第3話 テオルの国①(テオドラール城とマルコ)
ワープした先は見晴らしの良い丘だった。
ハルキ達の視界には丘の下にある城下町、その奥には大きな城がそびえ立っていた。
「きれい。」
ナオが思わず口にした。ハルキもリョウも口には出さないでいたが、日本では決して見ることの出来ない景色に心を奪われていた。
リョウは、この先何が起きるのか分からない事への期待と不安から胸が踊る思いだった。そしてそれとは別に何故かは分からないけれども、気持ちが落ち着くような安心感を感じていた。
「ようこそテオルの国へ。」
少しだけ表情の柔らかくなったリドが言った。
リドはリドで無事に役割を果たし、故郷に戻れていた事に安堵していたのだった。
「マルコは?」
リョウがマルコがいない事に気づいて言った。
「マルコならあの城の中で待ってる。
道中はマルコの話から始めようか。」
リドがそう言うと、間もなく迎えと思われる馬車が来た。
彼らは天開きの大きめな箱に揺られながら丘を後にした。
「中世の世界みたい。」
ナオが呟いた。
「でもここは、、、別の世界だね。」
ハルキが周りを見ながら答えた。
城下町では僕達人間と同じ様な人もいれば、角が生えていたり、シッポが生えていたりと地球人とは言い難い人達も多くいた。
「その通り。君たちの世界とは違う。」
リドは続けて説明を始めた。
「ここは君たちの住む世界とは別の世界なんだ。そして、、、他にも色んな別の世界がある。まあ、君たちの世界をA世界と言うなら、ここはB世界。ほかにもCとかDとか、、とにかく無数の世界はあるんだよ。」
「異世界、、、。」
ハルキが呟き、リドは頷いて続けた。
「君たちの世界は地球の国だね。ここはテオルの国と言うんだ。
君たちの国とテオルの国を行き来するには色々と厄介でね。
今回オレが来れたのはマルコの力のおかげなのさ。」
「マルコが、、?」
「そう。君たちの世界に来るためにマルコは妖精になる必要があった。ただ、妖精の姿ではマルコにできる事は限られてしまう。例えばカーズ、、、妖精の状態で君たちを悪意から守るのは厳しい。」
ハルキはゴクリと唾を飲んだ。
「だから、この【光の腕輪】という妖精の魔力を持った腕輪を付けて、マルコにぶら下がる形で俺も来たのさ。あぁ、ここら辺の話は今は省くか。」
「つまり、マルコの本当の姿は人間と同じだ。まぁ、少しだけ違うとしたら目の色が時折変色する事くらいかな?
なんにせよ、マルコ本体は城の中で君たちを待ってる。」
「あの光の物体はマルコ本体ではないの?」
リョウが質問した。
リドはまたも頷いて答えた。
「俺は説明が下手だからなぁ。君たちの世界で言う、幽体離脱みたいな物だと考えてくれ。」
頭を掻きながらリドは表現を探りながら、マルコについて続けて言った。
「まぁ、ぶっちゃけて言うとマルコはまだ未成熟だから、まだ色々と早いんだ。
今回は予想外の事態だった事もあって、我々もマルコも準備もそこまでできていなかった。
苦肉の策だったんだが、、、まあ結果オーライだな。」
(?)
「リドさん、それはどういう、、
ゴゴゴゴゴゴ、、、、
ナオの質問を制するように、大きな歯車で重たい物が動く音がした。
見上げると既に城の門に着いていた。
「もう着くぞ。ここがテオドラール城だ。
君たちの世界、、地球も色んな国があるだろう。
こっちの世界も同じさ。
まあ、こちらは大国は4つだけだけどな。」
(つまり、、ここは地球の様な惑星という事なのだろうか?
別の世界=他の星?
それならなぜ言葉が通じるの?)
ハルキは真上にしまわれていく大きな門を見上げながら考えていた。
考えれば考えるほど新たな疑問がわいて出てくる。
「降りよう。ここからは城内を歩く。
、、、色々分からない事だらけだろうが、少しづつ知っていけばいい。」
リドはハルキやナオが戸惑っている事に気づいて声をかけた。
「リド!」
城内からリドを呼ぶ声が聞こえた。リドだけでなく、皆が振り向いた。
「ジン。」
リドは声の主の名前を呼んだ。それに答えるようにジンは力強い微笑みで答えた。
「無事で何よりだよ。本当に、、。
この子達が?」
ジンはそう言うと、馬車から降りてリドの後ろに並んでいるハルキとリョウとナオを1人づつ見た。
「はじめまして。テオドラール騎士団で特務士団所属のサワズ・ジンです。
テオドラール城にようこそ。」
そう言うとジンは背筋を伸ばして腕を上げ、拳を作り、手の甲が自身の額につく様なポーズをとった。
説明は無くともテオドラール国で言うところの「敬礼」なのだろうと、3人は理解した。
「僕は土方リョウです!」
「、、溝江ナオです。よろしくお願いいたします。」
「沢ハルキです。よろしくお願いします、、。」
「あ、、そういえば君たちに自己紹介してなかったな。
まあ、今更だからいいか。」
リドは顔をしかめて言った。
リドは親指でリョウを指して続けて言った。
「ジン、封印を解いたのは、こっちのリョウという子だ。
ほかの2人は、まあ巻き込まれたようなもんだ。
先に伝えておくと、3人とも【差長原半兵衛の日記】の事を理解してない。
カーズの手下に襲われて呪いも解放された。」
「!、、、そうか。リド、後でまた詳しく教えてくれ。
取り急ぎで俺はサミネに行く。」
「サミネか、、、やはりおかしいな。、、、気をつけろよ。」
ジンはまた力強く微笑み、「ありがとう。」と返した。
「キミたち、この後、王子様とマルコから話を聞いて不安や恐怖が出てくるだろうけど、俺たちが絶対に守り抜くから安心してくれ。」
そう言うとジンはさっそうと出口へと向かった。
「リドさんはも騎士団の人なの?」
ジンの後ろ姿を目で追いながらリョウはリドに尋ねた。
「俺もジンと同じだよ。特務師団に所属してるんだ。特務士団、正式名称は特別任務騎士団。テオドラールの精鋭のさらに精鋭で構成されている部隊で、厳しい任務に着く。
キミたちを迎えに来たのも任務のひとつさ。」
リドに案内されて3人は城内を進んだ。途中3人は代わるがわる質問をリドにあびせたが、「今に分かるよ。」と短くいい、答えてはくれなかった。
その様子から、ハルキにはリドがなにか考え事をしていて、質問が耳に入っていないように思えた。
城内では甲冑を来ている人、ローブを纏っている人、正装の様な気品溢れる服装の人と様々いたが、ハルキ達に気づくと、一様にテオドラール式の敬礼をしてくれていた。
コレは単に、リドがくらいが高いからとか、そういう決まりだからだけでは無いと3人は悟った。
3人の事を伺うように見ている。そう感じたのだった。
やがて大きな扉の前まで来た。
リドは立ち止まり、
「この扉の先にテオドラールの王子様、参謀長殿、政務大臣、特務士団長、、、そしてマルコが待ってる。」
と、3人に告げた。
3人は既に出来ている覚悟をより深くした。
その覚悟が深まるのを感じて、リドは扉を開けた。
部屋はとても大きく豪華な装飾を施され、騎士と思われる人達が各定位置に直立で立っていた。
部屋の奥には大きなテーブルがあり、そのテーブルを挟んで5名が並列に座って待ち構えていた。
3人は5名を目視して直ぐにマルコがどの人なのか分かった。
むかって1番左以外は皆男性に対して、1人だけ女の子だったからだ。
女の子はとても若く見え、年齢にしたらリョウと変わらない様だった。
ただ、白銀のような色の長い髪と目、幼い顔、華奢な腕にも関わらず、5人の中で1番オーラの様な物を感じた。
不意にリョウとマルコは目が合った。
マルコは天使もしくは綺麗な精霊をほうふつとさせるような、微笑みをリョウに送った。
リョウはまるで吸い寄せられるような不思議気持ちになった。
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