第8話 「髙山の怒り」

 〜〜〜酔が更に回る23時頃〜〜〜〜


 「実は、僕ね……困った事が、夕方にあってさあ……。」


「どうしたの?木村君」

 心配して和田さんが優しく言う。


「いや、実はね……5年生の子に手紙をもらったんだ。」


「えっ?ラブレターじゃないの?!」


「いやあ……なんなんだか。」


「なんて書いてあるの?」

 すかさず木田君が聞いた。


「20時にホテル前の左側にある大きな木の下に来てください。待ってます。」

 伊藤舞って書いてある。


 その時、手紙を読むやいなや、わなわなと、髙山君が震えているのがわかった。僕は、なんか、これはやばいなって瞬時に感じた。髙山は怒ると怖い。


 「木村くんさ、当然に行ったんだよね?」

 語気強く言う。

 「ごめん。行かなかった。」


 「なんでよ?」


 「…いやだって。」


 「なんで?」


 「いや〜。」


 「理由は?」


 「……恥ずかしかったから。」


 「木村君な、子供の純粋な気持ちを踏みにじるような事をしては絶対にいけないんだ。」


 「確かに…僕が悪い。早く髙山君達に相談したら良かった。」

 僕はため息をついた。


 「イタズラかもしれないよ。でもね、真面目な恋心かもしれない。大人はしっかり答える責任がある。」


 「もう23時だからなあ。」


 「全く木村君には、呆れるよ。俺なんか全くもてないが、木村君は好かれるんだよ。」


 「ああ。そうなんかな。5年生だけど。」


 「僕もね、しっかり返事したほうがいいと思うよ。」

 玉川くんも諭すように言った。


 冒頭で、髙山のネガティブなイメージが浮き彫りになっていたが、逆にここで、僕は髙山に教えられた。やはり髙山は、教職課程も共に取っていたし、こういった子どもの繊細な気持ちに何故か敏感だし、しっかりと教育的視点を持った人だった。頭が上がらなかった。

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