第25話 再び現れた強敵とわんちゃん

『ドスンドスンドスン』


 重量感がある足音が響いてくる。そしてついにはこの部屋へ足を踏み入れてきた。


「ヴオオオォォォオオオアアア!」


「(・・・っ!)」


「ごぶっ・・・!」


 ミノタウロスは部屋に入るなり咆哮を上げてきた。ミノタウロスも他の魔物同様に様子がおかしくなっているらしく、目が血走り息も荒く俺たちを睨み付けている。しかし相変わらずの強い圧で、咆哮を聞いた俺たちは一瞬体が固まる。

 しかしビビったままではいられない。なんせセーフティーエリアはもう効果を失くし、奴はこの部屋へ入ってきた。逃げ出すにしても通路は崩れ逃げ場はない、戦うしかないのだ。

 俺はとりあえず鑑定をかけてみる事にした。俺たちの実力差が埋まり、戦えるレベルになっていればステータスが表示されるはずだ。


「(頼む!戦えるレベルであってくれ!『鑑定』!)」



 名前:

 種族:ミノタウロス

 年齢:-

 レベル:10

 str:426

 vit:415

 agi:283

 dex:225

 int:103

 luk:75

 スキル:腕力強化・中 フルパワーアタック

 ユニークスキル:

 称号:



 ミノタウロスに鑑定をかけるとステータスが表示された。実力差はステータスが見れる許容範囲にはなったみたいだ。ミノタウロスのステータスはstrとvitがずば抜けて高く物理特化だった。単純だがその分強いステータス構成だ。


「(ごぶ助!あいつのステータスなんだが、力と防御・体力がかなりやばい!攻撃は食らわない様に何とか避けるように戦うんだ!)」


「ごぶ!わかったごぶ」


「(それと薬類を全部出してくれ!使うときにアイテムボックス内だとまずい!)」


「ごぶ!そこらへんに適当にだすごぶ!」


「ヴオオオォォォオオオアアア!」


 ごぶ助が薬類をアイテムボックスからばらまくようにして出した直後、ミノタウロスが吠えながら突っ込んできた。

 それにいち早く気づいたごぶ助が気を引くようにミノタウロスに向かっていく。


「ごぶ、こっちごぶ!」


「ヴォォオオオオオオ!」


 ごぶ助はミノタウロスの気をうまく引けたみたいで、ミノタウロスはごぶ助に向かって攻撃を仕掛け始めた。

 他のおかしくなったと魔物同様に、ミノタウロスの攻撃は単調で大振りになっていたので、ごぶ助はその動きを読みなんとか攻撃をかわしていた。しかしその攻撃は当たってはいないものの、当たったら間違いなく大ダメージになるであろうことが想像されるすさまじい威力だった。


「(攻撃の空振り音がやべぇ!ごぶ助、気休めかもしれないが守護の壁を張る!だけど本当に気休めだから絶対攻撃をくらうなよ!)」


「ごぶ、わかったごぶ!」


 俺は保険の為に『守護の壁』をごぶ助にかける。この『守護の壁』のスキルだが、以前は使っているときは俺も動けず微妙なスキルだった。だけど練習を重ねた結果、攻撃をくらい壁が破壊されるまで対象を守り続けれるようになった。ちなみに持続時間は現在だと10分くらいは持続できる。

 しかし『守護の壁』をかけて防御力を上げたものの、攻撃をしなければ状況は変わらない。

 ごぶ助も今は攻撃を避けるのが精いっぱいで、ごぶ助から攻撃を仕掛けることは難しそうだった。なので俺はいつもの狩りの要領で、ごぶ助の攻撃をアシストすることにする。


「(足を氷つかせて動きを止めてやる。氷付け!アイスバインド!)」


 動きを止めつもりで敵の足を地面と一体になるように凍りつかせるイメージで魔法を発動させる。


「ヴォオオオアアアア!」


「ごぶ!今ごぶ!」


 ミノタウロスの足に氷がまとわりつき地面を巻き込み凍り付くが、それをミノタウロスはうっとおしいとばかりに声をあげ、力ずくで地面から足を引きはがし動き出してしまう。

 動きは止まらなかった、だが動きは確かに鈍くなった。

 その鈍くなった隙を突きごぶ助は攻撃に打って出る。大振りの攻撃は危険だと分かっているのか、攻撃を細かくミノタウロスの膝関節などに当てて動きを鈍らせようとしている。

 俺はそれを見て、足に氷魔法を続けるとごぶ助の攻撃の邪魔になるかもと思い別の所に攻撃を仕掛ける。


「(燃え上がれ!フレイムスロワー!)」


 ワンチャン呼吸困難になって死なないかなぁと思いながら上半身を『火魔法』で燃やしてみる。そして燃やしながら何かが頭をよぎった。


「ヴァオオオオオオ!」


 一瞬何かを考えてしまったが、ミノタウロスの叫び声でそっちに意識が戻った。どうやら呼吸困難にはならないみたいだが、火で炙られることにより視界が効かなくなり、手を振り回しながら暴れるようにしている。


「ごぶ!ごぶごぶ!」


 今がチャンスとばかりにごぶ助は更に足を削りだす。今までは使っていなかったがスキルも使いだしたみたいだった。

 しかしミノタウロスはステータスのvitが高いせいなのか、俺たちが攻撃を当てまくり、しかもごぶ助の攻撃はユニークスキルの効果なのか防御無視効果があってそれも食らっているはずなのだがそれでも尚ミノタウロスは全く衰える様子が見えなかった。

 どうするべきか・・・、と思ったところで頭によぎっていた事が判明した。


「(ワンチャンで思い出した!ユニークスキル!)」


『火魔法』を使った時によぎったのはユニークスキルの『ワンチャン』である。今こそ使い時と思い発動を念じる。

 だがこのスキルは効果が目に見えてわかったりしないので、効果があったらいいな程度に考えることにする。なのでユニークスキルを使いはしたが、直ぐにそのことは頭から追い出して次は何をするべきか考えだす。


「(そうだ!薬類の中には毒薬も何種類かあったな!)」


 ごぶ助がアイテムボックスから出した薬類の中には毒薬もあることを思い出し、それを使ってみようと考えた。


「(おらぁああ!これでもくらええぇええ!)」


『火魔法』を頭付近に発動させつつ、そこに毒薬を投げ込んでいく。何の薬を投げたかははっきり見てないが、確か毒薬の種類としては体力が減る毒や麻痺毒、幻覚を見せる毒など数種類の毒があったはずだ。


「(おらおらぁぁ!くらえぇえ!くらってくれぇぇえ!)」


 俺は次々と口で毒薬が入った箱を加えてミノタウロスに投げつけていた。どうか毒が効いてくれますようにと願いながら。すると痛恨のミスをしてしまう。


「(これもくらえぇぇええ!・・・あっ!)」


 投げた後に気が付いたのだが、それは毒薬ではなく傷に塗る薬だった。


「(あぁぁぁあああ!しまったぁぁぁあ!)」


「ごぶっ!?どうしたごぶっ!?」


「(い・・・いや、すまん!攻撃を続けてくれっ!)」


 俺が動揺して叫んでしまった為にごぶ助も一瞬攻撃をやめてしまうが、俺が攻撃を続けてくれというと攻撃を再開してくれた。

 しまったなあどうしようと思っていると、ミノタウロスの様子がおかしかった。


「ヴオオオオォ!?ヴアァァア!!!!」


 それまでミノタウロスは狂ったような感じで、攻撃を食らっても痛がったり怯んだりせずに、火魔法で上半身を炙っているときも怯んだりはせず、視界が悪かったから暴れていたみたいな感じだった。

 それが今は動揺?混乱?よくわからないが様子がおかしくなっていた。


「ごぶ!?攻撃の感触が変わったごぶ?何か柔らかくなった感じがするごぶ!」


「(なにっ!?なんかよくわからんがチャンスだっ!全力で攻撃を叩き込むぞっ!)」


「ごぶっ!わかったごぶ!」


「「おりゃぁああああ!」ごぶ!」


 ユニークスキルの効果で何か起こったのか!?

 そう思ったが今は考えている時ではない。チャンスなのは確かなので攻めるしかないと、俺たちは全力で攻撃を仕掛けることにした!

 俺は『集中』と『魔力操作』を使い、『氷魔法』をブーストして硬くデカい氷の矢をミノタウロスの胸に目掛けて放つ。

 ごぶ助はユニークスキルの『覇王』を『一転集中』に上乗せするように使ったのか、オーラみたいなものを纏い、俺の放った攻撃を後押しをするように氷の矢をミノタウロスの体にねじ込むように突き込んだ。

 ごぶ助は突きを放った後、ミノタウロスからの反撃を警戒するかのように飛びのき、俺のそばまで退避してきた。


「ごぶ、やったごぶ・・・?」


「(それ、やってないフラグ!)」


「ごぶ?」


 ごぶ助がやってないフラグを華麗に建てるが、そんなことはなく・・・。


 『ズーーーーーン』


 最後の声を上げる間もなくデカい音を立ててミノタウロスは倒れ、消えていった。


「「勝ったあぁぁぁあ!」ごぶ!」



 俺たちはついにあのミノタウロスを倒したのだ!



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。皆様のおかげでPV数も上がってきております。これからもよろしくお願いします。

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 お詫び:1~10話を少し修正。言い回しや改行を行いました。話の内容などは一切変わっておりません。

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