエ、ごぶ助様はゴブリンでスヨ?そしテ一狼様、ごぶ助様ガ倒しタのは石蛇女でス)
「(あぁん!?蛇女ってことはやっぱりメデューサなんじゃねぇかっ!?何言ってんだこのポンコツっ!)」
(いいエ、自分はポンコでス。そしテ『メデューサ』でハなく『石蛇女』でス)
「(あん・・・?いしへびおんな・・・?めでゅーさじゃない・・・?)」
俺の頭に少しずつその言葉は染み込んでいき、やがてその言葉を理解した。
「(つまりなんだ、ダンジョンに来た上半身が人型で下半身が蛇の魔物は『石蛇女』という名前の魔物なのか?そしてそいつはごぶ助が倒せるほどの強さしかなかった?)」
「ごぶごぶ、結構強かったごぶ。でもなんとか倒せたごぶ」
完全に理解して、俺の体の力が勝手に抜けていく。仕方ないだろう?絶体絶命のピンチだと思ってたんだから。
その後、もう少し話を聞くとわかった事がある。コボルト達は化け物に見られると石のようになったと言っていたが、あれは『石化の魔眼』ではなく『麻痺視線』というものらしい。その名のごとく見られた者は麻痺状態になり、固まる。その固まった様をコボルト達は石になったと思ったようだ。
ちなみにごぶ助にはこの『麻痺視線』は効果がなかったようだ。何故かは推測になるが、ユニークスキルの『覇王』が作用したか、若しくは『守護者』によるダンジョンからの恩恵であろうというのが俺とポンコの推察である。
「(それで、その見せてくれた戦利品の小瓶は中身は麻痺毒なんだ?)」
(はイ、ポンコが解析シた結果、麻痺毒でシタ)
信じないわけじゃないがポンコだからな・・・一応俺も鑑定っと。
『アイテム:麻痺毒・弱が入った小瓶
・触れると麻痺する毒。効果はそこまで強くない。』
麻痺毒・弱なのか。ドロップした石蛇女とやらの『麻痺視線』があまり強くないからそんな物なのかな?
俺は、侵入してきたという魔物の事について一段落し、ココで一つの事に気が付いた。コボルト達はどうしたんだろう?
コボルト達の事をごぶ助に尋ねると、ポンコの提案でダンジョンの中に入り、入口付近を警戒してもらっているらしい。・・・やればできるじゃんポンコ!
コボルト達も取りあえずは大丈夫みたいなので、ポンコに少し話を聞くことにした。
「(なあポンコ、今付近にあるダンジョンなんだが・・・俺達で勝てるのか?)」
俺はズバリ確信を聞いてみた。聞いてもわからないかもしれないが、少しでも大丈夫という安心感がほしかったのだ。
(はイ、おソらく大丈夫デス。コボルト達ニもお話しヲ伺いマシたが、ソコかラ判断すルに相手側に残っテイる強敵は『守護者』ノみでス。ソレもポンコの迷宮ニ来た『石蛇女』カら察スるに、一郎様とごぶ助様のお二人デなら十分ニ倒せマス)
「(ま・・・マジか。)」
ポンコは俺が思っていた10倍は良い事を言ってくれた。てっきり適当に「大丈夫何とかなります」程度の事を言ってくると思っていたのに。
しかし、俺とごぶ助の二人でなら相手方の『守護者』を倒せると言ったが、俺達二人ともがポンコの傍から離れて大丈夫なのだろうか?俺は不安に思いポンコに聞いてみる事にした。
「(なぁポンコ?俺達二人で相手側のダンジョンに攻めるとなると、ココの守りがいなくなるが大丈夫なのか?)」
(はイ、現状デお二人共が迷宮を離レると不味いでスガ、ソレなら使えル味方を増やせバいいのデス)
「(ん?どういうことだ?)」
ポンコはそう言うが、迷宮のシステムを使って魔物でも生み出すのだろうか?いや、それは無理と言っていたはずだが・・・。
(はイ、お答えしマす。コボルト達でス。彼ラを一郎様の眷族にシテ少し鍛えレばイイのデス)
「(コボルト達か!それにしても、俺の眷族にして鍛えるのか?そうすると何かあるのか?)」
コボルト達に手伝ってもらうというのは名案なんだが、その後の眷族にして鍛えるというのがイマイチわからない。そのことを聞くとポンコは『眷族化』の新事実を話した。
それによると、『眷族化』は親(俺)の特性を引き継ぐことがあるらしい。
どういうことか、例えるならば・・・親が特殊個体でステータスが爆上がりするとしよう、眷族はその特性を引き継ぎ、特殊個体でないにかかわらず特殊個体並みにステータスが爆上がりする。こういうことらしい。
その点で、俺は大分特殊らしく、特殊進化個体+転生者の特典の諸々でかなりいい特性を持っているらしい。というかポンコ、転生者の諸々知っていたのか・・・侮れない奴め。
つまり、コボルトを眷族にして鍛え、そのコボルト達にダンジョンを守ってもらっている間に、俺とごぶ助が敵側のダンジョンに突撃し向こうのダンジョンコアを奪取する、こういう事らしい。
いい案なのだが、1つだけ疑問があったので聞くことにした。それは『眷族化』のリスクだ。ニコに使った時は何も考えず使ってしまった。だが便利すぎると分かった『眷族化』のスキル、これにリスクが無いはずがないと思ってしまったのだ。
するとポンコ曰く、リスクは使うときでなく、眷族が『眷族化』から脱する時にあるとのこと。
どういうことか詳しく聞くと、眷族が『眷族化』のスキルを自分で解いて眷族から外れると、その時に親への繋がりから力を引き抜いて行く事があるらしい。なので、こいつは裏切らないと思った者へ使うスキルなんだそうだ。
まぁ、力を引き抜いていけるほどの実力を持つことは稀だそうだが。
「(ふむ・・・なるほどな。まぁ現状そうするしかなさそうだし、ポンコの案を採用するしかないか)」
最後に『眷族化』のリスクを聞いたものの、現状だとそうするしか打つ手はなさそうなのでやるしかない。それに要は、眷族を止めたいと思わせなければいいだけなのだ。
「(俺には秘策の『肉作戦』もあるしな。大丈夫だろう)」
「ごぶ?お肉食べるごぶ?」
おっと、ついつい秘策である『肉作戦』の事を口走ってしまっていた。そしてその呟きを聞いたごぶ助はご飯か?と勘違いしたみたいだ。
いや、勘違いでもないか。お腹の具合から察するにそろそろご飯の時間だ。そしてどうせなら、好感度を稼ぐためにコボルト達と一緒に食べることにしよう。
「(そうだな、ご飯にするか。コボルト達に話もあるし、ついでに一緒に食べることにしようぜ)」
「ごぶごぶ、そうするごぶ」
「(よし、じゃあちょっと入口でご飯食べてくるわポンコ。また後でな)」
(はイ、いってらッシャい)
そうして俺達は入り口に転移して、そこでコボルト達と話しながらご飯を食べることにした。
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