演劇のような、両者がひたすら問題と向き合った会話が展開されていて、新鮮でした。
本文には書かれていないため憶測になりますが、酒のような物質的なもので満たされている人間は、お節介とは対義にあたる、自分ごとだけの人間なのかもしれませんね。逆に、思想を掲げる人間は、自分を幸せにするよりも、身の回りが幸せでないと安心できないのかもしれない、と私としては思いました。どちらかが自己中心的ということもなく、後者は自分のために他人の幸せを望んでいるのかもしれません。ただ、他人の幸せを気にかけるほうが意識的で、闘いという表現がマッチするくらい、強い意志が求められるスタンスのように感じました。本能的であるより人間的であるほうがいい、という意味で、この小説の二人は魅力的です。
最後、語り手が煙草を吸いたくなったのは、考え事に疲れて、反射的に物質的な幸福を得ようとしたということでいいのでしょうか。こうした欲求は誰にでもあるものだ、と共感しました。
長い感想を書いてしまい、すみません。興味深い作品を読ませていただき、ありがとうございました。
「彼らは詩や思想を必要としないさ。そして、それが彼らの幸福なのだよ」
というセリフが印象的でした。
詩や思想を必要としない人を、どこか見下しながらも、羨ましい。
登場人物たちのそんな感情が表現されているように思えます。
なんと言うか、彼らが他人とは思えませんでしたね……。