目的意識

 本当に、それが正しいことなのか。その理由と目的は何なのか。目的と効果がみえにくいことが、社会には多くあります。

 たとえば、クラスのみんなで仲良くし、協力するということ、困っている人をみたら助けるということはどうでしょうか。

 集団での目標や取り組みへの参加の仕方には個人で違いがあり、自分のできることとやりたいこと、求められる役割も違います。自分の能力への自己認識や自己評価も違います。みんなで仲良くする、協力することへそれぞれができる範囲で取り組むことはいいことなのかもしれません。「できること」の自覚、「こうしたい」という気持ち(みんなでなにかなんてやりたくない、という気持ちも含め)をうまく反映できたらいいのかもしれません。しかし、みんなで仲良くする、協力することがどんなことにつながるのか、大人になった時に何かに役立つのか、その結果は、個人により違うのではないでしょうか。

 困っている人に声をかけ、その時自分ができることを考え実行するという力は必要なことです。人のために、やったほうがいいとされていることがたくさんあります。しかし、結果がわからないこと、本質的な問題をそれだけでは解決できなかったり、明確な目的を達成するには至らないこともたくさんあります。

 救命や病気の治療は、的確に行わなければいけない。投資は、情報をもとに将来を予測し、財産を守らなければいけない。商売をするなら、収益を得るに値するサービスや品物を提供しなければいけない。

 しかし、結果を予測しにくく、明確な目的を捉えにくいこと、情報をもとに結果を細かく予測しなくても、とりあえず、なんとなく実施しても差迫った危機はないこともたくさんあります。

 その中で、こうしたい、こうでありたい、これを達成したい、と思うことを定め、行動することができるかということは、すごく重要なのかもしれません。

 一方で、もっとリラックスして、好きだな、楽しいと思えることを通して興味を深めたり、うまくできる方法を追求し、思いがけずいい友人に恵まれたり、特技が身につくことは、とてもいいことなのかもしれません。いいことも、悪いことも、思いがけない結果が伴うことはよくあることなのかもしれません。

 目的に向かった的確な行動をするということは、あることの結果が、偶然、幸運と幸福を得ることだった、という偶発的なことではありません。こうでありたいということを自分の中でもち、自分がこのようにしたら、絶対ではないけれどこんなことがうまくいく、という行動を積み重ね強化していくことであり、求めるのは思いがけない幸運ではなく、もっと確実なものです。

 日常は、結果の予測、小さな判断の繰り返しです。日々の判断、行動が目的の達成に関係していきます。たとえすぐに結果が見えないことであっても、確実ではないけれど幸運の可能性があるとしても、考えや行動には、できるだけ連続性、有効性があった方がいい。

 そして、「結果はわからないけど、とりあえずチャレンジしてみる」、「運に任せてみる、神様はきっと見ている」という考え方は、どうなのでしょうか。やむを得ない場合でなければ、感心できませんが…

 (運が良くて、いいことが思いがけずあって)「よかったね!」という声かけや(結果はよくわからないけど、何でもいいから)「とにかく、頑張れ!」という声かけも、どうなのでしょうか…

 それよりも、「勉強時間を長くしたからテストの点数が上がったね」、「ランニングとトレーニングをしたから、マラソンのタイムが上がったね!」など、具体的な行動と具体的な成果を関連づける会話を、家族や友達、身近な人と積極的にできることの方が、はるかにいいと思えて仕方がありません。

 打ちのめされ、自分を責め、困難に直面したとき、すぐに結果が出ることではなくても、時間がかかることであっても、目的に向かって的確な行動をとることができたら、運や環境、周りの人に左右されずに、一貫して自分の行動を調節することができる。自分を助け、助けたいと思う誰かのためになる。お金や時間、人間関係といった因子に大きく支配されずに済むのではないかと。

 質的に、よい効果をもたらすような、目的へ向かった連続性、有効性のある行動ができるということは、こうしたい、こうでありたい、という他の目的とそれに応じた行動にもつながり、運や環境に恵まれない場合でも、将来への希望になると、言えるのではないでしょうか。

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