第12話 ベ、別にアンタのことなんか!
「ユキってやつはどこ!」
ユキが出歩く事が多くなってから数週間、ツンと切り裂くような高い声の女性の声がユキの家の周りで響いた。
「はいはーいどうしましたー?あれ、あなたは…?」
「あんた、ユキってやつ知らない?いたら私に会わせてほしいんだけど。」
「ええ…いきなりですか…とゆーかあなた、シャオさんですよね?七の集落の。」
「あら、よく知ってるわね、レイ。一の集落筆頭候補のお一人さん。」
互いに不敵に微笑み合う。強者の情報なんて依頼を受けていれば自ずと入ってくる。
美少女にしか興味を持たない奴を除いて。
「こちらこそ知っててくれて嬉しいな、けどゴメンね。レイ君は今日依頼に出ちゃってるんだぜよ。」
「ふーん…そう。じゃあ伝えといてくれる?明日、手合わせしましょうと。そうね、正午に六の集落の演習場で。」
言いたいことだけ言うと、彼女は踵を翻した。
「ってなことがあったんだぜユキ君!」
「これってさ、果たし状って奴だよね?俺に向けて?」
「まぁ、そうなるんじゃないか。彼女、僕でも聞いた事あるくらい戦闘狂らしいし。」
「シュウ君が知ってるくらいだもんねぇ。私も、依頼でいっつも余計に殺しすぎって言われている子がいるーって話で知ったもん。」
「ひええ、なんで俺はそんな子に目をつけられたんだ…。これってバックレちゃだめ?」
「でも旦那、美少女だったですぜ?」
「なんと!仕方ない!英雄たるものが戦いから逃げてはならない!決して他に理由はない!」
「まず事実上旦那だしな…というかレイ、僕がいうのもなんだが、コイツはこれでいいのか?」
「これが良い所なんだよう。えへへ」
「はぁ、まぁお前たち二人は幸せになってくれ。いらない心配だと思うが。」
「「おおお!ツンデレ様がデレたぞ!」」
「お前達…」
というわけで翌日。一人で六の演習場に来てみた。
「ようやくお出まし?待たせるなんていい度胸ね。」
釣り目の少女がこちらを睨みつける。
めちゃくちゃ可愛い!!
二つ結びの薄い青髪がキツ目の顔立ちに残るあどけなさを引き立て、否応なしに美少女と主張してくる。
「ごめんごめん!可愛い子が待ってるって聞いてたから、おめかししちゃってた!」
「あらそう、ならデートしてくれるって事ね?あなたの力をもってして。」
「そのつもりで来たさ…」
「楽しみね…なら勝った方はお互いの人生でも賭けてみる?下僕として。」
「いいね…君がお嫁さんなら楽しそうだよ。」
お互い初動の気配を探る時間の中、天禄を発動させる。
姿勢を徐々に落としていく。
相手がどんな天禄かも分からない以上、一撃必殺を先手で決めるしかない。
体の半分を徐々に透過させていく。少しでも相手の視線を動かす。
「…?体が見えづらくなってる…?」
シャオと聞いている少女の視線が右に逸れたその刹那、相手の左側の死角に飛び込む。
「はあっ!」
完璧な蹴り出し。間違いなく決まった。
「ッ!そこっ!」
キィン!とクナイが彼女の持つ長剣に防がれる。
「?!」
「あらぁ?どうしたの?もしかして今ので終わると思ってたのかしら?」
悪戯っ子のような笑みをこちらに向けてくる。
「まさか…こんな短いデートがある訳ないだろ?」
もう一度。今度は全身に透過をかけて、複数回のフェイントを入れる!
キィン!無常にも同じ音に遮られる。
「残念ね…私、目がとってもよくて見えちゃうのよ。」
「これは親切にどうも…!でもいいの?そんな簡単に種を明かしちゃって。」
「私も貴方の力はある程度知っていたしね、これで平等でしょ?」
彼女の言葉を信じるのであれば、現状俺の絶影の速さや透過も彼女には鮮明に見えていると言う事。
そして『依頼』を受けている実力者なら、間違いなくそれ以上の能力が備わっているはず。
さて、どうしたものか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます