第71話 反撃
巧みにペストたちの攻撃をかわしながら、オクサーナは彼らを広場へと導いた。仮面の男たちはせせらと笑った。
「広場へ来たな。貴様の負けだ」
「勝敗を勝手に決めつけるのやめてくれないかしら」
男たちはオクサーナの発言など無視し、風と炎を混ぜ合わせた。火災旋風ならさきほどと同じく消せばいいではないか。オクサーナは鼻で笑った。
だが、ペスト仮面の男たちはそれにもうひと手間加えた。闇の能力だ。闇の能力を混ぜることで、その火災旋風は、怜の炎の能力でもないかぎり、打ち消すことができなくなるものとなる。黒い火災旋風は二人を襲った。
オクサーナは止めようとしたが、無駄だった。闇の防御は誰も打ち消すことができない。二人は巻き込まれた。
死体を確認するために、ペストの男たちは旋風を消す。しかし、亡骸はなかった。変だと感じ近づくとそこに穴があるのを見つけた。その穴は奥へと続いている。まさか、と後ろを振り向いた瞬間、オクサーナが立っていた。能力を使って雪を圧縮することでトンネルを掘って、自分とオレンジ髪を逃したのである。彼女はにやっと笑って手を合わせた。
「水・
地面の上に、雪でできた巨大な男の上半身が現れた。男は年取っていて白い長いひげをしていたが、その威厳はすさまじい。一目見ただけで震えあがるくらいだ。
男は大きな氷の槍を振り回した。物理攻撃の前では闇も無力だ。それから男はオクサーナの動きと合わせて大量の雪を吐き出した。雪は敵を埋め尽くし、高い山となった。
「やっぱり、勝ったのは私よ」
オクサーナは満足したような笑みを浮かべ、そばでしゃがんでいたオレンジ髪の男を見やった。
「あまり時間はないわ。いずれここからでてくるでしょうからね。移動しましょう。お金は私が出すから」
「……ありがとう」
オレンジ髪の男は疲れ切っていたが、安心もしていた表情でつぶやいた。
「そういえば名前なんていうの?」
「いつもはヴコールと名乗っているが、本名はヒューゴ、ヒューゴ・ヴァンダイクだ」
「ヒューゴね。よし、はやく空港へ行きましょう。ウラジオストクへ飛ぶわぁ」
オクサーナはホテルに戻り、弟子と妹の無事を確認した。オクサーナはイリーナを抱きしめ、キャサリンに妹を守ってくれたことを感謝した。
その後、四人はタクシーをつかまえ、イルクーツク国際空港へ向かった。空港へついたあと、すぐに17時発だったウラジオストクのチケットを買い、夕方にはもうイルクーツクを発っていた。
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