第8話 思い想われ
そわそわが止まらなくなってから何時間たっただろうか。ようやく彼女に会えた。
「あははー…こんばんは」
「こんばんはレイ!ささっと部屋まで行こう!」
ささっとレイを迎え上げる。いつも元気な彼女がしおらしく照れている姿を堪能したい衝動にかられながらも、俺は先を促す。
「うええ?!そんなに早く?!」
動揺する彼女の手を引きながら、そそくさと移動しようとするも。
「あら~いっらしゃいレイちゃん。ふふふ。」
「お~う!いらっしゃいレイちゃん。ふふふ。」
家の構造上不可避な位置にたたずむ両親の生温かい視線も一緒に彼女を出迎えた。
「いやーレイちゃんが家に嫁入りしてくれるなんてなぁ!レイも幸せもんだなぁ!」
「うふふ、こーんなに可愛い子ですものね。ご飯はいかが?」
「あ、お家で食べてきました。」
くうぅ、レイが我が両親に独占されてしまった!これを避けたかったのに!
「それで、聞いたよ。ユキがハーレムなんてものを作ろうとしてると。そしてレイちゃんもそのうちの一人だと、家としても梁山泊としても強ければ問題にもならないことだけど、昔からよくしてもらってるおうちのレイちゃんだからね、いいのかい?うちのユキで。」
そう、父さんたちには話してある。本当に強くなりたい理由は可愛い子みんな嫁にしたいでからです!と。
手前味噌ながら『良い子』として過ごしてきた自分がこんなことを言うとショックなのでは?と緊張したものだが、驚くほどにアッサリとお許しが出た。
両親曰く『英雄色を好む』
ならあなたは梁山泊で『英雄』と認められるほど強くなりなさい、とのこと。
「はい、そんなユキ君のそばにずっといれたらって思ってます。」
「はっはっは!これは俺達がいたら野暮ってもんだな!これはお開きの時間だな!二人ともお休み!夜更かしはちょっとだけまでだぞ!」
「ふふ、二人ともお休みなさい。」
そういって両親たちは寝室へ向かってしまった。言いたい放題聞きたい放題だったぞ…
「えーと、どうしよっか?」
いきなり手持無沙汰でなんとも情けない質問をしてしまう。
「うんと、とりあえず側にいたいです。」
「じゃあ、とりあえず一緒に寝よっか!」
「うええ!いきなりですな!」
さっきまで凛としてた彼女がいつもの調子に戻る。
ともあれ。ベットには二人で入りました。二人で横になって向き合う。
「なんだか、不思議な感じがする。」
「どうして?」
「いつもよりユキ君と近くにいて、なんだか緊張しちゃうけど、それよりももっと落ち着く気持ちの方が強いみたいな感じがするんだよ。」
「あーなんか分かるかも。」
何よりも彼女で満たされるような感覚。
「それでさ、今日の事なんだけど、改めて話したくて。まずは、中途半端な形でごめんね。」
「謝らなくていいのに、私はユキ君の気持ちを伝えてもらったし、私はそれに応えた。これ以上幸せなことなんてないよ?だから、それより先の続きが聞きたいな。」
敵わないなぁ、この子には。
「そっか、うん。僕はあなたが好きです。」
「えへへ。幸せ。私も好きです。大好き!」
彼女がよりそばに寄ってくる。体温の伝わる距離。どんどん女性らしくなる彼女が伝わってくる。
そんな彼女の頬を撫でで伝えた。
「これからもよろしくね。」
「よろしくされちゃいます。」
生まれて初めて女性とキスをした。
朝、目が覚めた。む?なんだか視線を向けられる気配!
「おはよ。意外と早起きさんですな。」
両手に頬杖で顔を見つめる美少女がそこにいた。
「おはよ、レイは朝から美少女さんですな。」
「よせやい、照れちゃうよ。」
口をすぼませ変な顔で照れ隠しをする彼女の癖。うーん可愛いなぁ。
「ま!何はともあれこれからもよろしくって事ですユキ君!梁山泊目指して!」
「うん!まずは梁山泊を目指そう!」
新たな日々が始まる。
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