第23話 久しぶりのウサギとわんちゃん

 一番奥まで探索しようと決めた朝がやってきた。


「ごぶごぶ、おはようごぶ」


「(おはようさん!とりあえずご飯食べようか)」


 英気を養うためにもまずはご飯タイムとしゃれ込む。気合を入れるためにはやっぱり肉だ!


「ごぶごぶ、やっぱりお肉は最高ごぶ」


「(だな!今日は大変な日になるかもしれないからしっかり食べて気合をいれようぜ!)」


「ごぶ!いつもより多く食べておくごぶ!」


 ごぶ助とたわいない会話をしながら食事をして、終わったら出かける準備をする。大体は昨日のうちに済んでいるから最終チェックだ。


「(忘れ物はないか?食料とか薬類はちゃんとアイテムボックスに入れたか?)」


「ごぶ、大丈夫ごぶ」


 防具を着込んだごぶ助は『ごぶ助カリバー』を右手に問題ないと報告してきた。武器と防具もちゃんと装備しているみたいだし大丈夫そうだ。


「(よし、じゃあ出発しよう!目標は奥の方までガンガン行って外に出る道を探す!作戦は命を大事に、だ!)」


「ごぶ!命を大事にガンガンいこうごぶ!」


「(何か混ざってる気がするが・・・、とりあえず出発!)」


 いつものフォーメーションで俺が偵察役になり通路を進んでいく。途中でチラホラと魔物が出てくるが、大分強くなった俺たちのコンビネーションで無理なく倒していく。もちろんドロップアイテムは回収だ。


「(ごぶ助、アイテムボックスはまだ大丈夫そうなのか?)」


「ごぶ、大丈夫ごぶ、問題ないごぶ」


 不安になる答えだが気にしてはだめだ。それにもう少し進むと俺たちがまだ行ったことのないエリアに入るので、そんなことを気にしている暇はない。

 そのまま警戒をしつつも通路を進んで行き未到達ゾーンに入った。未到達ゾーンに入ったからと言って特段何も起こらず、かと言って気を抜かずに進んで行く。

 しばらくの間分岐点等があれば適当に進んだ。分岐点の先が行き止まりになっている場合は引き返し、残りの道を進む。そんなことを繰り返すうちに一つの分かれ道についた。


「(ちょっとまった)」


「ごぶ?なにかあったごぶ?」


「(この分かれ道何だが、片方から何かはわからないが多くの気配を感じる)」


「ごぶごぶ、オークごぶ?脂たっぷり美味しいお肉ごぶ」


「(なんでやねん!オークじゃなくて。多数ってこと!)」


「・・・ごぶ!ごぶごぶ?それで多くの気配があるごぶ?」


「(そうなんだよ。それで何かがあるかもしれないから一応様子を見ておきたいんだが、いいか?)」


「ごぶごぶ、見に行ってみるごぶ」


 ごぶ助からも了解を得られたのでそっちの道に進んでみる。その道を進んで行くと通常よりも魔物が多くいる気がしたが、さらに奥にもっと多くの気配を感じる。何があるのだろうと多数の魔物を狩りながら進んで行くと、前方に広い部屋があるのに気が付いた。


「(待ったごぶ助。この先に広い部屋があるみたいだ。ちょっと様子を覗いてくる。)」


「ごぶ、わかったごぶ」


 ごぶ助に通路で待っていてもらい一人で様子を覗きに行ってみる。気配を殺すようにソロリソロリと部屋に近づいて行き、入口から中を覗き見る。

 部屋の中には多くの魔物がいた。色々な種類の魔物がいたにもかかわらず、争うこともせずにボーっとした感じでフラフラ動いている。

 何なんだ?一体ここは・・・?おや、あそこにいる魔物ってまさか・・・!

 俺は急いでごぶ助の元へ戻った。


「(ごぶ助!この先の部屋にがいたぞ!例のだ!)」


「ごぶ?例のって誰ごぶ?」


 ごぶ助の元へ戻った俺は、部屋の中で見た1体の魔物についてごぶ助に話していた。俺はその見つけた魔物があまりにもレアだった為に、興奮して名前がなかなか出てこなかった。


「(だよ・・・あの、ほら!例の!ウサギ!)」


「ごぶ?ウサギごぶ?頭に葉っぱが付いたウサギごぶ?」


「(そうそれ!四つ葉ウサギだ!)」


 そう、俺が見つけたのは四つ葉ウサギと言う魔物だ。こいつはこの10階層に転移させられて直ぐは4匹狩れたのに、そこからは1匹も見たことがなかったのだ。特殊進化を起こす称号持ちの魔物だからレアモンスターだとは思っていたんだが、最初にあれだけでたからそうでもないかと思っていたんだ。


「ごぶごぶ、久しぶりにみつけたごぶ?」


 そうなんだよ。ごぶ助の言う通り久しぶり何だ。

 俺たちが特殊進化をして以来、実は四つ葉ウサギを見たことがなかったのだ。ユニークスキルを使った結果現れた魔物だったというのもあって、そういうものだったのかなともう諦めていたのだが見つけたからには倒したい。

 もしまた倒せたなら、もう一度何かあるかもしれないからだ。


「(よしごぶ助、倒しに行こう)」


「ごぶ、わかったごぶ」


「(部屋の中には他にも多数の魔物がいたんだが、大体が弱い魔物で4,5匹だけオークやリザードマンといったそこそこ強い奴が混じってた。今の俺たちならそれくらいはイケるはずだ!)」


「ごぶ!ガンガンイこうごぶ!」


「(部屋にはこの通路しかつながってないみたいだから、四つ葉ウサギが逃げれないように部屋に入るときに氷魔法で出入り口を塞ぐって感じにするわ。あと作戦としては、まず俺が氷魔法をぶっ放して弱い魔物を一掃、その後にごぶ助は生き残った強い魔物を端から叩いて行ってくれ。俺はそれを援護する)」


「ごぶごぶ、色々やるごぶ?・・・ごぶ!色々ガンガンやるごぶ!」


「(また何か色々混ざっているが・・・まぁよし!それじゃあやってみるか!)」


 俺たちは部屋の入口へと進み、まずは通路を塞ぐ。そして俺は雑魚を一掃するために魔法を使った。


「(食らえ!氷の散弾広範囲バージョン!)」


 かなり適当なネーミングだがイメージはしっかりしたので大丈夫なはず。成果を確かめてみるとうまくいったみたいだった。ちなみに四つ葉ウサギはちゃっかり攻撃をよけていたみたいで生き残っていた。

 作戦通りに残った強い魔物に対してごぶ助が襲い掛かる。まずは端にいたオークに狙いを定めたみたいだ。

 俺はそれをサポートすべく走り出す。まずはごぶ助に他の魔物が向かっていかない様にスキルの『雄たけび』を使い、叫び声をあげ敵の注意を引いた。


『グオオォォオオン!』


 一瞬魔物たちがビクッ!として止まる。その間に俺は再び氷魔法を発動させて攻撃する。注意を引き付けるための攻撃なので、威力は求めずに残ったすべての魔物に当たるように魔法を発動させる。


「(氷の散弾挑発バージョン!)」


 魔物の注意を引けるように継続的に弱い氷の礫を囲まれないように逃げながら当てていく。そうして走って逃げていると、部屋の端の方に四つ葉ウサギがいるのが見えた。なので逃げないように氷の壁を作り閉じ込めるように発動させておく。


「ごぶごぶ!」


 そうするとごぶ助の声が聞こえてきた。ちらりと見ると最初に襲い掛かったオークを倒せたみたいだ。


「(ごぶ助!俺が引き付けている敵を適当に1匹ずつやっていってくれ!ウサギは閉じ込めておいたから後回しで大丈夫だ!)」


「ごぶ!わかったごぶ!」


 ごぶ助に1匹ずつ魔物を削るように指示して引き続き逃げ回る。魔法で弱い氷の礫を当てて挑発するのを忘れずに部屋の中を走り回っていると、チラリと何か気になるものが視界の隅に映るが今は気にしないことにした。そうして徐々に残った魔物を削っていった。

 しばらくすると最後の一匹になったので、もう逃げる必要もないと反転して攻撃を仕掛ける。最後に残ったのはリザードマンだった。


「(おらおらぁ!今の俺ならお前も怖くないんじゃあ!)」


「シャアア!」


 リザードマンの攻撃を避けながらひっかき攻撃を繰り出す。今のステータスならば十分できる芸当だった。攻撃を繰り返しているとリザードマンの後ろからごぶ助が来てハサミうちの体制になる。


「ごぶっ!」


「(ナイスごぶ助!)」


 俺に気を取られていたリザードマンは後ろからのごぶ助の攻撃に反応できずに一撃で仕留められた。あとは四つ葉ウサギのみだ。

 氷の壁に閉じ込めたまま魔法で倒せるかなと考え、氷の壁の上方から壁で作った空間の幅いっぱいの氷の塊を落としてウサギにぶつけた。その氷の塊と地面にプレスされたウサギはスプラッターな光景になったが、すぐに消滅してそのショッキング映像は消えたのでホッとする。

 ウサギが倒せたので、まだ残っていた氷の壁を消し去りドロップアイテムを確認する。


「(おお!クローバー落ちてる!ごぶ助拾ってくれ!)」


「ごぶごぶ、ごぶ?」


 ごぶ助がクローバーに触れると、クローバーは光の球になったがその場で消えてしまった。


「(くっそぉ・・・ダメかと思っていたがやっぱりダメだったか・・・)」


 なんとなくダメな予感があったがやっぱりだった。いくらレアモンスターとはいえ、倒し続けると無限に特殊進化やらのヤバい効果を発揮する物なんてやっぱりないよなぁ・・・


「ごぶごぶ、でもお肉は手に入ったごぶ」


「(そうね・・・お肉ね・・・)」


「ごぶ!他にもお肉いっぱいごぶ!」


 そう言ってごぶ助は落ちたドロップアイテムを拾いに行った。俺は少し期待していた事がダメになったのでショボーンとしていた。

 そしてショボーンとしながら俺は気になっていたにちらりと目を向けた。

 逃げている間ずっと気にはなっていたのだ。だが見た目はやばいが気配はなんとなくヤバくない、そんな感じがして後回しにしていた

 チラリとを見ているとドロップアイテムを回収し終えたごぶ助が近寄ってきた。


「ごぶごぶ、お肉拾ってきたごぶ。それなにごぶ?」


「(なんだろうなぁ・・・)」



 俺たちはそこにある謎の黒い穴みたいなものを見てそう言った。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。皆様のおかげでPV数も上がってきております。これからもよろしくお願いします。

「面白かった」「続きが読みたい」「例のあいつ」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると、例のあいつにエクスペクトパトローナムがきまります、よろしくお願いします。


 赤いキツネと緑のたぬきのコンテストがあったので書いてみました。

 よろしければ↓になります。どうぞお読みください。 

 https://kakuyomu.jp/works/16816700429090484182

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