第132話 襲撃
そのころ、安保隊訓練所では、訓練兵たちが一通り訓練を終えて、休憩に入っているところだった。
「はあああああ、疲れた」
彼女は思わず呟いた。そばには彼女の班員たちがいて、疲労で横たわっていた。
「もうやだ、腹減った」
「頑張って、メイス。あとちょっとで終わるから」
泣き言を言った赤毛の彼を、シャーロットは励ました。そこで誰かが、彼らの班長の名を呼ぶ声が響いた。
「ズー」
「ブラウンさん?」
少女は彼のところへ駆け寄った。
「どうしたの? なにかあった?」
セシルは身をかがめ、彼女と目線を合わせ、周りが聞きとれないくらいの小さな声で、彼女にとあることを告げた。
「一班、二班、三班が今朝、駆り出されたことを知っているか?」
「え?」
「長らく追われていたペスト集団の住所が割れたそうだ。上はそれを『処分』するために上級班たちを送った。集団の年齢は10代と若く、人数は約10。フロスト社のマンションというなかなかいいところに住んでいるらしい。……まさか、君の知り合いではないだろうね?」
嘘……まさか……、どうして……? どうして今更……? 先日あんなことがあったのに……。あの人たちが……、怜が、殺されてしまうの……?
(絶対にダメだ!!!)
「おい、ズー!」
教官は怒鳴ったが、少女は止まらなかった。
「班長?!」
メイソンたちも次々と彼女の後を追う。他の訓練兵たちの間にどよめきが走る。
「おい、ブラウン、貴様! あの子たちに何を言った!!」
「さあね」
教官にキレられても、セシルは意に介さず、すぐに自分も
(なんだ……? どういうことだ……?)
三班の全員はその場に固まってしまった。何が起こったのか理解できなかった。だが先ほどの声が「安全保障隊」と言ったのはまぎれもない事実であった。
アーベルはいったん深呼吸をした。よくわからない。が、行動するしかない。二階にいたキャサリン、リーナとハヨンは不安そうな表情で下の階を覗いたが、アーベルは上着を脱ぎながら二人に降りてくるよう無言で合図した。他の班員たちも上着を捨てる。
それからドアをこじ開けられようとする音をわきで聞きながら、青年は一番窓に近かったアリシアに話しかけた。
「アリシア、敵は何人いる?」
「えっと……結構、15人くらいかな」
「なるほど。すまないけど、クリシュナが闇を出した瞬間、窓を開けることはできるかい?」
「うん」
「ありがとう。では皆、健闘を祈る。生きて会おう」
アーベルがちらっとクリシュナを見たとき、少年はすぐに闇を充満させた。それと同時に、アリシアが窓を開ける。そのとき、ドアを破って兵士たちが入ってきてしまった。
隠れ家は永遠に失われた。
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