第27話 ほむら

「てめえもペストか?!」


「くそっ、殺せ!!」


 男たちは一斉に背の小さい怜を襲った。


「はっ、植物も水も俺には効かない!」


 しかし、どの攻撃も怜は跳ね返した。どちらの力も持っている彼は、奴らの魔法を「打ち消す」ことができるのだ。

 闇の力をもった仲間の一人は、防御として闇をまとう。


「そんなもんも無駄だ!」


 怜は怒り、ますます炎の温度をあげ、目が潰れるくらいの光を生み出した。なんということかそれは闇を消してしまったのである。これが怜の強みだった。彼の炎の能力は強すぎて、クリシュナの闇さえ消してしまうのである。


 トドメだ_____

 怜は周りに炎が広がらないよう、拳にのみ火を纏わせる。


「炎・火手ひのて!!」


 今は亡き明に教えてもらった技だ。それを思いっきり男の腹に打ち込んだ。


「ぐふっ!」


 他の二人も同じように片付ける。横たわった男たちの横で、怜は息を整えた。まだ炎が髪と目から出ている。その様はまるで_____炎の悪魔。ガチャッと小さな音がした。横を向くと、紫涵ズーハンがピストルを怜に向けていた。恐怖、そして裏切られた悲しみと怒りが混じった目で怜を見ていた。


「助けてやったのにその態度かよ」


 怜は苦笑し、手を少女に差し伸べようとした。


「動かないで! 撃つよ!」


 紫涵ズーハンは叫んだが、その言葉とは裏腹に手はガタガタと震えていた。彼はペスト。撃たなきゃいけないのはわかっているのに、なぜか体が動かない。指に力が入らないのだ。

 怜はそれを察してか、動じることもなく上着をひょいと脱いだ。その下は仕事着で、背中があらわになっていた。


「何するつもり?!」


「まあまあ落ち着けよ」


 彼はそう言うと、突然彼の背の皮膚が細くなりどんどん伸びていった。最終的にそれは美しい二枚の大きな羽だった。蝶のような形をしていて、色はほんの少しの緑と青、そして他は赤、黒と金だった。それは黒曜石とルビー、金などの鉱石でできたように見え、その美しさはイギリス王家に伝わる王冠にも勝るくらいだった。

 紫涵ズーハンは動けずに、ただそれがきらきらと輝くさまを見ていた。それくらい綺麗だったのだ。


 そのとき、個室の扉がドンドンと叩かれた。


「おい! さっき銃声が聞こえたぞ! 大丈夫か!」


 病院側がペストたちとグルだということを知らない紫涵ズーハンは、声をあげようとしたが、怜が彼女の口を抑え、そのまま窓から彼女をかかえたまま飛び出した。医者と看護師たちが部屋に入ってきたときには、三人の横たわった男たち以外、誰もいなかった

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