第91話 電気ショック!

「キャサリン、手を貸せ!」


「え?」


 キャサリンがなにをされるか理解する前に、ミラベッラは彼女の手を掴み、風の能力も使って、スタジオの中に投げ入れた。


「ぎゃああああああ!!!!」


 キャサリンは座席に落ちるところだったが、氷の魔力でなんとか着地した。続いて、ミラベッラはふわりと風の能力を使って空を飛び、キャサリンの隣に降り立つ。


「なにするのよ! 私だって風の能力持ってるのに!」


「お前はもたもたしそうだから、先に放り投げた」


 表情を一切変えずに、ミラベッラは答える。


「さっさと行くぞ、逃げられる前に」


「私の叫び声のせいでもう気づかれたと思うけど」


「風の能力さえあれば追いつけるさ」


 二人は下に移動し、音をたどって追いかける。幸いなことに、犯人はまだ逃げていないようだった。


「道に迷ってるのか? あちこち駆け回っているみたいだな」


 ミラベッラは音の反響を風の能力を使って、最小限に小さくし、敵を追い詰めた。影がちらっと見えた。


「いたぞ!」


 二人は行き止まりのところへ、侵入者を追い立てた。暗くて何も見えなかったので、ミラベッラは持っていたライトで相手を照らした。

 それは少女だった。丸眼鏡をかけた、黒髪のアジア系の少女。


「お前は誰だ? どこに所属している? 何しにここに来た?」


 ミラベッラ鋭い目つきで尋ねた。だが、少女は答えない。それどころか逃げようとした。


「っ!」


 キャサリンはとっさに反応し、水を出し彼女を凍らせて止めようとした。だが、凍らせる前に、敵は能力を発動した。バチバチと音を立てた光り輝く雷のような……。

 バチンッ! キャサリンはいろいろと理解する前に強烈なショックを感じた。


「ぎゃああああ!!!」


 彼女は悲鳴を上げて、そのまま気絶してしまった。


「キャサリン!」


 ミラベッラが倒れた仲間に一瞬気を向けたときに、相手は突風のように去っていった。


「おい、待て!」


 ミラベッラは敵を追おうとしたが、そこで警備員たちの走ってくる音がした。


「チッ」


 彼女は舌打ちをして、キャサリンを担ぐとすぐにスタジアムから出た。地面に降り立つと、すぐにトアンと翔が走ってきた。


「叫び声を聞いたぞ! 何があった?」


「お前らほんとおっせえな」


 ミラベッラはイライラして言った。翔は気を失っているキャサリンを見ると、パニックを起こした。


「キャサリン?! 何があったんだ?!」


「敵にやられた。おそらく相手は電気を操る火の能力者だ」


「捕まえられたか?」


「いいや、警備員が来やがった。こっちにも来る前に行くぞ」


 四人はバイクのところへ行き、スタジアムから走り去った。翔はずっと意識のないキャサリンを、ひどく心配した表情で見つめた。

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