第161話 リンネア・フォーサイス

 リンネア・フォーサイス。

 神の僕指導者、熱月テルミドール、セオドア・リアム・フォーサイスの妻。落ち着いた緑色の目、絹のような金髪を編み込みと団子をかけあわせた髪型にしている人物。フィンランド出身で、身長は177㎝とかなり高い。とはいえ熱月テルミドール自身が195㎝なので、二人が並んでいるとちょうど釣り合っているように見える。能力は大地と水。感情豊かな夫とは違い、非常に冷静で賢い人。基本穏やかで優しいが、皮肉を言うときもあるらしい。

 ちなみに他の者は彼女の主人を、熱月テルミドールや「セオドア」と呼ぶことが多いが、彼女のみ彼を「リアム」と呼んでいる。


「リンネア・フォーサイス?」


 カメリアから彼女の師匠が決まったことを聞いた霧月ブリュメールは、片眉を上げた。


熱月テルミドールの妻が? 君の師匠となったというのか?」


「はい、とても落ち着いていて綺麗な方でしたよ」


「そりゃあ美人だろうな。なにしろこの『楽園』で最も美しいと言われているお方だ。熱月テルミドールも彼女をとても大事にしているらしい。ちなみに熱月テルミドールは恋愛に関しては本当にうるさいので、二人はちゃんとお見合いでも権力でもなんでもなく、ごく普通の恋愛結婚をしたんだ。そこは彼のことを尊敬している」


 そう言い、デルマーは目を伏せる。


「……まあ、つまり、なにが言いたいかというと、そんな大切な人が君の師匠となったのだ。熱月テルミドールに一番身近な彼女こそ、『神』に関する貴重な情報を知っているかもしれない。情報の聞き取り、頼んだぞ」


「……はい、わかりました」





「大地というのはすべての源でもあると思うの」


 リンネアはカメリアと並んでゆったりとした足取りで歩く。ここは楽園から少し離れた少し大きい岩。二人はここで訓練しに来たのだ。


「だからこそ範囲を広く使う技こそ、その真の価値を表すものではないかと……私は考えるのよ。このようにね」


 深呼吸をし、リンネアは手を空に向かって一気に上げる。すると地面が揺れ、海の中から次々と岩の柱が、水を流しながら現れた。自分たちがいたちっぽけな石の塊を、島にまで成長させたのだ。なんとか立っていたカメリアはその圧倒的な力に呆然と目を見張る。

 さすがはリーダーの妻といったところか。12神官の一人だったとしてもぜんぜんおかしくない。


「最終的にはあなたもここまでできるようにしてほしい。今は難しくとも、訓練をすることでいずれ……」


「そんな……」


 無理だ、無理に決まっている。カメリアは絶望するが、リンネアは微笑んだだけだった。


「大丈夫よ。私よりも花月フロレアールのほうがすごいんだから。『楽園』ほど大きな島は私にはさすがに作れないよ」


「そんなこと言われましても……」


 そう呟くも、リンネアはただ薄く笑うだけだ。

 海の風に髪をなびかせるその姿は、真莉に誰かを思い出させた。彼女によく似ている人が、かつて自分の近くにいた気がした。






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