第40話 イベントとわんちゃん
村の中で、一人の小さなコボルトが吠えていた。
「わううううぅ!わううううぅ!だれかぁぁ!わうううぅ!」
「(ニコ・・・)」
その小さなコボルト『ニコ』は泣き叫ぶように吠えていた。村の仲間や両親に自分はココだと示すように。その叫びが届いたのか、村の外から何者かが近づいてくる音を複数俺達はとらえた。
「わう!?誰か来たわう!パパわう?ママわう?」
「(いや、この音は多分・・・)」
両親だと期待するニコには悪いが、この音は這いずるような音だ。だから恐らく足を使って移動するコボルトではないと思う。
そして俺の予想通り、村にやってきたのはコボルトではなかった。
「「「「「シャーッ!」」」」」
「わうぅ!?蛇がいっぱいわう!」
やってきたのは蛇達だった。青く大きい蛇が3体と、ポンコのダンジョンでも見たビッグスネークが多数、今見えるのは30体程で、まだぞろぞろと森の中から出てきていた。そんな多数の魔物が現れ俺達に威嚇してきた。
どうやら後続の蛇共が揃うまで待っているらしい。俺はその間に初めて見る青い蛇に鑑定をかける。
名前:
種族:ブルースネーク
年齢:-
レベル:7
str:56
vit:42
agi:52
dex:38
int:28
luk:19
スキル:巻き付き 熱探知
ユニークスキル:
称号:
鑑定した結果は、ビッグスネークよりかは強いが今の俺と比べると雑魚だ。蛇共は数は多いが、魔法もあるしこれくらいならどうにでもなるだろう。
「(大丈夫だニコ、俺に任せておけ。これくらいならどうとでもなる。)」
だから下がっているんだ、と言おうとした時、森の中から今度は蛇じゃない者が出てきた。そいつは現れるなり、俺とニコの間に入り込み俺の前に立ちふさがる。
「がうぅぅ!がうがう、がう!」
新たに表れたのはコボルトであった。そしてそいつは、何故か俺に向けて威嚇しているみたいだった。
「(なんだこいつ?俺は敵じゃないぞ!?ニコ、こいつに俺は敵じゃないって言ってやってくれ!)」
俺は言葉がわからないコボルトに、ニコを通して通訳してもらおうとして声をかけた。だがニコはそれどころではないみたいだった。
「わう!パパわう!」
「(え?ニコのお父さん!?なら・・・ってくそっ!蛇共が向かってきやがった!)」
ニコは現れた父親に驚いて俺の声が聞こえていなかった。何とかニコをなだめて通訳してもらおうと思っていたら、いよいよ蛇共が揃ったようで俺達の方へ迫ってきた。
「(っちぃ!まずは蛇の対処だ!数は多いがこれでどうだっ!氷の散弾!!)」
蛇の数は100匹ほどにまで増え、ブルースネークの数も10匹くらいに増えていた。
しかしいくら増えたところで今の俺のステータスなら蹂躙できる、そう思いまずは得意の『氷魔法』を使って数を減らすことにした。
その効果は絶大みたいで、俺が氷で作った散弾で9割方の蛇は死んだみたいだった。
「(よし、後はブルースネークが数匹だけだな!後は魔法なしで!!)」
俺は残った数匹のブルースネークに飛びかかり、ひっかきと咬みつきで殲滅した。そうして蛇共全滅させると、死んだ場所にはドロップアイテムが散らばっていた。ダンジョンの魔物は外で死んでもこうなるんだなと新発見だった。そして次はニコのお父さんの対処だなと思って二人の方を見ると・・・。
「(ん?あれっ!?2人ともいないっ!?)」
ニコたちのほうに振り向くと二人ともいなかった。まさか・・・、まだ俺を敵と思い込んでいて、それでニコを連れて逃げた?
その可能性はありうるなと思い、周囲の匂いを嗅いでニコ達を探す。するとニコの匂いをとらえられた。
「(うん、ここから遠ざかっているな。だが俺から逃げられると思うなよ?)」
悪役の様なセリフを吐き、俺はニコの匂いを追い始めた。
・
・
・
「(ん?もう止まるのか?)」
意気込んで追いかけ始めたものの、ニコ達は割と近くで止まったみたいだ。そしてそのままニコ達に向かって進んでいると、ニコ達が止まったあたりから複数の生き物の匂いが感じられた。
「(やばっ!まさかまた襲われているのかっ!?)」
俺は焦り、速度を上げてニコ達の元へ走った。そしてその速度のまま、ニコ達の元へと飛び出した!
「(無事かニコっ!)」
「わう?わう!一狼兄ちゃんわう!」
飛び出し様に声をかけたのだが、相手からはのんびりした声が返ってきた。そう、それもそのはず、そこに感じた複数の匂いは全てコボルトだったのだ。
ふぅーよかったーと安堵していたが、そんな俺に威嚇の声が飛んできた。
「がううう!がう!がうがう!」
恐らくニコパパだ。ニコを小脇に抱えたままなので恐らくそうだろう。そして威嚇の声を上げているのはそんなニコパパだけだった。
他のコボルト達は、俺を警戒はしている様子だが、吠えるまではしてこなかった。
「(あー、すまんニコ。俺は悪い奴じゃない、ニコを助けてその仲間の様子を見に来たんだ、と伝えてくれないか?)」
「わう、わかったわう!」
ニコは俺の頼みを快諾してくれ、周りのコボルト達に話し始めた。俺は取りあえず座り、事情を分かってくれるまで待つことにした。
暫く事情を話すニコ達を見ていたのだが、中々話がまとまらない。それは主に一人のコボルトのせいだ。俺は暇だったので、そのコボルト『ニコパパ』のステータスを鑑定してみた。
名前:
種族:コボルト
年齢:8
レベル:7
str:93
vit:71
agi:99
dex:85
int:30
luk:23
スキル:統率 ひっかき 仲間呼ぶ声
ユニークスキル:
称号:群れの長
なるほど、なるほど?ニコパパって群れの長、つまり村長だったのか。ということは、ニコは村長の娘って事か。まぁ置いといて、ニコパパのステータスだが・・・割かし高いな。スキルも群れの長っぽいスキルもってるし。けどこのステータスでダンジョンから出てきた魔物にはかなわなかったのか・・・?
俺は他のコボルトも鑑定していく。他のコボルトは、ニコパパより弱いが、大体strからdexの上4つのステータスが70~60程で、そこそこ強かった。
ゴブリンと比べると、少しだけ各上かなぁとか思っていると、話が終わったのかコボルト達が俺に近寄ってきた。
「がうがう、がう」
ニコパパが他より一歩前に出て、何かを言ってきた。
「(うん?すまんニコ。ちょっと通訳頼む)」
やはり何を言っているのかわからず、ニコに通訳を頼んだ。するとニコは「まかせろ」とばかりに通訳を始めてくれた。
「わう、まずは助けてくれてありがとう、って言ってるわう」
なるほど。俺はニコパパに頷き、先を促す。すると何やらすごい剣幕でしゃべり始めた。なんか怒ってる・・・?それもニコが通訳してくれた。
「わう、だが娘はやらん!ちょっとツラが良くて強いからって俺はみとめんぞ!だってわう」
なるほど?娘は受け取らんが、褒め言葉は受け取っておこうじゃないか?ありがとう。
いやしかし、あるもんだなぁこんなベタな展開!娘はやらん!って、そんな漫画みたいなの初めて見たわ!
俺がシミジミ体験したことをかみしめていると、まだ何か言っていたニコパパが、唐突に前のめりに倒れた。どうやら他のコボルトに後頭部を殴られたみたいだ。大丈夫かニコパパ?
俺が心配していると、ニコパパを殴ったコボルトが前に出て何か話し始めた。
「わう、ママわう。うるさいから殴ったって言ってるわう。ごめんなさい強くカッコイイお方、だってわう」
「(あー、大丈夫って言ってくれ。あとベタな展開も体験させてくれてありがとうって。あ、それと困っているみたいだから何か助けようか?とも)」
俺は褒められたのが嬉しくて、またもやチョロイン属性を出してしまった。
そんなの・・・仕方ないじゃないかぁ!前世ではカッコイイとか言われたことないんだもの・・・。
まぁそれに、ニコの仲間だしな・・・。深く考えずに眷属にしたが、もう妹みたいなものだ。その仲間だってんなら、助けてやらなきゃな。
「(あー、けどあれだな。とりあえず今どんな状況なのか教えてくれると助かるな)」
「わう、言ってみるわう」
そういえばニコパパイベントがあったから、まだ状況が聞けてないんだよな。何か行動するにしても、最低限は情報がほしい。
あれくらいの蛇ならコボルト達でも数がいれば何とかなりそうだったが、コボルトは数が少ないのだろうか?
そこら辺を交えて話を聞くと、大体このような事らしい。
・ニコがいたコボルトの群れは大体60人くらいの群れ
・蛇共には最初、村の戦えるコボルト達が総出で対処し、何とか撃退できていたそうだ。
・現在は敗走してバラバラになり、近くにある他の群れへ避難するように指示を出したらしい。
・ここにいるのは10人ほどで、逃げ遅れているものがいないか探していたらしい。
・そうすると、村のほうから何やら声がするので見に行ったら、俺とニコを発見したが、俺も敵だと思いニコだけ連れて逃げたらしい。
話を聞くと、なぜ敗走したのかわからなかったが、最後にその理由が語られた。
その話を聞いて俺は、少しまずいかもと思い始めた。
コボルト達曰く・・・、化け物がでたそうだ。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。本日中に後1話上げられたら上げようと思います!
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もう一話待つ間のお共に如何ですか?↓ 超不定期連載予定作です。
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