第3話 下校時間

14時30分。

そろそろ小学生たちが下校してくる時間だ。


通学路に面しているこの家は登下校の時間になるとガヤガヤと子供の声がする。

朝早くから声がするのでそれにつられて目が覚めてしまう。


しかし、そんなことも今日までだ。


そんなことを考えながら準備をはじめる。

いつもの着ている地味なポロシャツを着てカーキ色のズボンを履き、紺の靴下をはき、濃茶色のコートとマスクを用意する。


着替え終わると、妻と娘の写真に向かって手を合わせる。

妻と娘は、3年前に娘の下校途中に交通事故で亡くなった。信号無視によるものだった。


「今日で終わりだよ。いってきます。」


妻子に挨拶をすませるとコートを羽織り、マスクを着けて、


黄色い旗を持って、学校の統廃合によって変わる通学路に向かった。

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一話完結 上屋列道 @imasaka_UeYa

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