第5話 突然の来訪

すべてを台無しにするような決意をしてから5年が経った。




5年間は集落の他の子共達と定期的にランダムに班分けして修行をした。




組み手など実践も多かったが、忍者みたいな修行が多かった5年だった。気配を殺したり、どんな場所でも素早い移動ができるようにだったり。とにかくいろいろ修業した。




レイとは一緒に修行をする機会はあまり無かったけど、代わりに勉強を教えてもらった。




政治の事とか、軍略の事。ついでに村のしきたりとか。




この世界でもやっぱりレイはレイのままで、変わらない彼女と少しづつ仲良くなっていくことは何よりもい楽しかった。




友達も沢山出来た。何より男が少ないこの集落で出来た。シュウという男。




無造作に伸ばした髪でいつも眠そうな気だるげな表情の癖して、誰よりも人をまとめるのが上手い。




「あの小さかったユキがもう10歳とはな、俺ももう勝てないかもな!はっはっは!」




「父様には俺が7歳の頃には勝ってましたね、母様にかったのが最近の話です。」




「この話はやめようか!悲しくなってくるぞ!」




「ユキは本当に強くなりましたね。私たちが現役ではないにしても、梁山泊入りできる力があると母さんは思います。」




「そうだな、お前はここでは飛びぬけている、他だとレイちゃんくらいなもんか。お前たちはもう呼ばれてるんだろ?」




「ですね、ようやく自分でも自信を持てるようになってきました。」




そう、俺たちは未来の梁山泊候補として現在の梁山泊から依頼が来た。




暗殺であった。




早い話が人を殺す事に慣れておけ、という事だ。




とはいえ声がかかるような子に関わらず、ここで修行する子達はそういった精神訓練も受けている。




正直、前世の俺とは価値観が全く違うが、なれとは恐ろしいもので、幼いころから狩りをしていたこともあって、人を殺めるという行為が当たり前の世界、と自分が考える様になるのは、不自然なく染まっていけた。




そんな折に来た依頼は難しい話でもない、単純な盗賊狩りだった。




ああ、こうして10年も過ごすと完全に適応したなー。




「お前くらい若い子に声がかかるってことは、そろそろ選出が始まるって事だな、後2年か、3年か。」




「そうなんですね!いよいよかぁ!今からでもいいくらいです!」




早くハーレム作らしてくれ!!




「そうはいっても、他の子達の実力もわからないだろ?そのためにもそろそろ準備期間が告知される、そしたら集落を取っ払って、自由に行き来できるようになる。」




「そこでいろんな子達と組み手したり、他の森で修行出来たりもするのですよ」




おお、そんなシステムがあるのか。いい機会だし、色んな美少女にも会いたいぞ。




「おーいユキくーん!」




お、麗しの美少女が俺を呼ぶ声がする!




「はーい!今行きまーす」




「勉強のお時間だ。」




「ええ、シュウもいんのかよ…」




「そもそもお前が僕に教えてくれと頼んだのになんて言い草をするんだコイツ…」




「冗談だってばよう、今日が最後だって聞いてたしな。」




「ああ、そろそろお互い選出の時期が近いしな。僕も本格的に自分の勉強をしたい。」




「ああ、お互い頑張ろう!」




「男の友情ってやつですなぁ、レイさんは入れなくて寂しいよい…」




「あぁ~ごごごめんよごめんよ!俺はもちろんレイとラブラブ勉強会がしたかったさ!」




「コイツ…」




すまんな、男の友情なんてものは美少女には霞むんだ。




この勉強会もレイがシュウを連れてきてから4年になる。




レイがもう教えることはないぞー!と自分の限界を迎えてつれてきたのがシュウ。




軍議戦略で梁山泊委入りを目指す秀才。




梁山泊「0番」を目指す男である。




「俺達ももう十歳かぁ、いよいよ本当に始まるんだな。」




「まぁレイ君は私に勝つ所からかな~」




「ふふふ、今に見ておれ…秘策を用意しておる…」




「な、なんだってー!」




「お前達はいいから勉強しろ、何のために僕を呼んだんだ…」




「おうおう可愛くないぞシュウさんよ、昔俺の天禄を見て「かっこいい…!僕も君とは違う形で梁山泊を目指したくなったよ!」とか言ってた子はどこへ行ったんだい?!」




「やめてくれ…実際あの時は男でこんなに強い奴がいるとは思ってなかったんだ…だが、お前に惚れ込んでいることは否定しないさ。」




「ちょっ…そうくるか…」




「あー!男の友情から今度は愛情だー!また私除け者だー!私こそピュアピュア初心な頃のレイ君を返せー!」




何年も変わらないやり取りに、波紋を落とす透き通った声が響いた。




「えっと…こちらでいいのかしら。ユキ君っていらっしゃる?お父様がここだって教えてくれたんだけど」




「えっと、ユキは俺ですけど…」




いきなりの美女乱入。ミディアムくらいの亜麻色の髪。毛先がふわふわとしているのが愛らしい。




柔らかい目つきに筋の通った鼻。美人とも可愛いともいえる顔立ち。




「まぁ!初めまして!カンナって言います!ふふっ聞いてたよりももっと可愛い顔してるのね」




「いやぁ~それほどでも~とゆうか、カンナさん?聞いてたっていうのは?」




「ああ、私のお母様からよ。やっぱり許嫁になる身だし、相手の方の事は知りたいですもの」




「許嫁?誰と誰が?」




「あなたと、わたし。」




「ええーー!!!」

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