第174話 敵対の意思
「楽園」での生活はそのまま過ぎていった。真莉はその間、なにもすることができなかった。
だが実際仕方がないことなのかもしれない。彼の三人の恩師が「神の僕」に反逆したことによって殺されてしまっている。その大きなトラウマを抱えたままでは、行動することもままならない。
それに「神の僕」には普通の家族や子供たちがたくさんいた。彼らの生活や過去を知ったあとでは、ただの憎しみを維持するのは難しかった。
もちろん真莉の復讐心が消えたわけじゃなかった。彼女が勝手になにかすることもできた。だが、少女は自分が動けば、
彼女にはそれができなかった。その班は、今や大切なものとなっていた。
(……せめて日向たちの無事を知りたいのだが)
マダーに連絡することも考えたが、どこにいるかもわからず電話番号もわからないので結局二年間なにもできなかった。
真莉はいつか
「神の僕」はここ数年平和だった。2019年の韓国襲撃以来、特に人間界を傷つけることはしなかった。
だがとある出来事はそんな彼のささやかな希望を、めちゃくちゃに破壊してしまった。もはや立ち直れないくらいに。
それは真莉が18歳になったときだった。
そのとき、ふと何気なくつけたテレビニュースの内容が、デルマーを激怒させた。それはなんだったか。
イギリス襲撃である。
何が起きたのかわかった瞬間、
「ふざけるな!!!」
その怒りはすさまじいもので、キーランでさえ震えあがったくらいだった。
「あの野郎、裏切りやがった!!」
「デルマー様! 落ち着いてください!」
マルチナはほとんど泣きそうな声で叫んだ。
「デルマー、怒る気持ちはわかるけど_____」
真莉は手で髪をくしゃくしゃにした
「これは全然違う事態なんだ、カメリア……! イギリスにはまだ俺の……家族が……」
苦し紛れに絞り出された彼の言葉に部下たちは目を見開いた。
「俺にとっては唯一残されたものだった……いつか会おうと思っていた……でも全員……死んでしまったかもしれない……」
デルマーは激しく落ち込み、ずっと座ったまま一日を過ごした。部下たちは心配しどうにかしようとしたが、どれも無駄だった。
「仕方があるまい」
彼は突然言った。
「私は
青年は立ち上がる。目には冷たい復讐の炎が宿っていた。
「『神の僕』はやはり徹底的に潰さなければならない!」
彼は他の部下に無理についてこなくていいと言ったが、真莉、マルチナ、キーランはもちろん協力することを約束した。
それに対し、デルマーは悲しそうな笑みで「ありがとう……」と返した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます