心をゆさぶる


 私たちは、この現実の社会で、適切に評価されていないのではないかという不満、努力が報われない不安、劣等感、依存、貧困、人間関係の悪化、病気など、様々な問題を抱えていると言えます。

 売り上げ、成績、人間関係の維持、子育て、研究や学問、受験、通学、何らかの成果をだすことや数字による評価、また同僚や同級生、兄弟姉妹といった比較対象の中で生きています。

 自分の好きなことが仕事となり、肩書きになり、生活の基盤にできるとは限りません。他の人より多く努力している、と自負できても、必ずしも望む結果が伴うとは限りません。

 人間関係をスムーズに構築できる、ピアノやスポーツ、なにか得意なものがある、ということは、他人からみてもわかりやすい強みです。他人からの評価は、良くも悪くもその人のパフォーマンスに大きく影響します。

 しかし、何事もこなすことができていればいいとはいえません。他の人から見て特技があり、優れているとみえても、本人の悩み、葛藤は大きいかもしれません。

 適切に評価して、見てくれるような人がいる人間関係を築くことができなかったり、周りの人の質に恵まれない場合、能力を発揮できないかもしれません。

 他人も、物事も、ときには、自分のことでさえ思うようになりません。だから計画が必要です。目的をスムーズに達成できるよう、周囲の人へ協力の要請や、意向の確認が必要かもしれません。うっかりミスや、根本的な勘違い、目的の共有困難など、避けることができ、事前に対策をとることができることは、行なうべきです。

 そのために、仕事にはマニュアルや規則があり、とこか一部分に負担がかかったり、どこかに不当に妥協を強いることがないように、マニュアル、規則、進呈状況を管理する管理者(上司)がいます。学校には試験があり、勉強の成績や内申を決める規定があります。個人の努力や根気を評価する面もあります。(企業では、個人の努力や、まして根性、やる気に大きく頼るのは、人為的ミスや、パワハラ、人間関係や環境の悪化のリスクがあります)。個人の資質(意欲、性格、好印象、人間関係構築の行い方)は、不安定で計りにくいものです。しかし、時に評価対象となり、その個人の所属する場所の「基準」にもなるのです。極端に言えば「あの人はなんとなく性格が合うからいい」「いや気に入らないな」と取捨の基準にもなります。

 大事なことは、個人が何にどれだけ価値をおいて、仕事、学業、スポーツなどの課題を行うか、ということなのかもしれません。自分の資質(特技がある、人当たりがよい、意欲がある、容姿、能力)をいかにコントロールし、目標をもち、自分がよいと信じることを行うことができるか。他人の評価や価値観(好き嫌い)に触れ消耗するのではなく、自分の資質を生かし進むことができるか。楽しいと思うことや好奇心をもって取り組むことは、何においても(勉強、子育て、運動、仕事、介護)原動力の一つです。

 現実社会では、人の心を動かすもののひとつに、純粋だけれど、目的を見据えた努力があるかもしれません。例えば、小学4年生の子が、友達が原因不明の難病になり、入院生活を余儀なくされた。なぜなんの落ち度もない友達が病気になったのか、なぜもう一緒に学校に行けないのか、自分で考えた。その難病の治療はとある機関で研究中であり、これからどう進行していくのか、友達の将来はわからない。もしかしたら今後、有効な治療方法が確立するかもしれない。原因のわからない病気の治療方法を解明して、人を助けたい。そんな思いから、両親には塾に通いたい、医学部付属の中学の受験をしたい、と懇願した。今までゲームばかりしていたが、クラスで一番成績の良い子を目標に、宿題だけでなく予習をするようになった。遊びやゲーム、今の楽しみよりも、将来こうしたい、だから今、学校で成績を上げ、受験を優先することにした。そうした考えと具体的行動は、親や先生、周りの人たちの心を動かすのかもしれません。

 やろう、という気持ちに嘘がないこと、友達の陥った理不尽な状況を打開するために、具体的目的をかかげ、実行にいたるまで、すべてその子どもの意思に基づいていること、治療方法が確立されてほしい、と誰かに委ねるのではなく自分がやろうとしていること、それらがまた人の心を動かすのです。

 アニメやドラマ、漫画、小説など創作物はときとして人を楽しませ、癒やしたり、強い感動を与えることがあります。そうした創作物の登場人物もまた、その行動や心に嘘がなく、ある目的のために、様々な試練や戦いに身を置く姿は、見る人の心をゆさぶるのかもしれません。

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