第10話 強さを持つこと

そんなこんなで一呼吸着いた後、サナちゃんと行動を始めた。




手を繋ぎながらも足音を殺し、獲物の足跡をたどる。




ただこうして思うのは、このサナちゃんという子、とんでもなく強いかもしれない。




クマに襲われたのは何だったのかというくらい気配を殺すのは上手だし、鍛え上げている基礎というものを感じる。




この子のお姉ちゃんが梁山泊確実というのも頷ける。




「あ、見えた?」




「は、はい。あのイノシシ?ですよね?夜ご飯で見たことがあります。」




え?丸焼き?




「そ、そうそれ!あいつは気配に敏感だから、隠密に徹底してみよう。水場で生き物の狩りをあいつがしている瞬間を狙うんだ。」




「は、はい!」




待つこと一時間。ここまで気配を徹底して殺せる彼女はやはり強いな、なんて思ってたら、猪がついに近場のぬた場へ動いた。




「殺す、という意識を一度外してみて。動けなくするために、あいつの首の付け根を刺す、という意識で。」




「は、はい!」




潜めた声のまま俺は促す。




「大丈夫、どんなことがあっても俺が君の側についてる。今まで頑張ってきたことをそのままやるだけだよ。」




すると、強く握られていた俺の手が軽くなった。彼女の目つきが徐々に座っていき、懐からナイフを取り出した。覚悟をした目だ。




イノシシがまさにカエルを狩ろうとするその瞬間、徐々に近づいていた俺たちは猪めがけて一直線に走りこんだ。




「ふっ!」




あまりに小さな掛け声とともに、彼女のナイフは猪の首元から頭にかけて、しっかりと突き刺さっていた。




「や、やった!やりましたユキさん!」




彼女が嬉しそうにこちらを振り返る!




「まだだめだ!」




俺の掛け声が届く前に、最後の抵抗で体を振り回した猪の頭が彼女を突き飛ばした。




もう体は天禄を使っていた。瞬時に彼女のもとまで移動する。




「きゃあ!あ、あれ…」




「ふう、最後まで油断しちゃだめだぞー?」




「あ、あれ、ユキさんいつの間に…?あぁ!すいませんすいませんありがとうございます!」




「どっちなのそれ」




俺は笑いながら抱き留めていた彼女をの姿勢を直した。




「全然だめじゃなかったじゃない、君は立派な強い女の子だったよ!」




「ユ、ユキさん…ひっく、うわぁぁぁぁぁん」




「あらら」




また泣いてしまった彼女が泣き止むまで待って、麓の家近くまで送り届けた。






「あの、本当にありがとうございました。でも、お礼も出来なくて、本当に申し訳ないです…。あの、やっぱり私のお家でご飯だけでも食べていきませんか?」




「いいっていいって!今日はご飯の予定があってさ!それに、お礼が欲しくて助けた訳じゃないですとも!」




「でも…わたし、本当にうれしかったです。わたし、ようやく一歩踏み出せた気がします。お姉ちゃんの陰に隠れてないで、自分でも頑張ってみようって思えました。」




「それはサナちゃんが頑張ってきたからだよ。その努力が君を強くしてただけさ。」




「レイさん…。あの!ユキさんも梁山泊を目指すんですか?」




「うん、そのつもり!」




「そっか…決めました!わたしも梁山泊を目指してみようと思います!」




「おお!それはいいね!一緒に頑張ろう!」




「あ、あの、それでなんですけど、もしわたしが梁山泊になれたら、お願い事をしてもいいですか…?」




「もちろん!いつでも聞いちゃうぞ!」




「ふふ、楽しみにしてます…。あの、よかったらまた来てください。わたしの家族と一緒に歓迎します。」




「ぜひぜひ!じゃあ、またね!」




最後まで見送り続けてくれる美少女の視線を背に、帰路へと着いた。




あぁー!可愛かった!あれ絶対数年後モテモテになる!

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