第128話 復讐
そこで、彼女に向かってくる影が一つあった。正体はハトだった。
「やっと来たか」
「行け」
彼女はハトを飛ばす。それは迷わずに、暗い空へとまっすぐ向かった。
「いたぞ」
動物たちと感覚を共有し、あたりを探っていたヴィリアミは、敵の姿を見つける。
「よし。リーナ、あいつの風の能力に追いつけるのは君だけだ。なんとか僕たちの罠へ追い詰めてくれ」
「わかったわ」
リーナは静かに羽を出した。トンボ型のそれは美しいマゼンタ色に染まっている。フードとマスクをつけた彼女は、空へと飛び出した。
ヴィルの仲間の小鳥の後をついていき、ターゲットの立っている姿を見つける。リーナは短剣を握った。
わずかな音。
ガチンッ
剣と剣がぶつかる音が響いた。火花が散る。敵はリーナよりも力が勝っていたのか、彼女を一気に押しやった。だが少女はすぐに体勢を立て直した。
「お前もフェアリー団の者か?」
「ええ、そうよ。復讐しに来たの」
リーナは敵に対し答える。短い言葉ではあったが、口調は憎悪に満ちていた。
「ふん、くだらないね。炎への適応能力はあるのかな?」
手から燃え盛る炎柱が生まれる。火の一部がリーナを襲った。
「ッ!」
リーナはすぐに建物を離れようと飛んだ。
「逃げることなどできないぞ」
建物と建物の間を素早く移動する彼女を、
「闇・
一気に黒い靄が充満するが、それが
「速すぎる、追いつかない!」
敵はそのまま炎の攻撃を繰り出した。火の玉は勢いを増して、リーナに触れようとする。
だが、直前のところで小さな少年が横から、その火の玉を掴んで消してしまった。怜だった。
(結構な人数がいるな……)
相手はスピードを速め、ナイフを取り出した。それを風の能力に乗せ投げた。リーナはそれを避けようとして、つい壁にぶつかってビルの屋上に落ちる。
「さあて、風と炎が合わさったときの強さを見せてあげよう」
火災旋風が発生し、横たわった少女を襲おうとした。だがその前に別の方向から影が現れる。
「水・
ヴィリアミの技は炎の勢いを沈めた。彼は追加で石の壁を作り、風を抑えた。
「ガキが……!」
だがヴィリアミはしゃがんで次の攻撃を避け、約数秒で腕を再生した。大地能力者は簡単には殺せない。次の動きで確実に彼を殺そうとした
「ちっ……」
靄から逃れた彼女は一度態勢を整えようと、他のペストたちから距離を取ろうとした。しかし、そこでもう一つ邪魔が入る。横からものすごい勢いで少年が飛びついてきたのだ。
怜はそのまま
だが、彼は気にしていなかった。怒り狂っていたからだ。髪とまつ毛から炎が出ているまま、少年はふたたび相手を襲った。
はたから見ると子供の喧嘩のようだった。怜は相手の頭をペストマスクごと、ガツガツと叩く。炎の力もあわせ、相手の頭を覆っていたフードを引き裂き、硬い革でできたペストマスクでさえやぶいてしまう。黒い目と髪が露わになった。
(こいつ……案外手ごわいぞ……)
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