第39話 けんぞくぅとわんちゃん
突然だが、俺の目の前にいるモノの話をしよう。
そいつは小さい、大体2分の1ごぶ助程の大きさだ。ステータスからも解るが、恐らく幼体なのであろう。
そいつは全身毛むくじゃら、犬の様な姿形をしていたが2足歩行している。衣服を纏っておらず、全身を白っぽい毛が覆っている。だが何故か靴だけは履いていた。
そいつは言ってる言葉が意味不明、念話が出来る様にしてみたが、たぶんうまくいっていないのだろう。・・・そうだろう?
「(なぁ、小さなコボルト君?いや、コボルトちゃんなのか?まだうまく念話が出来ていないみたいだな?もう一度落ち着いてやってみ?)」
俺は優しく小さなコボルトに話しかけた。小さなコボルトはそれを受けて不思議そうに首を傾げ、もう一度あの理解したくない言葉を言った。
「・・・わう?お肉美味しい?ありがとう?一生ついていく?ダーリン?」
「(オーマイガッ!・・・一応聞いてみるが最後の何?)」
手下(眷族)にしようと、餌付けの為に肉を上げただけで何故そんな旦那様扱い?俺は頭痛がイタイと思いながら一応聞いてみた。
「わう、パパやママが美味しい肉を取れるものをツガイにしなさいって言ってたわう。だから美味しいお肉をくれたダーリンとツガイになるわう?だからダンジョンから逃げて一緒に二人だけで生きるわう!」
「(なるほど・・・、パパとママがそう言ってたのか・・・)」
何となく解った理由に一応納得。まぁまだ幼いみたいだし、両親の言っていた事を信じてそうしようと思ったのかと納得。
「(ふぅ、びっくらこくわ。なぁごぶ助?・・・ごぶ助?)」
「ごぶ・・・、ごぶごぶ・・・」
自分の中で納得し、吃驚したわーとごぶ助に声をかけると、ごぶ助は難しい顔をして小さなコボルトと俺を交互に見ていた。一体どうしたのだろう?
疑問に思った俺の灰色の頭脳が冴えわたり、頭にピカーンときた。さてはごぶ助・・・相棒の俺が取られると思ってる?
「(ふっ・・・、安心しなごぶ助。俺の相棒はお前さっ!俺は何処にもいかんよ!・・・多分あの子まだ小さいから、両親の言ってることをそのまま鵜呑みにしてるんだとおもうわ・・・)」
「ごぶごぶ、ごぶ・・・?ごぶごぶ・・・」
俺はごぶ助に、ズットモダヨ!とおどけて言い、その後にぼそっとまじめな声で予想した事を付け足し呟いた。ごぶ助は何やら納得したような顔を見せたが、何故かまた首を傾げ始めた。俺の言ったことは微妙に外れていたのだろうか?イマイチ謎だったが、とりあえず今はコボルトだと思い、そっちに話しかける。
「(あー、コボルトちゃん、とりあえずそのダーリンってのはやめようか?)」
「わう?ママはパパの事そう言っていたわう。ツガイはそう呼ぶんじゃないわう?」
両親はバカップルなのか・・・?とりあえずやめさせよう・・・。
「(うむ、違うな。というか、そもそも番になる気はない!俺は動物が好きではあるが、ケモナーではない!という事で、俺の事は一狼兄ちゃんとでも呼んでくれ。)」
(一狼兄チャん様、ケモナーとハ何デス?)
「わう・・・、一狼兄ちゃんわう?・・・、わう!一狼兄ちゃん!ケモナーって何わう?」
「(黙れポンコ、そしてお前は兄ちゃんと呼ぶな。そして二人ともケモナーの事は忘れろ)」
ケモナーについて聞いてきた二人を黙らせておく。特にポンコ、お前は黙れっ!
「(えー、気を取り直して・・・。ごほんっ、それでさっきからダンジョンって聞いて随分警戒しているがどうしてなんだ?)」
ダーリン呼びに気を取られたが、もっと重要そうな事を聞くべきだな。俺は取りあえずダンジョンと聞いて異常に警戒しているわけを聞いた。これが解決すれば後の話もスムーズになる気がしたからだ。
「わう!わたち達の村が、ダンジョンから出てきたテキにおそわれたわう。パパやママ、大人の人たちはそう言ってたわう。だから二人で逃げるわう!」
ダンジョンから敵が出てきて村が襲われただって?
「(なぁコボルトちゃん?ダンジョンから敵が出てきて村が襲われたって言ったけど、もうちょっと詳しく教えてくれないか?)」
「わう・・・。パパやママに逃げなさいって言われたわう・・・。それで逃げただけだからわからないわう・・・。でも村が敵におそわれたのはほんとうわう!」
コボルトに尋ねたがそういう事らしい。まだ小さいから仕方ないか。となると、もう一人のわかりそうな奴に聞いてみるか。
「(なぁポンコ、ダンジョンから魔物が出るってあるのか?)」
(はイ、ありマス。迷宮が十分ニ育ち、侵略すル意図を持てバ可能デス)
「(なるほど?っていうかこの話に出てる魔物って、ウチのダンジョンから出た魔物ではない?)」
(はイ、違いマス。現在ポンコの迷宮ハ魔物ガ居りマせんシ。恐らく近隣に移動シテきた迷宮ダと思いマス)
ダンジョン本人に話を聞いたところ、ダンジョンから魔物が出ることはあるらしい。所謂、氾濫したって奴だろうか?っていうかポンコ、最後衝撃的な事言ってなかった?
「(なるほど。ところでポンコ、最後に迷宮に魔物がいない、近隣に迷宮が移動してきたって・・・マジ?)」
(はイ、現在ポンコの迷宮にハ魔物ガ居りマせン。エラーが起キて消滅しタと思われマス。近隣に迷宮が移動しテきたと言うノは、コボルトの話カら判断シた結果デス)
「(そもそも、迷宮って移動できるんだ・・・。でもよりによって何でウチの近くに・・・)」
迷宮の魔物が消えた事はなんとなく納得できた。色々起こったもんな・・・、そのせいでダンジョンコアもポンコツっぽいし?しかし迷宮が移動できるのは衝撃的だな。これも龍脈を使えるようになれば出来るのだろうか?
俺がそんな事を考えた時、更に衝撃的な事をポンコは言う。
(恐ラくですガ、ポンコを取り込ム為に移動シてきたノでショウ。現在はポンコの隠蔽状態も解除さレていマすのデ)
「(え?それってヤバくない?・・・っていうか隠蔽とかされてたんだ)」
(はイ、現在は解除サレて誰デも入り放題でス。ナので、放っテおくとポンコの迷宮へト入り込まレ、ポンコを奪いニ来マス)
他のダンジョンコアを取り込むと色々メリットがある、そうポンコに聞いていたが、こちらが襲われる側だとは頭になかった。今までは隠蔽されていたみたいで大丈夫だったみたいだが、それも無くなり今は入りたい放題だという。
しかし・・・奪いに来るだと?許せんな。
俺は襲われたゴブリン村の事を思い出し、怒りが沸いてきた。もともとダンジョンを強化するつもりで、他のダンジョンを襲いに行こうと思っていたが丁度イイ、襲い返してやるとしよう。
俺は、こちらを襲いに来たダンジョンを返り討ちにしてやると考え、知らぬ間に「グルル」と唸っていた。するとコボルトが吃驚して泣き始めた。
「わうぅ・・・一狼兄ちゃんこわいわぅ・・・。やっぱりワルイダンジョンの味方だったわうぅ」
「(あっ・・・いや、俺達は悪いダンジョンじゃないよ!ほら、お肉でも食べなさい!)」
小さな子犬を泣かせてしまったと焦り、とりあえず機嫌を取るために肉を食べさせる。するとコボルトは泣き止み笑顔で肉を食べ始めた。
「(ふぅ・・・。とりあえず俺たちが悪い奴じゃないと教えなきゃな・・・)」
(はイ、ポンコ達は良い迷宮デス)
「ごぶごぶ、めすがきわからせるごぶ」
俺達はとりあえず、誤解しているらしい悪いダンジョンではないという事をコボルトに説明することにした。ごぶ助が薄い本で聞く様なワードを言っているが、薄い本がアツくなるような展開にはならんよな・・・?ならないよな!?
・
・
・
「わう、一狼兄ちゃん達はワルいダンジョンじゃないってわかったわう。お肉をくれるいいダンジョンわぅ!」
「(何か違う気もするが、まぁそうだ。俺達は良いダンジョンなんだよ『ニコ』)」
「わう!ニコわかったわう!一狼兄ちゃん、ごぶ助、ポンコ、よろしくわぅ!」
「ごぶごぶ、わからせ成功ごぶ。よろしくごぶ」
(はイ、よロしくお願いしマス)
小さいコボルト改め、『ニコ』は俺達が悪い奴らじゃないとわかってくれた。ついでにそこから色々事情も聴いたりもしての歓迎のあいさつだ。ごぶ助の挨拶についてはスルーだ。紳士淑女の為に言っておくと、安心してくれ、何もなかった。
さて、この『ニコ』という名前だが、せっかく眷族になったのに、いつまでもコボルト呼びもどうかと思ってそう呼ぶことにした。一狼の次という事でニ、コボルトからコを取って『ニコ』だ。安直だがまあいいだろう。
ちなみにこの名前だが、ステータスには反映されていない。ポンコ曰く、
案外条件厳しいんだな・・・。まぁ出来る様になったら考えてあげよう。っていうか両親に何も言わず眷族とかにしたけど大丈夫だろうか・・・?
「(ってそうだ、ニコの両親の様子も見てこなきゃな)」
「わう!パパとママ助けてほしいわう!」
眷族にした云々以前に、両親が生きていなきゃそれも言えない。なので、ニコの村が襲われてまだ日は経っていないはずなので様子を見てくるべきだろう。
俺はごぶ助達に指示を出すことにした。
「(よし、これからの行動を指示する。まずはごぶ助とポンコ、ダンジョンを守っていてくれ)」
(はイ、ワかりマシタ)
「ごぶ?我もいかなくて大丈夫ごぶ?」
「(ああ、ごぶ助はダンジョンを守っていてくれ。今ダンジョン内は魔物もいないし非常に守りが薄い。敵方の魔物が来たらやばいからな、だから守りを頼む)」
「ごぶ、わかったごぶ」
「(そしてニコ、お前は村まで案内してくれ)」
「わう!パパとママの村へつれていくわう!」
「(よし、それじゃあ行動開始!)」
「「「了解」ごぶ!」わう!」
俺が号令をかけて、全員行動しだす。と言っても動くのは俺とニコだけなんだが・・・。
俺とニコは『迷宮内転移』を使い入口まで転移した。この時ニコが吃驚して騒いだが、なんとかなだめてニコの村へ出発する。
小さいニコのペースで行くと時間がかかりそうだったので、俺は背中にニコを乗せて走った。背中からのニコの案内で進んでしばらく行くと、ニコが騒ぎ出す。
「わう!そろそろ村わう!」
「(了解だっ!一旦ペースを落とす!ここからは慎重に行こう!)」
ニコに声をかけ、速度を緩めた。そこからは一旦慎重に進む。何があるかわからないからだ。やばい魔物とかがいたら、最悪逃げてごぶ助に合流も考えなければならない。
そんな事を考えて、恐る恐る進む。すると村らしき場所が見えてきた。
しかし・・・。
「(気配がない・・・)」
「わ・・・わう!?」
俺が呟いてしまった言葉を聞き、ニコが俺の背中から飛び降りた。そのまま村の中心辺りに走っていき、声を大きくして呼びかけた。
「わう!誰かいないわう!?だれかー!?」
「(ニコ!敵もいるかもしれないから静かにっ!)」
俺が注意してもニコは叫ぶのを止めなかった。
だが、その呼び声に反応するものは村の中にはいなかった・・・。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
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