第24話 やばいよやばいよ!のわんちゃん

 広い部屋の奥にある黒い穴のようなものを見て俺たちは相談していた。


「(とりあえずこれは最後に調べるとして、他にも何かあるかもしれないからこの部屋の中を調べてみよう)」


「ごぶごぶ、わかったごぶ」


 とりあえず部屋の中を調べてみる。だが特に何もなくただの少し広い部屋の様で、ごぶ助も何も見つからなかったと言ってきた。


「(となると、やっぱりこれを調べてみるしかないのか?)」


「ごぶごぶ、・・・ごぶ!何か変ごぶ!」


「(・・・ッ!何だ?波打っている・・・?)」


 俺たちが黒い穴のような物の前でそれを調べるしかないと言っていると、突然それの様子に異変が起こった。黒い穴のような物の表面が波打っているのだ。そのまま様子を見ているとさらに異変が起きた。


「キュピュィ」


 黒い穴のようなものから芋虫の魔物が出てきたのだ。


「(な・・・なん・・・!?)」


「ごぶっ!」


 動揺している俺の横でその現象に動じていなかったのか、ごぶ助はとりあえず敵は排除といった感じで芋虫を攻撃した。


「ごぶ、ただの芋虫ごぶ」


「(お・・・おう、すまんごぶ助。助かったわ)」


 芋虫を倒したごぶ助は、大丈夫かと気遣うような表情を見せながら報告してくる。

 ヤダナニコノイケメン。ホレテマウヤロー!

 いや、惚れはしないが!だが行動がイケメン過ぎるな。もうゴブメンって感じじゃないし、何この主人公感。俺って実はヒロイン枠・・・?

 そんなアホな事を考えていると、ごぶ助が黒い穴のような物に近づいていた。


「ごぶ、これは何ごぶ・・・?」


「(・・・!おいおい、迂闊に触ったら危ないかもしれんぞ!)」


「ごぶごぶ、わかったごぶ」


 そう言ってごぶ助は手に持っていた『ごぶ助カリバー』で黒い穴のような物を突っつこうとした。

 そして棒が穴に接触しそうになったその瞬間。



『バヂィィィン』



「ごぶ!?」


「(ギャーース!)」


 いきなり静電気が弾けた様な音がした。それも相当な音量でだ。ごぶ助は驚くくらいで済んだが、犬系の魔物になり聴力がすごく良くなった俺はダメージを受けた。


「(ミミガー!ミミガー!)」


「ご・・・ごぶ・・・、大丈夫ごぶ?」


 と言ってもまぁこんなことが言えるくらいの軽微ダメージだったので直ぐに良くなってきた。しかし一体何なんだ、と思っていると。



『ゴゴゴゴゴ・・・』



「ごぶ?」


「(んん?何か揺れてないか・・・?)」


 何か地面、いやダンジョン全体が揺れている気がする。少しそのまま身構えていると揺れはおさまった。一体何だったんだ?そう思い辺りを見回すと少しだけ変わった物があった。


「(ごぶ助、あの黒い穴みたいなやつどこ行った?)」


「ごぶ?そういえばないごぶ」


 いつの間にかあの黒い穴のような物が消えていた。ごぶ助が棒で突っついたときにすごい音がしたが、あの時に消えてしまったのだろうか?そしてあの地震はそのせいで起こった?それにあの黒い穴の様な物から何故魔物が出てきた、もしかしてスポーン地点・・・?


「(んー、ここで考えていてもわからんか!ごぶ助、とりあえず進もう!)」


「ごぶごぶ、それがいいごぶ」


 わからないことをここで考えていてもわからないと思い、とりあえず進もうとごぶ助に提案してみる。ごぶ助もそれがいいと言ってくれるのでそうすることにして、一つ前の分かれ道まで戻り進まなかった方の道を進むことにした。


「(よし、とりあえず分かれ道までは戻ってきたな。さっきの地震で何かあるかもしれないから慎重に進もう)」


「ごぶ!ガンガン命を大事にごぶ!」


 色々混ざってるがヨシとする!とりあえず慎重に進むことにして通路を行く。そうして進んでいると通路に一匹のオークが現れた。


「(ごぶ助前方にオークがいる)」


「ごぶ、やるごぶ」


「(最初はごぶ助が突っ込んでくれ。俺は後からついて行って援護する)」


「ごぶ、じゃあ行くごぶ」


 初手をごぶ助に頼み俺はそれに続こうとする。そしてごぶ助がオークに接敵して攻撃を加えた。加えたのだが何か様子がおかしい。

 ごぶ助の攻撃は確かにオークに当たった。いつもなら攻撃を受けたオークは一撃では沈まず痛がったり怯んだりして声を上げる。しかしこのオークは違った。


「プギャァァアアオオオオオアアアア!」


 確かに声は上げたもののそれは痛がったり怯んだりではなく、狂ったような怒ったような声であった。


「(・・・ッ!気を付けろごぶ助!何か様子がいつもと違う!)」


「ごぶ!」


 ごぶ助の攻撃に続くために敵に近づきつつあった俺はいったん停止し、オークの様子を伺う。そのオークはいつもの様子と違い、目が血走り息も荒く吐き出してよだれまで垂らして正気ではない様相だった。


「プギャァァアアアァァア!」


 俺たちが様子を伺っているとそれに焦れたのか、オークは叫び声をあげながら突っ込んできた。俺の方に向かってきたので攻撃を避け、氷魔法で攻撃する。それに続いてごぶ助も攻撃をしかけた。


「プギャァァアアオオオオオアアアア!」


「(こいつ!攻撃を受けたのに痛がるそぶりもせずに突っ込んできやがる!)」


「ごぶ!攻撃は確かに当たっているごぶ!」


 俺たちの攻撃がまともに当たっているはずのオークは、痛がるそぶりもせずに狂ったように突っ込んできた。

 しかしその分狙いや動きは単調で攻撃事態はよけやすかった。なので俺たちは攻撃を避け、逆に攻撃を当てまくることができた。そんな攻防を少し続けるとオークは意外とあっさり倒れて消滅してしまった。


「(様子がおかしいだけで強さはそこまで変わっているわけではなさそうだな。動き事態は単調になったりして攻撃はかわしやすかったし)」


「ごぶごぶ。でも怯まないし全力で攻撃してくるから少しだけ厄介ごぶ」


 俺たちは敵の落としたドロップアイテムを回収しながら、様子のおかしかったオークの評価をしていた。その結果、そこまで警戒する物でもなさそうという事になった。でもなぜあんな様子に・・・?

 そんな少しの疑問を残しつつ先を進むことにした。

 しばらく通路を進むと魔物がチラホラ出てくる。そしてその出てくる魔物はすべて様子がおかしかった。皆が皆狂ったようになっていたのだ。

 と言ってもそこはオークと一緒で、普通に対応すれば難なく倒せる魔物ばかりだったので、ごぶ助との慣れたコンビネーションで魔物たちを倒して進んで行った。

 そうしてしばらく進んでいると通路の様子がおかしくなっていた。


「(むむ・・・ちょいと待っただ、ごぶ助。通路が・・・)」


「ごぶ?ごぶ・・・道が崩れてるごぶ」


 そう、進行方向の道が崩れて通れなくなっていたのだ。すこし前に起こった地震でこうなったのだろうか?


「(仕方ない、いったんセーフティーエリアまで戻ろう・・・)」


「ごぶごぶ、もどろうごぶ」


 パッと見で掘り起こしたりするのは無理そうなので、一旦セーフティーエリアまで戻ることにした。そして戻る途中なのだが、不思議な事があった。魔物が全然出てこなかったのだ。

 おかしいな、これだけの距離を移動していると魔物が出てきてもいいんだが?

 俺はおかしいなと思いつつもセーフティーエリアへの道を戻っていく。そして魔物とも出くわさないままセーフティーエリアに到達した。到達したのだが・・・。


「ごぶ?何かおかしいごぶ?」


「(あぁ・・・何かいつもと様子が違うな)」


 いつものセーフティーエリア内は光苔によって柔らかな光りが灯り、空気も優しい空気が流れていて心地よい空間だったのだが、他の一般通路みたいに少し薄暗く籠った様な空気が流れる、そんな様相だった。

 一体何が?と思って、部屋の中央の天井にあるセーフティーエリア生成球を鑑定してみる。


『ダンジョン施設:セーフティーエリア生成球(停止中)

 ・ダンジョン10階層に設置されたセーフティーエリアを作るための球。外すと生成球、セーフティーエリア共に消滅する。』


「(なぬ!?停止中!?)」


「ごぶ?何かわかったごぶ?」


「(あぁ・・・、どうもこのセーフティーエリアは停止・・・、つまり安全じゃなくなったらしい)」


「ごぶごぶ、やばいごぶ?」


「(やばいよ・・・・やばいよ・・・!)」


 セーフティーエリアが停止しているとやばいかって?やばいに決まってるよ!だってつまり・・・

 俺が焦っていると俺たちがいつも通っている通路の反対側の通路から音が聞こえてきた。


『ドスンドスンドスン・・・』



 ああぁあぁぁああ!やばいよやばいよおおおおお!



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。皆様のおかげでPV数も上がってきております。これからもよろしくお願いします。


「面白かった」「続きが読みたい」「やばいよやばいよ!」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。


 ☆や♡をもらえてこの小説が人気になると、作者が出○ばりにやばいよやばいよ!と言います。よろしくお願いします。




 赤いキツネと緑のたぬきのコンテストがあったので書いてみました。


 よろしければ↓になります。どうぞお読みください。 


 https://kakuyomu.jp/works/16816700429090484182

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