混乱する邪馬台国
「姉上、何をしているのですか。走ってください」
処刑場の外で、スジナオが待ち構えておった。スジナオは勘の鋭い男であって、我がどこに行っていたのかすぐに気づいたらしい。我らはひたすら走って、城の外へと出た。狗奴国の刺客が、邪馬台国の城内で暴れており、中はとても危険であった。いや、それほど見張りは手薄であったのであろう。
刺客は、しばらく暴れまわったところで、我が国の者に取り押さえられたらしい。しかし、ムサラカが倒されたことによって、邪馬台国は更なる混乱に
王が次々と変わることによって、国内はひどく荒れていたが、王が変わるたびに他国へ戦を仕向けるため、邪馬台国の存在感は少しずつ増していったらしい。一時期は多くの国から見放されていたのであったが、邪馬台国は狗奴国や伊都国と並ぶ一つの有力な国という位置づけになってきておった。
一方で、我らの暮らしは処刑場の時よりは平和になっていた。父上や母上の
我は、ミチカナの言葉を忘れてはいなかった。特に、最後に聞いた
「スジナオよ、今度海の近くに行ってみぬか」
我は思い切って、スジナオに提案してみた。海の方に行けば、何か魏を始め、我らの知らぬことを学べるのではないかと思ったからである。
「無茶をしないのであれば、我もお供します」
スジナオは、思いのほか、あっさりと我の提案に賛成した。
海の近くに行くといったものの、我らはどちらに海があるのかをしっかりと把握しているわけではなかった。我らは十日ほど、邪馬台国の周りを彷徨っていた。そして、遂に海が見えてきたのであった。
「これが、海であるか」
我は思いっきり息を吸った。これまでに経験したことのない匂いが鼻いっぱいに広がってきた。
「綺麗ですね、姉上」
いつもは慎重なスジナオも、珍しくはしゃいでおり、その姿は幼き頃のスジナオを思い出させてくれた。
「むむ、あそこに倒れている者がいるではないか」
程なくして、海岸に倒れている者がいるのに気が付いた。全く見たことのない服装をしていたため、我らは少し警戒した。
「スジナオよ、我らはあの者を助けるべきか」
「助けたいのはわかりますけど、危険ではないですか」
我らはしばらく議論を続けたが、やはり倒れている者の命を救いたいという気持ちになり、助けることにしたのであった。
「もしもし、意識はありますか」
倒れている者は呼吸をしていたが、気を失っているようであった。全身海の水で濡れていたため、我らは布で体を拭き、火を起こして体を温めた。
「ウォーシュー・・・?」
しばらくして、倒れていた者は意識を取り戻したが、何やら聞いたことのない言葉を発したのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます