第7話 彼女の思い

私は、ユキ君が好き。




初めて会った時は、とにかく美しい顔立ちの子だと思った。




とにかく整っていて、何を考えているのか分からないように見えるくらい。




もっと話してみるところころ表情の変わる素直な子だった。




よく笑うし、何より彼との会話は心地がいい。生まれた時から一緒なんじゃないかというくらい落ち着く。




シュウ君を連れてきて、一緒に勉強するようになってから、ユキ君はどんどん男の子になっていった。




やっぱり男の子の友達は男の子を育てるんだな、なんて子供ながらに考えてしまうほど。




それでも彼といる時間は楽しかったし、幸せだと思うほど。




何よりユキ君は私に「好き」を尽くしてくれる。直接言葉で聞かなくても、いつでも、どんな些細な変化でも可愛いと褒めてくれることは何よりも嬉しい。




私は、それに応えたいと自然と思った。出来ることなら何でもしたいし、彼の考えを肯定したい。




私の住む梁山泊というちっちゃな世界の中だけでも、ずっと味方でいよう、なんて思った。




これは感情じゃなくて、もはや生き方。




たかだか数年で子供の自分が運命づけたこと。




だからこそ、彼のハーレムを応援しようと思ったし、自分が一番になんてならなくていいと思っていた。




でも、カンナさんにとられちゃう!なんて悪い自分が顔を出した。




安い覚悟だった自分が何様である、という話。




それでも、望んでしまった。




「あああ…!言ってしまった…!」




思い出すだけで顔が熱くなる。自分から泊まりたいなんて!




でも沸騰した頭はそれを抑えることはできなかった。




どんな形であれ、嫁にしたいと言ってくれた。舞い上がった頭をどうにか抑えて、ちゃんと返事が出来た。




しかし、そこで溜め込んだレイ君への思いが溢れてしまった。




触れたいし、触れられたい。可愛いだけじゃなくてもっと近くで愛を伝えてほしい。




髪を撫でてほしいし、心臓の音が聞こえるくらい抱きしめてほしい。




どうしようもなく自分が女だと実感する。一時的な衝動の爆発。




これ、私梁山泊向いてないんじゃ?




なんて自嘲めいた事を考えながら、味も分からないまま自宅で料理を食べ、お湯で体を洗う。




「じゃあ、行ってくるね…」




「おう!かまして来いよレイ!ユキ君とお父さん達にもよろしくな!」




お父さんが親指をたてる!




「なななな何を言ってるのさ!もう!」




碌な返事も出来ぬまま、慌てて家を飛び出し、3つ隣の家に向かった。


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