第20話 ぶた肉とわんちゃん

 現在の俺とごぶ助は・・・超満足していた。今回の進化特典で取得できた『火魔法』でウサギ肉を焼くことができたからだ。


「(あ~、やっぱ焼いた肉はいいなぁ)」


「ごぶごぶ、お肉はやっぱり焼くべきごぶ」


「(だよな~。しかしごぶ助よ、もうちょっとお肉食べたくない?)」


「ごぶ、食べたいゴブ・・・!」


 そう、焼いた肉を食べて非常に心は満足しているんだ。だが体はもっとお肉をよこせと言っているのだ!

 俺たちはユニークスキルを使った1日1回の狩りで飢えるまではいかないのだが、ちょっと物足りないと毎日思っていた。けど食べていたのが生肉だったから、これ以上食べてもなあ・・・って感じだったんだが、久しぶりに焼いた肉を食べてもっと食べたいと言う欲求が爆発した!それを、進化して超強化された今なら解消できるかもしれないのだ!


「(じゃあ今日は・・・もう一狩り行こうゼ!)」


「ごぶ!一狩り行くごぶ!」


「(ただ一つ条件がある!)」


「ごぶ?条件ごぶ?」


「(そう、条件だ)」


「わかったごぶ、じゃあ行くごぶ」


 俺はごぶ助に狩りに行くにあたって条件があると言う。そしてごぶ助は条件も聞かずにそれを了承した。まあいつも通りと言えばいつも通り何だが・・・。

 ごぶ助ってば進化して見た目の変化がすごく、そして中身も前よりか言葉がはっきりしてる感じなんだが・・・、前と同じで考えることをあまりしねえ!正直そこはもうちょっと良くなってほしいと思うのは俺だけだろうか・・・。

 ごぶ助についての所感は置いておき、俺は条件を話した。それは、獲物の強さがやばそうだったらあきらめて明日にする、というものだった。


「(実は俺って人のステータスが見れるんだよね。そんで敵が強かったら帰って、また明日から頑張ろう。)」


「ごぶごぶ、わかったごぶ」


 本当に分かっているのかごぶ助よ・・・。まあここで言っても仕方がない、いつものことだしな!


「(じゃあ行ってみるか、準備は大丈夫か?)」


「ごぶ、大丈夫ごぶ」


 俺がごぶ助に行けるかと聞くと、ごぶ助は大丈夫と言って木の棒を振り回す。そういえばその棒・・・。


「(なあ、その『ごぶ助カリバー』なんだけど、火にかざしたよな?大丈夫なのか?)」


「ごぶ?ごぶ助カリバーごぶ?」


「(ああ、すまん。その木の棒をそう呼んでたんだ)」


「ごぶごぶ!いい名前ごぶ!ごぶ助カリバーごぶ!」


 ごぶ助は俺の命名した名前を気に入ったみたいではしゃいでいる。俺が聞いた棒の状態については忘れているみたいだった。しかし俺が見るに全然問題なさそうなんだが、一体何の木なんだ?頑丈すぎるぞ。

 俺は不思議に思って鑑定をかけるが、鑑定結果は前と変わらなかった。なので、まあいいかとごぶ助ばりの思考放棄をしたが問題ないだろう。

 まだはしゃいでいたごぶ助に、行くぞーと声をかけて出発する。ごぶ助はまだはしゃぎ気味だがちゃんとついてきた。

 そして通路を警戒気味に進んでいると何かの気配をとらえた。俺は念話を使い声に出さずにごぶ助に待機と言った。ごぶ助は頷いて了解を示したので一人で通路を覗き見る。すると通路の先に奴がいた。前は鑑定できなかったが今回はできてくれと祈りつつ鑑定をかける。


 名前:

 種族:オーク

 年齢:-

 レベル:6

 str:214

 vit:238

 agi:158

 dex:125

 int:72

 luk:32

 スキル:絶倫 腕力強化・小

 ユニークスキル:

 称号:


 今回はオークのステータスが確認できた。ということは実力差はそこまでないという事だ。その証拠にオークのステータスを見てみると、俺たち二人でやれば勝てそうかもと感じるステータスだ。

 これは一度戦ってみるかと思いごぶ助の元へと帰り、答えはなんとなくわかるがごぶ助に相談してみる。


「(ごぶ助、この先にいたのはイノシシの姿に似ているオークって奴だった。強さは俺たち二人なら何とかなると思うが、やってみるか?)」


「ごぶ、イノシシはご馳走ごぶ!食べるごぶ!」


「(やっぱりそう言うよな。よしやってみよう。そんで作戦なんだが・・・)」


 ごぶ助に相談すると、やはり狩るという答えが返ってきた。なのでそうなるだろうなと思い考えていた作戦をごぶ助に説明して、それが終わったところでオークの元へ向かい襲撃の準備をする。


「(よし、準備できたぞ。じゃあ始めるぞごぶ助、作戦通りにな!)」


「ごぶ、わかったごぶ」


 ごぶ助に声をかけて作戦を開始した。まずは通路の影に隠れながら俺が氷魔法を発動させ、オークの足を通路の床とくっつくように凍らせた。オークの足が凍って混乱しているうちにごぶ助が飛び出し、俺もそれに続く。


「ごぶ!正面から叩くごぶ!」


「(よし、俺は後ろ側に行く!)」


 俺たちはオークの前後に分かれてごぶ助は正面、俺は後ろに分かれて戦闘を開始する。まずはごぶ助が攻撃を仕掛け、俺は新しく覚えたスキルの『守護の壁』を使いごぶ助の補助に徹する。

 この『守護の壁』なんだが、練習が足りないのかまだ動きながら発動できないため、補助に徹するしかないのだ。しかし今はこれで十分。


「ごぶ!ごぶ!」


「プゴアアアァ!」


 ごぶ助はうまい感じにヒットアンドウェイを繰り返しオークの気を引く。オークはそれに気を取られて迎撃しようとするが、両足が凍っているためうまく動けずに徐々に傷が増えていく。

 俺はオークの気が完全にごぶ助に向くまで、オークを観察しながらごぶ助にスキルを展開し続ける。そしてオークの気が完璧に俺から逸れた気配を感じて、ごぶ助にかけていたスキルを解除して、オークに後ろから攻撃を仕掛ける。


「(おらおら!後ろががら空きだぜ!)」


「プゴァ!?プゴオオオ!」


 いきなり後ろから攻撃を仕掛けられたオークはすごく驚き、今度はゴブ助から気をそらして俺の方に対処しようとして、振り向こうとする。だが今だに足が凍っているため直ぐに動けなかった、その間にも俺はちまちまと攻撃を仕掛けてオークの気を引く。

 そうして攻撃を仕掛けていたが、ついにオークは力を込めて氷から脱出してしまう。オークは、許さん!とばかりに興奮して俺に攻撃しようとしてきた。


「プゴオオォォァァアアア!」


「(おいおい、いいのか?そんなに俺にかまちまって)」


「ごぶうううう!パワーアタックごぶ!」


 俺が『守護の壁』を発動させて、オークからの攻撃を防御する体制をとり、オークはそれに攻撃をしようとしていた。

 だがその後ろからノーマークとなったごぶ助がオークの頭上から『パワーアタック』を仕掛けた。しかもその『パワーアタック』のスキルは以前使っていた時よりもすごく感じた。ごぶ助カリバーが強く光り、更にその光は威圧感みたいなものを発していたのだ。


「プギャァ!」


 そんなスキルをもろに脳天にくらい、オークの頭は陥没する。目がグルンと白目をむいて倒れ、そのまま消えてしまった。


「ごぶ!勝ったごぶ!」


「(よっしゃあ!やったぜ!)」


 オークが消えて喜んでいると体が熱くなりレベルアップを感じさせた!それにさらに喜び、どれくらいステータス上がるのかなと確認しようとしたらごぶ助が大声を上げた。


「ごぶうう!大きなお肉ごぶうう!」


「(なにぃ!?)」


 ごぶ助の大きなお肉宣言に、ついステータスを確認しようとしていたのをやめてみてしまう。

 するとそこには、たしかに大きな肉の塊があった。しかもとても美味しそうなのだ。


「ごぶ!早く帰って食べるごぶ!」


「(合点承知の助!)」


 俺たちは他に落ちていたドロップアイテムをバッと拾い上げて走って帰る。気配察知が少し雑になってしまっていたが、この時は気にしていられなかった。

 進化してさらに燃費が悪くなったのか、はたまた最近微妙な節食だったからか、オークの肉がとても美味しそうに見えたからか、もしかしたら全部が合わさってだったのかもしれないが、お肉がとても食べたかったのだ。これではごぶ助の事を笑えない。

 二人で走ってセーフティーエリアに帰りつき、ごぶ助は肉以外のドロップアイテムをそこらへんにポイッと投げ捨てて、お肉に棒をぶっ刺した。


「ごぶ!焼くごぶ!」


「(まかせろ!ソイヤッ!ソイヤッ!ソイヤァァ!)」


 俺は持てる限りのイメージ力を駆使して肉を焼いた。そしてそれがうまくいったのか、お肉がいい感じに焼きあがる。


「「いただきまーす」ごぶ」


 こうして俺たちは本日2回目の肉パーティーを楽しんだ。


 -------------------------------------

 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白かった」「続きが読みたい」「焼肉はいいゾォ」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると、主人公たちの焼肉パーティーがはかどるかもしれないのでよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る