第15話 起死回生のワンチャン
そこはとても気持ちがいい場所だった。柔らかな日差しにふかふかのベッド、周りには蝶々がヒラヒラと舞い小鳥のさえずりが聞こえる。
日差しが強くなり眩しくなると美しいシルエットの人が日よけをかざして日を遮ってくれる。
そしてその人は俺の頬を撫で、キスでもしてくれるのか顔を近づけてくる。それに応えようと俺からも顔を近づけるとその人の顔がはっきりしてくる・・・ごぶ助だ。
「ばううううううううう!」
「ごぶっ!?」
ハッ!夢か、超焦ったわ。すまんすまん、ごぶ助や。だがあまり顔を近づけるな。
俺があまりの衝撃映像に叫びながら飛び起きたものだから、それに驚いてごぶ助も飛び起き、その後ごぶ助は俺の様子を伺う為に顔を近づけて来たのだ。
とりあえず夢の事は忘れよう、そうしよう。っとまぁこの場所気持ちがいいんだよな。ダンジョンの中だとは思えないわ。
そう、今現在いる場所はダンジョンの中。セーフティーエリアと言われる場所にいる。
このセーフティーエリアは居るだけならば最高の場所と言えよう。天井には柔らかな光が灯り、床は短い雑草が柔らかく生えそろい整えられた芝生みたいだ。さらには空気も循環されているのか澄んでいる。
しかしこの部屋を外へ出ると最悪である。ミノタウロスやオークといった強者が生息するダンジョンの10階層、そんなつらい環境である。
俺やごぶ助と言った一般わんちゃんや一般ゴブリンには地獄だ。・・・だが地獄に踏み込まなければならない。
「ごぶ・・・」 (グウゥ~)
「ばう、ばうわう」
(ごぶ助よ、腹が減ったか。)
そう、食べ物がないのである。水は魔法を使い何とか確保出来るのだが、食べるものは皆無。よって強制的に地獄へ踏み出さねばならない。
だが安心してくれ。俺のユニークスキルを使えば~あら不思議ッ!このようなピンチに陥ったりする。・・・やっぱり安心しないでくれ。
だが使わなければどっちにしろ終わる。ならば使うしかないのだ。ちらりとステータスを確認すると、ユニークスキルの使用が可能になっている。
「ばう、ばうばう、ばうわう!」
(ごぶ助、とりあえず水でも飲んでくれ。それから出発だ!)
「ごぶ、みずうまいごぶ!」
とりあえず水を飲んで腹の具合をごまかして出発する準備をする。そしていよいよ賭けを始める。
ユニークスキル『ワンチャン』発動っ!
・・・。
ってまぁわかりやすく発動はしないから出たとこ勝負なわけだが。
とりあえずオークのいた方の道に進んでみよう。またやばそうなら逃げて、明日に賭ける・・・。もって3日か4日くらいかなぁ?魔物の体って燃費悪いのよね。
「ばうばう」
(行こうかごぶ助)
「ごぶごぶ」
そうしてオークの出た方の道へ出発した。
基本は前回と同じく、警戒を強くして進んでいく。ユニークスキルを使ったので、更に何かが起こるかもしれないのでそれも頭に入れて進むことにする。
ソロリソロリと進んでいると、この先にある別れ道の一方から何かの気配がする。
ごぶ助にちょっと待ったと停止をかける。すると直ぐに分かってくれた。ごぶ助との相棒度が爆上がりしているのを感じてちょっぴり嬉しい。
それはひとまず置いておいて、一人で様子を見に行く。そして分かれ道の先で何かを発見した。ばれないように慎重に動きながら鑑定をかける。
名前:
種族:四つ葉ウサギ
年齢:-
レベル:7
str:7
vit:77
agi:77
dex:7
int:7
luk:777
スキル:逃げ足
ユニークスキル:脱兎
称号:幸運の四つ葉
そこにいたのは頭に四つ葉のクローバーを生やした、大きさが俺くらいのウサギだった。
称号付きの魔物だと!?いや今はそれは重要じゃないな。鑑定が効くしステータスもlukがすごいが、他は俺達でも太刀打ちできそうなステータスだ!スキルと称号も一応鑑定にかけてみるか。
『スキル:逃げ足
・逃げ足が早くなる。回避率に補正が掛かる(Lv1)
ユニークスキル:脱兎
・逃げる行動に補正が掛かる。回避率に補正が掛かる。
称号:幸運の四つ葉
・運がいい者。この称号持ちを4体倒すといいことがある。』
逃げ特化な感じか。逃げ道を潰せれば倒せそうだ。とりあえずごぶ助の所へ戻ろう。
どうにか倒せそうな敵なので、倒す算段を練りながらごぶ助のいる場所へ戻りごぶ助と合流した。ごぶ助にゆっくりとついてくるように伝え、さっきのウサギの所へ行く。
ちなみにだが、俺が四つ葉ウサギを倒すために建てた計画はシンプルだ。通路を氷魔法で塞いでしまうのだ。逃げ足が速くとも逃げる場所がなければ逃げれまい。
自分の天才的頭脳が怖いわーとか考えて、氷魔法のイメージを練っていると予定外の事が起きる。
「ごぶ!おにくごぶ!」
ご ぶ す け が と び だ し た 。
もしかしてこうなるかもと考えていたが、流石にちょっと慎重になってくれるだろう。そう思っていたのだが、お肉食べたいパワーが振りきれてたみたいだ。
「きゅ!?」
「ごぶごぶ!」
「ばう?ばうばう!」
(驚いて固まった?チャンスだ間に合え!)
ごぶ助が熊のごとく両手を上にあげて威嚇しながら飛び出したら、珍妙なゴブリンに驚いたのか四つ葉ウサギは一瞬固まった。
作戦失敗かと思っていたが、今がチャンスと思い魔法を練り上げた。
「ばうわう!」
(出ろ氷の壁!)
「きゅ!?きゅきゅ・・・!」
何とか間に合ったみたいだ。
四つ葉ウサギの向こう側と俺たちの後ろに、通路を塞ぐ形で氷魔法で壁を作り上げた。急ぎになってしまったので強度はイマイチないかもしれないが、逃げ特化の奴のステータスならおそらく大丈夫であろう。
その証明とでもいうか、逃げ道を塞がれた奴はこちらを威嚇し始めた。
「ごぶ、いくごぶ」
「ばう、ばうばう」
(おう、俺は側面から行く)
威嚇し始めた四つ葉ウサギにごぶ助が正面から迫る。そして俺はサポートできるように側面へ回り込んだ。
まずはごぶ助が棒で攻撃を仕掛けるが、ウサギはサッとその攻撃を避ける。その隙をついて俺も攻撃を仕掛けるがそれも避けられた。
しかもウサギは避けるついでに後ろ足で蹴りをしてきた。俺はウサギの蹴りを受けてしまうが、やはり攻撃力自体は大したことがなくあまり痛くなかった。
それから二人で数回攻撃を仕掛けるがよけられまくる。
「ごぶ、あたらないごぶ」
「ばう、ばうわう!」
(早いな、そうだこれなら!)
素早いウサギに攻撃が当たらなかったが一つ案が思いついた。そしてそれを実行すべくタイミングを見計らう。
「ごぶ、ごぶごぶ」
「ばう!ばうばう!」
(今だ!床よ凍れ!)
「きゅ!?」
ごぶ助が攻撃を仕掛け、ウサギが攻撃をよけようとしたその瞬間に床を凍らせた。
するとウサギは逃げようとしたのだが、足が滑り転んでしまう。
そこにごぶ助の攻撃が襲い掛かった。ウサギはごぶ助の攻撃が当りふらついた。今なら当たる!と思い、ごぶ助の攻撃に続いて俺も攻撃を仕掛けると、さらにウサギの動きは悪くなり明らかに動きが鈍った。
その後はふらふらになったウサギに、二人で挟み込むようにして攻撃を加えて無事倒すことができた。
「きゅぅ~・・・」
「やったごぶ!おにくごぶうう!」
「ばうばう!」
(いえええい!)
俺とごぶ助は四つ葉ウサギを無事倒した。するとウサギが消えて、後には大き目の肉と魔石、後は葉っぱが一つだけのクローバー?が残った。肉が手に入ったことに二人で喜び叫ぶ!
その叫び声がうるさかったのか、それとも戦闘音がよく響いていたのか、はたまたその両方だったのかはわからないが、奥の通路からドスドスと何かが来る音がした。
「ばう!?ばうばう!」
(なにかくる!?逃げるぞごぶ助!)
「ごぶ?ご・・・ごぶ!」
やばいと思ってごぶ助に逃げようと促す。ごぶ助も解ったのか頷き、戦利品を回収して逃げる準備をする。
その時にごぶ助がクローバーを拾おうと触れると、クローバーは光の球になって俺とごぶ助に飛んできて体に吸収された。
1階層のボスを倒した時みたいになった?いや、今はまず逃げることが優先だ!とりあえず時間稼ぎに氷の壁を強化しておこう。
足音が聞こえる方の通路にある氷の壁を強化するイメージで氷魔法を使い、逆の方の氷の壁は消去するイメージで消した。
「ばう!ばうばう!」
(乗れごぶ助!それのが速い!)
「ごぶ!」
戦利品をもったごぶ助に背中に乗るように促す。今だと十分に力もあるし速さもある、なのでごぶ助に戦利品を持ってもらい、そのごぶ助を俺が乗せて走れば早く逃げれるはずである。
俺はごぶ助を乗せてセーフティーエリアに向けて走り出した。少し走ったところで氷の壁が砕け散る音がしたが、あまりセーフティーエリアから離れてなかったのでそのままセーフティーエリアに逃げ込めた。
セーフティーエリアに戻ることができた俺たちは安堵の息を吐き出して倒れこんだ。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
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☆や♡をもらえると、より一層励みになるのでよろしくお願いします。
お詫び:誤字や言い回しを修正 2022・1・10
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