安保隊事件
第43話 事件
「よし、
安全保障隊訓練兵の最上位チーム、
班全員はいったんエアーバイクから降り、休憩する。荒い息を整えてから、メイソンは
「また命中できなかったな、班長。どうしたんだ、最近。お前なんか変だぞ」
「そうね、私も心配だわ。なんかここ数週間ずっと暗い顔をしているもの」
「班長になったストレスかい?」
班員たちはそれぞれの言葉で彼らのリーダーを心配した。
「ごめん、皆……。なんでもないよ。たぶん疲れてるだけ……」
もごもごと少女は言い訳を言った。
「なにか悩みがあるのなら、私に言ってよ? 溜めちゃダメだからね?」
「ありがとう、シャリー……」
もちろん、彼女は何も言えない。ペストに情を抱いてしまったなど。彼らと話し、見逃したことを。安保隊にとってその行動はただの裏切りである。
訓練後、
「はぁ……」
ため息が出る。今日で何回目のものだろうか。
『ペストより俺にとってはお前ら安保隊のほうがテロリストのように見える。何十万人の罪のないペストたちを殺しやがって……』
脳裏にあのペストの少年の言葉が響く。結局、自分は彼がどこにすんでいるのかもわからないし、名前もわからない。でも出会ったのは確か。そして、彼はずっと自分の心にいる。
ずっともやもやしている
「おはよう、メイス、ドロ」
次の日の朝、隊服を着終わった
「おはよう、ズー。シャリーは?」
「なんか少し遅れてくるって言ってた。本部の先輩に会うんだって」
「そんな簡単に会えるもんなの?」
「さあ」
談笑していたそのとき、急激な揺れが建物を襲った。三人の少年少女は身体を支えきれずにそのまま倒れる。
「……っ! 何今の!」
警報がなりはじめ、あたりが赤く点滅し始めた。アナウンスが周りに情報を伝える。
「一号館、本部で爆発事故がありました。繰り返します。一号館、本部で爆発事故がありました。他号館にいる隊員はただち指定された場所に集合し、訓練兵はすぐに避難してください」
「本部……ってまさか!」
「おい!」
メイソンが彼女を止めようとしたが、それは無駄だった。シャリーが今本部にいるということは……その爆発に巻き込まれた可能性が高いということだ。彼女は最悪を想定して、その場所まで走った。途中、安保隊の隊員が同じく無謀な彼女の計画を阻止しようとしたが、走るスピードが速すぎて無理だった。
階段を駆け上ると、さまざまなものが焼けた嫌な臭いがした。それは両親の命を奪った火事の臭いと同じだったので、
訓練兵は一番大きな部屋の扉を見つけ、そこをなんとか開けて中に飛び込んだ。中にかなりの数の人倒れていた。一号館は隊員に情報提供をする者たちが普段いる。航空機のパイロットに無線でさまざまな指示を出す航空管制官と同じような役割をもっている安保隊の心髄。しかし、今は無残な状況となっていた。火も少し上がっている。
「一体救急隊員たちはなにをやっているの!」
彼女は愚痴を吐き出し、ついに倒れているシャリーの姿を見つけた。
「シャリー!」
彼女は親友の脈を確認した。脈は安定していた。一つ変なことといえば、彼女の手が異様に冷たいことだった。しかし、
「生きてる! シャリー! シャーロット! 返事して!」
「おい、そこでなにをやってるんだ!」
そのとき、やっと救急隊員たちがやってきて、シャリー、その他の怪我人を運び出した。
「お前はさっさと避難しろ!」
大人たちは
「パリッ」
違和感を感じた訓練兵は下を見た。床にはカーペットがしいてあったが、そこに霜柱ができていた。
(……?)
(変だな……)
霜柱はまるで何かに沿うようにカーペットの上にできていた。その曲線を見て、
(ま、まさか……)
こんなことをできるのはペストのみ、だ。
安全保障隊の人間がいきなりペスト化する現象を確かに聞いたことはあった。しかし、それが起こるのはひどく稀……。それがまさか自分の親友に起こるなんて……
安保隊がそれをシャリーがペストだとわかってしまったら、どうなるだろう。もちろん、安保隊がやることはたったひとつだ。「殺処分」。シャリーは自身の仲間に殺されてしまうのだ。
(いや、気のせい。絶対に気のせいよ。そんなはずはない。ないから)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます