第16話 思わぬ助け
「風・
その瞬間、指先から突風が発生し、一瞬で巨体を100メートルほど飛ばし、壁に激突させた。あんなに騒いでいた会場が、すぐに静かになった。たった今目が覚めたヴィルとクリシュナも、驚きで動けなくなっている。
「
開催者が困惑して言う。
「試合の邪魔をしてすまないな。だが、私には
「何?!」
霧月はくいっと指を曲げると、開催者が風に操られ、霧月の前に飛んできた。たくさんの観客席にいた人々はパニックになり、慌てて逃げようとした。
「何を馬鹿なことを、
「いや、ペストの時代は必ず来る。神が存在する限り、奇跡は必ず起こるのだ。そのために我々は働く。我々は『神の僕』であるのだ」
霧月はふとキャサリンの方へ向き、口を開く。
「本当は静かに処分しなければならないから、後でゆっくり消していこうと思ったんだがな……大騒ぎになってしまった。お嬢さん、あなたは左にある扉へ行き、あなたの友達を救うのだ。そこにいる君の仲間たちにもそう伝えてくれ」
「はい……あ、あの……ありがとうございます…」
「どういたしまして。だが助けるのは今回だけだ。次に会うときは立場が一緒になるかどうかはわからないからな。それと他の
「はい!」
キャサリンはすぐに、リングから降り、ヴィルとクリシュナに合流した。
「
「一体何があったんだ……全く何が起こってるのかよくわからん……」
ヴィルが困惑した表情でつぶやいた。
「私もよくわからないよ。でも早く行かなきゃ!」
三人は足早に、会場を去る。左の扉へ行くと、倉庫のような風景が広がっていた。檻のようなものたくさんあるが、今はほとんど開けられていた。
「みんな逃げたのかな……?」
奥へ進んでいくと人影が見えた。つい身構えるが、それはリーナだった。
「なんだ、リーナじゃない。翔は見つかった?」
「ええ、見つかったわ。それから……日向にも見つかっちゃったわ……」
「え」
「あー! あんたたちもここにいたの?!」
「日向!? オクサーナたちを呼んだんじゃないのか?」
「違うよ、時間かかっちゃうもの。私が呼んだのは-」
「私ね」
現れたのは背のとても高い女であった。髪は長く真っ黒であったが、目は雪のように白かった。
「マダー!!」
クリシュナとヴィルが叫んだ。
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