第41話 コボルト村とわんちゃん

 本日2話目です。

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 コボルト達曰く、その化け物は強大だったという。大人のコボルトをやすやす吹き飛ばし、家を薙ぎ払ったそうだ。

 その体は上半身が人型、下半身が蛇だったという。そしてその人型の目に睨まれると、体が石になった様に動かなくなったという。


「(まさか・・・メデューサ・・・?)」


「わう?わうわう・・・みんなも聞いたことない名前だってわう」


「(あ・・・あぁ、そうか。教えてくれてありがとう)」


 俺は話を聞いて予想してしまったモノを呟いてしまった。するとそれを聞いたニコは皆に聞いてくれたみたいだった。

 しかし本当にメデューサだったらやばくないか?前世でちょっと中2病入ってた俺は、そういう化け物を多少知っているんだが・・・。たしかメデューサって元女神とかじゃなかったか?RPGゲームとかでも割と強敵だし。

 俺は聞いてしまった強敵について考え込んでしまった。そうやって暫く考え込んでいたのだが、何か体を触られている感触に気が付いた。


「(ん?あぁすまんニコ、ちょっと考え事してて気づかなかった。何か用か?)」


 どうやら俺に用があったらしいのだが、考え込んでいた俺はそれに気付かず、そんな俺に何とか気づいてもらおうと頑張っていたらしい。


「わう、やっときづいたわう。えっと、ママが行く予定だった他の村へ移動するって言ってるわう。一狼兄ちゃんもいくわう?」


「(そうだな、そこまでついて行くわ。場所知ってたらニコに会いに行けるしな)」


「わう!わうわう!」


 コボルト達が移動するらしいので、俺もそれについていく事にした。ニコがいる場所さえ分かっていればまた会いに行けるからだ。せっかく眷族にもしたし、これでバイバイってのもあれだしな。

 そしてそれを伝えられたニコが喜ぶ姿・・・かわいいジャン。

 ・・・はっ!違う!違うんだ!俺はロリコンケモナーじゃねぇ!喜ぶ子犬がかわいいとペット的なあれで・・・!

 俺が一人で誰にとも知れず言い訳をしていると、ようやくニコパパが目覚めた。長い間倒れていたが、大丈夫なのだろうか?


「がうがう!がう!がうがう!」


 また元気に吠え始めたので大丈夫っぽい。俺は再びニコを通し通訳してもらいながらなんとか説明した。

 ニコは妹みたいにしか感じていない、そして今は緊急事態だろ、そういうことを説明した。ニコパパは何とかわかったみたいで落ち着いた。だがニコの方が逆にわうわうと吠え始める。


「わう!ニコは大きくなったら一狼兄ちゃんのツガイになるわう!わうわう!」


「(あー、はいはい。そうね。大きくなったらカンガエテアゲルネー)」


 俺は取りあえず誤魔化しておいた。まだ小さいし、そのうち忘れるだろうと思ったからだ。まぁよくある「パパのお嫁さんになる」的なあれだろう。

 俺はそんな風にニコの話を流した。ニコはまんまと騙されたのか、わうわう、とご機嫌に吠えていた。


「(よし、とりあえず移動しよう!)」


 俺が声をかけると、ニコが俺の背中に飛び乗ってきた。この移動方法に味を占めたのだろうか?そしてそんなニコを背中に乗せた俺を、パパンが「え?」みたいな顔で見ていたが、気づかないふりをしておいた。


「わう!出発わう!」


 うまいタイミングでニコが合図をかけてくれたので、そのまま出発することができた。あぶないあぶない、またドラマが始まるところだった。

 俺は走りながらもこっちを見てくるパパンに気付かないふりを続け、避難予定地である、他のコボルト村を目指し無心で走った。

 休憩を入れながらも半日ほど走り続け、辺りが暗くなった頃にようやく目的地付近に到着した。


「わう、もうちょっとで村につくって言ってるわう」


「(おぅ、わかった。暗くなったし、すこしペースを落とそうって伝えてくれ)」


 俺がニコにそう伝えると、全員ペースを落とし始めた。大分飛ばしたので、俺とニコパパ以外は息が上がり気味だった。


「がう、がうがう」


「わう、パパが、やるな、つよきものよ、だってわう」


「(っふ・・・、パパンこそ。ナイス強きモノ!)」


 ニコパパが褒めてくれたので褒め返すと、誰がパパだっ!と怒られた。解せぬ。

 それはともかく、村の入口へ着いた。村はすごく静かだった。もう夜だし当然かもしれないが、それにしたって火の光も見受けられない。コボルトは火を使わないのだろうか?・・・嫌な予感がする。


「(・・・なぁニコ?コボルトって火を使わないのか?)」


「わう?火わう?食べ物やく時に使うわう。どうしてわう?」


 ニコの俺への返答で周りのコボルト達も異変に気付いたみたいだった。やはり嫌な予感が当たったか。

 俺達一団は警戒しながら村の中へ入っていった。するとあちこちに争った形跡みたいなものがあった。しかし村人の姿は見当たらない。

 俺たちは人数を半分に分け、二手に分かれて村の中を探すことにした。敵を見つけたら吠えて知らせるように、捜索が終わったら村の中心へ集合と伝え、捜索を始める。

 俺達の方は結局何も見つけられず、そのまま集合場所へ向かった。集合場所につくと、もう一方のチームはまだ来ていないようだった。

 だが、5分もたっていないくらいであと一方のチームが戻ってきた。しかし様子がおかしい、何かあったのだろうか?

 彼らが近づき、姿がよく確認できる距離まで来た時、その理由がわかった。彼らは

 2人の傷ついたコボルトを担いでいたのだ。

 その傷ついたコボルト達は大人と子供みたいで、大きさが違った。そして気を失っているみたいでぐったりしていた。


「(人を見つけたのか!怪我してるみたいだな・・・)」


「わうわう、わう、わう。わう、ケガを手当てするにもやくそうとかないらしいわう」


「(そうか・・・どうするか・・・)」


 俺は少しこれからの行動について考える。コボルト達が避難するはずだった村はこの有り様だし、元の村も一度襲撃を受けているから危ないかもしれない。どうするべきか・・・。だめだ、いい案が思いつかない。

 俺がうんうん唸りながらこれからどうするか考えている横で、コボルト達も顔を突き合わせながら何やら相談していた。そして俺が次の行動案を考え付く前に、コボルト達が先に動いた。どうやらコボルト達の方が、次の行動を決めるまで早かったようだ。

 ニコパパとニコが俺の傍まで来て、俺に声をかけてきた。


「わう、一狼にいちゃんはこれからどうするわう?」


「(ん・・・?そうだな・・・。ダンジョンから出てきて大分時間もたったし、一度戻るかなぁ・・・。遅くなるって言ってないから、ごぶ助達も心配してるかもしれないし)」


 俺はいい案が浮かばず、とりあえず帰るしかないかなと思い、そう話す。するとコボルト達から意外な提案をされた。


「わう、なら一狼兄ちゃんおねがいがあるわう。ニコ達もつれていってほしいわう!」


 ニコがそういうと、横にいたニコパパが片膝を地面につけ、胸の前で両手の平を合わせて祈るようなポーズをしてきた。


「(あ・・・あぁ・・・。それはいいんだが、ニコのお父さんは何してるんだ?)」


 ニコパパは未だにそのポーズをしていた。その謎のポーズは何なのか聞くと、ニコからこんな答えが返ってきた。


「わう、これはコボルトの祈りのたいせいわう。今しているのは、一狼兄ちゃんの下につくっていってるわう」


「(下に付くって・・・俺をリーダーにするってこと?)」


「わう!そんなかんじわう!」


 謎のポーズは祈りのポーズ。今回の意味合いは、手下になりますアピールだったらしい。

 俺は少し考えたが、それもいいかもしれないと考えた。今はダンジョンから魔物がいなくなって守りが薄いし、コボルト達にも手伝ってもらうことにしよう。

 俺はコボルト達をダンジョンに連れて行く事に決めた。そしてそれを伝えると、ニコパパだけでなく、全員がコボルトの祈りのポーズをした。

 俺はそれにどう返していいかわからず固まっていたが、少しすると全員が祈りのポーズをやめて立ち上がった。俺は内心ホッとして、みんなに声をかけた。


「(よし、とりあえずは、もう夜だし今日はここで休もう。それで、日が昇り次第出発だ)」


 俺はそう声をかけ、ニコに通訳してもらった。その言葉を聞いたコボルト達は、まだ無事な家を見つけてそこで休む準備を始めた。俺も、もしものために備えて同じ家に入って休むことにした。


 ・

 ・

 ・


「(よし、それじゃあ出発だ。そっちも頼んだぞ!)」


 夜が明けて、俺たちはダンジョンに向かう事にした。しかし出発前に一度相談し、全員で向かわず、二手に分かれることにした。

 何故そうしたかというと、他にもう一つ近くにコボルトの村があるらしく、そこへニコパパと後2名で様子を見に行ってもらうことにしたのだ。

 もしそこも襲われていたら、生き残りを探してから合流地点へ、襲われてなかった場合、説得できるならば説得してもらってその村の人を連れて合流地点へ、そういう段取りにした。ちなみに合流地点はニコの住んでた村だ。


「がう・・・がうがう」


 ニコパパは娘と別れるのを寂しそうにしているが、強さと信頼度があるニコパパが他の村へ行くことは決定しているので仕方ない。


「(やれやれ・・・。しっかり頼んだぜニコパパ!娘さんは必ず守るから安心してくれ!)」


「がう・・・、がう!」


 ニコの通訳を通さなかったが、何となくわかったみたいで、真剣な顔で頷いてくれた。そしてニコパパは頷いた後に、一度全員の顔を見回し「がう!」と一声あげて走り出した。そして残りの二人も同じく「がう!」と一声だけあげてニコパパについていった。

 それを見送り俺たちも出発した。ダンジョンへの道はケガ人が2人と少し荷物を持っていたので、全速で進むことはなかったがゆっくりしていてもケガがひどくなる一方なので、ギリギリ大丈夫そうなラインで進んだ。一応道の途中で薬草を取り、それを傷に張り付けながら進んだがいまいち効いてないっぽい。

 そして朝出発してから半日と少し、俺たちはようやくダンジョンの入り口が見える場所まで辿り着いた。


「(ふぅ・・・やっと帰ってきたか・・・ってあそこにいるのは)」


「わう!ごぶ助わう!おーーい」


 ダンジョンの入り口にはごぶ助がいた。そんなごぶ助にニコが声をかけると、向こうは手を振ってきた。

 ごぶ助は入り口でダンジョンを守っていたのだろうか?もしそうだったなら、ここは入り口をボスが守っているというクソダンジョンである。

 俺達はダンジョンの入り口まで進み、そこで互いの紹介をする。そうしてとりあえず紹介を終わらせて転移しようとしたが、一応何かあったかをごぶ助に尋ねた。


「(ごぶ助、帰り遅くなってすまんかったな。それで何か変わったことってあったか?)」


「ごぶごぶ、ダンジョンに蛇女が来たごぶ」



「(・・・・・・・・は?)」



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