第19話 邂逅

 6人は窓から中へと飛び込む。中は熱く、皮膚が焼ける。


「誰か火遊びでもしたんか」


ヴィルは鼻を鳴らして、皮肉った。


「翔と怜は私と一緒に来て。キャサリンとヴィリアミはクリシュナの力を借りて、炎を消してってね」


「了解です!」


 5人は返事をした。クリシュナがキャサリンとヴィルに『黒の鎧कालाकवच』を着せる。


「サンキュー、クリシュナ。行くぜ。水・大河joki!」


 大量の水が流れ込み、火を消していく。蒸気が上がった。そのとき、天井の壁が崩れ落ちてくる。その真下には、キャサリンがいた。


「ウィルソン!」


 ヴィルの叫び声で、キャサリンはそれに気づき、なんとか能力で抑えようとして手を上に向けた。しかし、彼女の手から出たのは雪……ではなかった。爆風だった。風は壁を粉々に砕き、そのかけらはパラパラと周りに散らばった。キャサリンは自分自身に驚き、ヴィルとクリシュナは眉をよせて、顔を見合わせた。


「なに……いまの……」


「……絶対雪の能力ではないよな」


「うん。風の類だと思うよ」


「ウィルソン、お前……」


「こら、3人ともそこで突っ立ってないで」


 日向に言われ、キャサリンたちは慌てて仕事に戻った。




「はあ、はあ。これで全員……?」


 紫涵ズーハンは、荒い息を吐き呟いた。小さき訓練兵はすでに何人かを救っており、今最終確認をしようとしているところだった。もう大丈夫かと思ったとき、奥で誰かの影が見えた。


「っ、まだ誰かいるの?」


 紫涵ズーハンは歩こうとしたが、すでに体力の限界が来ていた。紫涵ズーハンは優秀な訓練兵だった。が、一つの欠点があった。彼女はよく無理をした。どんなに危険な任務でも、勝てないとわかっている敵でも、彼女は勇猛果敢にそこに突っ込んでいくのである。紫涵ズーハンにはまだ経験が足りていなかった。自己犠牲はほとんどの場合、無意味な行為と理解するほどの。まずいと彼女は思ったが、時既に遅し。訓練兵は床に倒れた。




「-怜」


 火を消していく作業を進めていた最中、キャサリンがふと黒髪の少年を呼び止める。


「そこ……人が倒れていない?」


「……ほんとだ。まずいじゃん」


 二人は駆け寄り、倒れていた少女を支えた。


「一酸化炭素中毒かな……早く病院へ連れて行かなきゃ」


「すぐ近くにあるからこのまま連れて行こう」


 日向に一言言ってから、怜は彼女を背におぶいて、速いスピードで走り始めた。キャサリンは一緒に走りながら、少女の体が揺れないように抑えた。ある程度強化されたペストの体があれば、病院へつくのはあっという間である。ペスト専用の裏ドアから入ると、ばったりヤコブ・エルナンデスと出会った。


「ふん、人間の怪我人か」


 彼はちらっと患者を見、看護師たちを呼び寄せた。


「俺はこいつを治療するから、お前らは身分証明書を探せ」


 命令され、二人は彼女のショルダーバッグを漁った。キャサリンはそこで一枚のカードを見つけ、怜に見せる。それには「安全保障隊訓練兵 朱紫涵スー・ズーハン」と書かれてあった。二人は顔を見合わせ、困った表情をした。

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