第14話 何とか一息のわんちゃん
俺は柔らかい光と優しい空気の中で目が覚める。
ボーっとしつつも、薄っすら気を失う前の事を思い出した。俺達はなんとか危機を脱した、そんな気がして安心したところであのセリフを呟いてみたくなった。転生者が一度は言ってみたいセリフのナンバーワンだ。異論は認める。
「ばうわう・・・」
(知らない天井だ・・・)
残念ながら犬語であったが言ってやった。定番セリフの効果か、頭がすっきりしてきた。これも異論は認める。
頭が覚醒してきたので立ち上がり、改めて周囲を確認してみる。
一番の問題だったミノタウロスはあきらめたのかいなくなっていた。そしてすぐ横にはごぶ助がまだ寝ていた。
「ごぶ・・・もうたべられないごぶ・・・」
ハハハ!コヤツメ!伝説のセリフを言うとはさすがだわ!・・・まぁこんなことが言えるならもう大丈夫だろう。
呆れと安堵でホッと息を吐く。本当に死ぬんじゃないかと思っていたからだ。ポーション様様である。
とりあえずごぶ助も大丈夫だと分かったので、この不思議な部屋の確認をするために俺は色々調べてみる事にした。
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部屋の中を調べて解った事は少ないが、一つ一つ確認していこうと思う。
1つ、部屋の広さは結構広い。大体だが小・中学校の体育館くらいはありそう。
2つ、出入りする道は2つ。片方は俺たちがミノタウロスに追いかけられてきた方で、それとは別にもう1つだけ道があった。
3つ、この部屋の所在。ある物により判明。
この3つが解った事なんだが、特に最後の3つ目が大問題だ。
・・・どうもここはダンジョン10階層らしい。それが何故解ったかというと・・・部屋の中心の天井部にある物のおかげだ。
俺はとりあえず調べないといけない事として、この部屋は何なのか、また引っかかってしまった罠で何が起こったのか、これを調べる事にした。
そしてそれを調べる為に、とりあえず片っ端から鑑定をかけていた。大体は何てことない光苔やただの雑草だったのだが、部屋の中心当たりの天井付近で鑑定に妙なものが引っかかった。
『迷宮施設:セーフティーエリア生成球
・名もなき迷宮10階層に設置されたセーフティーエリアを作るための球。外すと生成球、セーフティーエリア共に消滅する。』
これにより、現在地がダンジョンの10階層である。そして引っかかった罠はおそらく転移罠という事が判明したのだ。
そしてその判明したことにより絶望した俺は・・・不貞寝した。
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ハッ!しまった!あまりの最悪すぎる事態に、頭の中がもうどうにでもなれーって具合になって、不貞腐れて寝てしまった!せっかく生き残れたんだ、あきらめるのはまだ早い!
俺のワンチャンライフはこれからだッ!
ってうっさいわー!やばい、一回寝たのにまだ冷静に戻れていない、オチツケーオレー、Be cool,Be cool.よ・・・よし、落ち着いたぞ。・・・タブン。
落ち着いた?ところで、そういえばごぶ助は?とごぶ助の様子を見てみるとまだ寝ていた。
よかった、ごぶ助一人にすると何をするかわからんからな。下手をするとミノタウロスに再突撃をかますかもしれん。お肉の恨みーとか言ってな。そういえばご飯どうしよう・・・。ミノタウロスに襲われた時にすべて失ってしまったんだよな。あぁぁ・・・ご飯どうしよう・・・。
ご飯をどうしようかと考えていたらごぶ助が起きてきた。
「ごぶ、おはようごぶ。おにくどこごぶ?」
あんな事があったのに相変わらず緩いな!大丈夫かごぶ助よ・・・。だがしかし、今はこの緩さは俺の心にとっては救いだわ。なんか大丈夫って気がしてくる。
ごぶ助に元気をもらったところで、これからどうするか。と言ってもミノタウロスと出会った通路じゃない方を覗いてみるしかないか。
「ばう、ばうばう」
(ごぶ助、とりあえずこっちを見てみよう)
「ごぶ?ごぶごぶ」
こっちに行こうと誘ってみると、解ったと頷いてくれたので、俺達は通路をソロリソロリと警戒しながら進み出した。
さぁて鬼が出るか蛇が出るか!・・・マジで鬼とかはやめてくれよ?絶対死ぬ!
警戒を強めて進んでいたので、通路の曲がり角の先に何かがいるのに気が付いた。とりあえずごぶ助にここで待っていてくれと何とか伝え、俺単独で覗いてみる。
そこには鬼でも蛇でもなく、豚がいた。俺はとりあえずステータスチェックをしてみた。
名前:
種族:オーク
年齢:-
レベル:??
str:???
vit:???
agi:???
dex:???
int:???
luk:???
スキル:??? ???
ユニークスキル:
称号:
駄目だ、鬼じゃなくて豚だがステータスが見えない。という事は俺よりも大分強い。
さすがにミノタウロスみたいなやばさは感じないが、それでも俺達の手に負えそうもない。ごぶ助を連れて取りあえずセーフティーエリアへ引き返そう。
一応だがこのやばそうな10階層でもやれそうな案が1つある。しかし今は実行不可能なので、オークに気付かれないようにごぶ助の元まで戻り、なんとか気づかれないままごぶ助とセーフティーエリアまで戻ってきた。
「ごぶ?もどってきたごぶ」
「ばうばう、ばうわう」
(まぁまぁごぶ助さんや、落ち着きなさい)
出て行ってすぐに同じ場所に戻ってきたのでごぶ助が不思議がっていたが、なんとか宥めて押しとどめる。俺の考え付いた案は時間がまだいるからだ。
その考え付いた案とは・・・ユニークスキルだ。今はグレーアウトしていて使えなくなっているけど、多分もう少しすればユニークスキルの使用が可能になる気がするのだ。
実は鑑定が2レベルになった時に新機能なのか、使えない時はそうなるみたいになった。
どうせなら使用まで残り○分とか解りやすくしてほしかったのだが、もしかしたらワンチャン鑑定のレベルが上がったら変わってくれるかもだ。期待しよう。
しかしこんな事態になった原因っぽいユニークスキル、このスキルを頼るっていうのもどうかと思うんだが、でも頼るしかないというのも現状なのだ。
そういう事なので、今はスキルが使用可能になるまで待つしかなかった。
俺は苦肉の策として、魔法で水を作り出しそれをごぶ助と腹がいっぱいになるまで飲み、空腹を誤魔化し寝ることにした。
さっきまで二人して気を失っていたので寝れるかわからなかったが、ごぶ助は直ぐに眠りだし、俺もすぐに眠ってしまった。
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≪???≫
それはそれが設置されている深き場所の部屋にてそれが管理する場所の状態を刻々と映し出していた。それは管理する場所の情報を集積、管理しているのだが、情報の更新や状態の変化がある事は少ないみたいだった。だが侵入者が現れた頃から、それも少々事情が変わっていた。
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エラー発生 隠蔽状態の迷宮に侵入者あり
侵入者の1階層にて戦闘行為を確認
現状問題なしとして経過観察
侵入者の1階層ボス撃破を確認
対象に1階層ボス討伐証による権限の付与確認
侵入者の警戒度を1段階引き上げ
現状問題極小として経過観察
侵入者が転移トラップにより転移開始
エラー発生 転移領域未設定により10階層へ転移
10階層の設定は未設定の為に状態不安定
侵入者の警戒度を最大値に引き上げ
対処の為にコアによる決定を要求
エラー発生 迷宮完全実装前の為にコアの生成状態が未成熟
侵入者の対処の実行不可
侵入者の経過観察の続行開始
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それは静かに延々と、自分が管理する場所の情報、状態を映し出していた。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白かった」「続きが読みたい」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると、より一層励みになるのでよろしくお願いします。
お詫び:誤字修正 2021/12/29
言い回し、行間修正 2022・1・10
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