#3 2022、叶うべき更なる夢の先へ。

2021年11月27日。

この日、長かったペナントレースの幕が閉じた。


我がオリックス・バファローズは25年ぶりに日本シリーズという大舞台に立ち、

東京ヤクルトスワローズ相手に2勝4敗という結果で、

日本一の称号を掴み損ねてしまった。


私は、ほっともっとフィールド神戸の2階内野席で、

相手チームの歓喜の時をただ無表情で眺めていた。

悔しい気持ちはもちろんあるし、

この日の試合の敗因となった貧打や雑な守備に対する苛立ちも当然ある。

ただそれ以上に、

このクソ寒い時期まで応援している球団の試合を見ることができた嬉しさ、

全国の野球ファンや解説者やメディアなどから「毎試合白熱した日本シリーズ」と賞賛されるほどの接戦をバファローズが演出できたことへの誇らしさ、

そんな白熱した接戦が今年はもう見ることのできない寂しさなど……私の中で色々な感情が入り混じっていた。

それほど2021年という1年はバファローズにとってもその一ファンである私にとっても激動の1年だった。


思えば開幕当初。

バファローズはここ直近の2年間で、

2年連続最下位という屈辱的なシーズンを過ごしており、

私がチームを俄に応援し始めたあの2014年を最後に6年連続でAクラスから遠ざかっている。

私自身も「どうせ今年も最下位。4、5位くらいになってればようやっとる方。」

「あの戦力で無茶を要求する宮内義彦とかいう老害が上にいる限り優勝は未来永劫不可能。」とネガティブな気持ちで開幕を迎えていた。

毎年開幕戦で芸術的な敗北を喫して我々ファンを「今年もアカンか……」と、

絶望の淵へと落とすことが恒例行事となっているが、

この年もメットライフドームでの開幕戦で期待の若手枠の太田椋と紅林弘太郎のエラーが相手の決勝点となるお粗末な負け方をしてしまう。

その後2週間近くはここ2年と比較すればまだマシといえるレベルではあったものの、なかなか勝ちきれない戦いが続いていた。


バファローズが勝てない原因は何なのか私は考えた。

それは「私が”本来頑張るべきこと”に対して力をいれてないからではないのか」と。

その”本来頑張るべきこと”とは、仕事でも資格取得のための勉強でもましてや恋愛でもなく、”創作活動”である。


私はこのカクヨムにおいて小説やエッセイなどといった文筆作品の執筆の他に、

絵師としてちょくちょく絵を描いたり、

現在は実質休止しているがバファローズを応援するバーチャルYouTuber『水本クリスチーナ』のプロデューサーとして動画の構成や編集を行ったりと……幅広く創作活動を行っている。

しかしここ数年はバファローズの応援に熱が入りすぎたり、

本業の社畜生活が多忙だったり、その他の趣味に没頭したりで、

いずれの活動にも本腰が入らず、当然結果としても作品をSNSや投稿サイトにアップしてもなかなかバズらない事が多かった。

その間、バファローズも先ほど前述したように

Bクラスならびに最下位が定位置となっている。


そのことから絵師や文筆家、小説家を痛々しく自称していながら

何もしていないクセに、弱いチームに対してブーブーと文句を垂れながら

性懲りもなくただ応援してるだけの自分にも原因があると考えるようになっていた。

それがハッキリとした原因と言い切れる根拠などあるはずもないが、

ここまで低迷が続けばそう思わざるを得ないのである。


ただ、活動が疎かになってしまっているのは揺るぎない事実であり、

今回を機に何か再び動き始めるキッカケが欲しい。

クリエイターとして、絵師として、烏丸れーもんという男が生きている証が欲しい。

たとえそれが小手先での悪足掻きによる小規模で地味なモノだとしても、

少しでも生き延びるために継続してやる。

だからバファローズ、お前らも少しでも上へ上へと這い上がるために頑張らんかい。

そんな激励を込める意味でも、何かしらの作品あるいは成果を短いスパンで発表していきたい。


そんなことを考えて始めたのが、

小さな正方形サイズのスケッチブックに

版権キャラクターの簡単なイラストを毎日描き続けることだった。

何故版権キャラクターなのかという理由としては、

画力やキャラクターデザインのスキル向上を目的とした、

ただの練習というのもあるが、

版権キャラクターのイラストを描いてアップした方が、

オリジナルキャラクターを描いた時と比較して、いいね!などが付いてきやすいこともあり、絵師としての快楽とあわよくば知名度も得るためでもあるからだ。


そんなことはまぁどうでもいいとして、

それがバファローズおよび私の作家としての躍進に繋がる保証などありはしないが、

このまま何もせず、何も描かず、何も作らずに淡々と日々を過ごしていくよりかは遥かにマシに決まっている、とスケッチを描き始めることを決意した。

2021年4月19日。

この日は推しのアニメキャラが誕生日だったため、申し訳程度に祝う意味で、

6Bの鉛筆1本だけを駆使して描いたイラストを『#Laymon_Sketch』のハッシュタグをつけてTwitterとPixivにアップした。


そして翌日からの京セラドームでの対西武3連戦の初戦。

この日は打線が吉田正尚の5階上段席にある『執念』の二文字が刻まれた横断幕へ打球を直撃させる特大ホームランを含む17安打11得点と大爆発を見せて圧勝。

この時はまだたまたま勝っただけで決してスケッチのおかげな訳がない、と思いつつも、この日の試合後も推しのキャラに好みの服を着せただけの自己満足な落書きを描いてアップした後に眠りについた。


さらに翌日の2戦目。

エース山本由伸が8回2失点とまさかの炎上を見せるも、

アダム・ジョーンズのタイムリーと宗佑磨のホームランで逆転勝利。

まだ偶然だと思いながらこの日もスケッチを描いて就寝する。


そして3戦目。この試合を機に、私の中にある偶然が確信へと変わった。


この日の先発はベテランの増井浩俊。

6回3失点とまずまずのピッチングを見せ、打線の援護を待つ。

そして6回裏、1点ビハインドの場面でバッターはこの日増井とバッテリーを組んでいる私の推し選手の一人・頓宮裕真。

マウンド上の松本航が投げた初球を捉えて、そのままライトスタンドへと値千金の同点ホームランを放った。

しかし、終盤の8回表にリリーフで登板した比嘉幹貴が満塁のピンチの場面で愛斗に痛恨の決め手となる走者一掃のタイムリーを浴びてしまう。

流石に私も「今日はもう負けだろう」と察して、そこで試合を観るのをやめた。

「やっぱ俺の落書きごときでひいきチームが勝てるなんて上手い話しないわな。それで勝てるなら今まで長いこと苦労してへんわ。」

私は呆れ笑いながら心の中でそうつぶやいた。

それが後に起きる出来事のフラグになるとは知る由もなく。


数十分後、負けたと予測できていつつも試合結果を知ろうと、

スマホで速報アプリを立ち上げる。

すると私は驚いた。

バファローズが9回裏に4点を取り、

3点差を見事にひっくり返して逆転サヨナラ勝ちを決めていた。

配信サイトのアーカイブ映像でその経緯を見ると、

ツーアウト満塁という緊迫する場面で打席のT-岡田があわやホームランかと思われた長打がフェンスに直撃し、走者一掃のタイムリースリーベースで一気に同点に追いつくと、続くバッターはこの年本塁打王を獲得し、レギュラーとして覚醒した最推し選手の杉本裕太郎。

打った打球はショート源田壮亮の横を破り、見事サヨナラヒットで試合を決めた。

打つべき人が打って勝利をもぎ取ったテンションが最高潮に達する試合だった。


この3連戦を見事3連勝したことで確信した。

「スケッチを始めたことで私を監視していた創作の神がささやかな報酬として贔屓チームに“本物の力”を与えてくれたのだ。」と。

「クリエイターとしての、そして絵師としての私の『執念』がバファローズに届いたのだ。」と。

「そんなわけないだろ。ただの偶然だぞ。」と私の中に潜む真面な思考を持つ細胞が吐き捨てるも、私はバファローズの勝利を願うためにスケッチを毎日描き続けることを決意した。


それからごく稀にサボる日もあったが、

私はほぼ毎日スケッチを描いてはアップする日々を繰り返していた。

その間、作品がバズったり、絵師としての私の知名度が上がったり……ということは起こらなかった。

それでも私はバファローズが勝つために、と落書きを描き続けた。


その結果、11年ぶりの交流戦優勝に始まり、

37年ぶりの11連勝と勢いをつけると、交流戦前まで5位と低迷していた順位も、

7年ぶりの単独首位まで浮上し、そのまま首位をキープし続け、

開幕当初に私が最低限望むモノとしていた4、5位くらいはおろか、

2014年に果たすことのできなかった優勝二文字も実現可能のものとなっていた。

例年ならセミが鳴くころ、酷い時は鯉のぼりを揚げる頃にその二文字が儚く消えてしまいがちなバファローズにとっては信じられない話だ。


この時私は「ヒロインの女騎士を主人公が自らの能力で勝たせるようにアシストする感じのファンタジー系作品の映画かライトノベルの、その主人公にでもなっている!」と思い、有頂天な気分だった。

読書の皆様からすれば「全部神様仏様中嶋BIGBOSS様の名采配のおかげじゃ。調子乗んなキモオタ。」と思われるかもしれない。

不快に思われた読者の皆様、ごめんなさい。


そしてそんな感じに調子に乗っていると、

9月中旬に打線の中軸・吉田正尚の故障による戦線離脱により戦力が一気にダウンし、首位陥落。

一時期、当時首位に立っていたロッテとのゲーム差が4まで広まり、

優勝が絶望的な状態に追い込まれた。

私の精神状態がその時描いていた作品の中もモロに表れて、

憂鬱感があふれる暗い落書きになっていた。

酷い時は「スケッチの効果が切れたんだ。だからもう描きたくない。」と

モチベーションすら失いつつあった。

それでも私は、7年前から止まっていたバファローズの時計をもう一度動かせるため、絶対に優勝させるため、と描き続け、9月末の千葉首位攻防でT-岡田の逆転3ランとその後の京セラでのホークス戦3連勝によって首位を奪い返した。


そんな塵のように落書きを描き続けて量産する日々を重ねて、

2021年10月27日。

バファローズは見事リーグ優勝を果たした。


この10月ごろから、社畜生活の多忙な日々での疲労もあって、

スケッチを描いてアップする日頻度が少なくなっており、

18日を更新を完全に途絶えていた。

それでも、私が軽い気持ちの験担ぎで描いた落書きによる力がなくとも、

バファローズが自分達の力だけでラストスパートを見事に駆け抜けて優勝できたことに、私はバファローズの選手や首脳陣らの親でも何でもないくせに、

とてつもない感動の涙を流していした。


ただその反面で、日本シリーズで勝ちきれなかったことに対しては、

私自身も最後までスケッチを頑張って描いていれば、

もしかすると日本一になっていたのかもしれないのだろうか……という反省、後悔、罪悪感に苛まれた。


何はともあれ、2年連続最下位から未来永劫不可能と嘆いていた優勝を成し遂げ、

日本シリーズという大舞台に我々ファンを連れてきてくれて、

大いなる夢と希望と興奮……そして私自身にクリエイターとして、絵師として、

もう一度奮起させるキッカケを与えてくれたオリックス・バファローズ。

この1年、最後まで熱く夢中にさせてくれたそのチームに感謝の意を表した。


そして明る今年2022年。


昨年予想外の躍進を見せ、

私を含めたファン一人一人にある『叶うべき夢の先』へと向かうべく現代社会で戦うためのエネルギーを与えてくれたバファローズ。

今年は私がクリエイターとして、絵師として、そして物書きとして、全ての分野において躍進し、私の作品を見てくれる人たちにそのエネルギーを与える番にしたい。


ここから私の創作活動の近況報告となるが、

ここまで記してきたバファローズと私の創作意欲を申し訳程度に延命させるために描き続けたヘタクソな落書きと共に歩んだ去年の出来事を元にした小説作品を、

このカクヨムにおいて執筆、連載したいと現在企画している。

キャラクターや世界観の設定、ストーリープロットなどは脳内にフワッと存在はしているが、まとめて形にしていくまでにはまだ至っていない。

春頃までにはそのプロローグを皆様にお読みいただけるように執筆活動を楽しんでいる、というのが現在の活動の近況である。


もちろん小説のみならず絵師としても成人男性に向けた本格的な二次創作のイラストも描きたいし、オリ姫設定の自作オリジナルキャラクターを主役にしたオリックスメインの野球観戦漫画も描きたいし……とにかく幅広いジャンルで作り出したいものがたくさんある。

これらすべてを望み通りの形に完成させるのは難しいことであるのは、

10年近く創作活動をしてきて十分に痛感している。

それでも、昨年のバファローズが常に持ち合わせていた『我々は”最下位からの挑戦者(チャレンジャー)”』というの意識を見習って、2022年は『挑みまくる年』にしたい。私自身も作家として『ほぼ無名からの挑戦者(チャレンジャー)』であるから。

去年バファローズが見事優勝できたからこそ、

私自身もやってやろう、という消えかけていた闘志を再び燃やすようになった。

そこは何度も言うように感謝したい限りである。


そしてそんなバファローズに対して、

過度な期待をすると一昨年までの弱いチームに戻ってしまうチームであるのはわかっていても、

やはり『日本一』という去年叶わなかった『叶うべき更なる夢の先』へと我々ファンを連れて行ってくれることを期待したい。

前述の作品の執筆を含めた私の今年の創作活動が野望通りに行けば、

その夢も叶えてくれそうな気がする。


そんな感じで、れーもんがバファローズについて語るこのエッセイは今回を持って、

前述の小説作品の執筆活動や絵師としての活動など他の創作活動に専念するためしばらく休止します。

合間に気が向けば、また執筆していければと思います。

読者の皆様にはその時まで、このカクヨム内に掲載されている私の小説でも読みながら気長にお待ちいただければ幸いです。


ほな、また。

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オリガタリ 神山遊哉(旧・烏丸れーもん) @karasuma-laymon

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