第126話 嘆き
知らせを聞いた仲間は、自分たちの作業を放り投げてすぐに飛んでいった。
信じられなかった。いや、信じたくなかった。嘘だと思いたかった。
だが現場に一番最初についたリーナが見たのは、目を閉じてアーベルの腕の中にいた日向だった。
「あ、ああ……そんな……そんな!!!」
リーナは日向に駆け寄り、そのだんだん冷たくなっていく頬に触れた。リーナは最古参のメンバー。日向とはもう七年以上ともに暮らしていた。それがこんな形で終わるなど。
「ひな……! ひな姉さん!!」
リーナの叫びで、他のメンバーもアーベルの言ったことが全て事実であることを察した。
「嘘……だろ……」
怜はその場に立てなくなり、地面に座り込んだ。彼は叫びたかったが、喉からは何も出てこなかった。翔の髪はショックで金髪から真っ白になった。彼はただ目を見開いて、そのまま突っ立っていた。クリシュナは日向に近づこうとして、できずに途中で止まってしまった。顔が見れなかった。
ヴィルは深く目を閉じた。肩は震えていた。
「嘘だ……! 嘘だ!!」
怜が話す力を取り戻し、日向のところまで這って行った。そしてリーナとともに大きな涙を目からこぼした。
一番冷静だったのはハヨンだったかもしれない。彼女は動かなくなった日向を見ると、わずかに震えた声で尋ねた。
「誰に……?」
「神の僕だ」
アーベルは淡々と答えた。
「神の僕……? あの人たちはペストを守る組織じゃ……」
「現実へようこそだ、ハヨン」
「アーベル、キャサリンは……」
やっと声が出た翔は、少女の安否を尋ねた。アーベルは黙ったまま、横を見つめた。
翔は地面に倒れたままの彼女を見て、息を呑んだ。今まであんなに嬉しそうに、楽しそうにしていたキャサリンの表情が死んでいたのだ。目には光がない。そして髪色が黒になっていた。
「……まさか、三つ目の能力か」
「ああ、キャサリンには闇の能力も所有していたみたいなんだ」
他のメンバーも驚いて、彼女を見つめた。
「立てるか」
翔はそっと話しかけるが、キャサリンが答える気配はなかった。翔は姉を失ったばかりのころの自分を思い出した。彼自身もこのように生きる意志がなく、荒れていた。
少年は小さな悲しみに満ちたため息をつき、キャサリンの体を抱いて背中に背負った。他のメンバーはキャサリンの切断された腕や足を持っていくことになった。安保隊に見つからないように、そうするしかなかった。
アーベルは日向の亡骸を腕に抱きながら、メンバーはそろって家に戻った。部屋についたときに、キャサリンの足はやっと回復し終わった。
「……大丈夫か」
翔は話しかけたが、少女は答えなかった。彼女は完全にエネルギーを失ってしまった。
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