第33話 経過
神武では、現在の母艦の様子を確認していた。
「どうだ?」
「敵艦、沈黙!そのまま大気圏内に突入します!」
観測員の言葉通り、母艦は大破した状態のまま、大気圏へと突入していった。
破壊された影響があったのか、母艦は大気圏内でバラバラになって大西洋へと落下していった。
「……我々の勝利だ!」
艦長は確信して言う。
それに伴い、艦橋、CICでは歓喜の渦に巻き込まれた。
その通信は、ヘリクゼンにも届いていた。
「まったく、いちいちうるせぇな……」
そんなことをブツブツと言いながらも、一基はヘリクゼンを神武へと向けるのだった。
『ヘリクゼン、収容します』
第7ハッチでは、ヘリクゼン収容のための操作が行われていた。
エアロックで与圧し、大気圏内と同じ気圧にされる。
最終的にすべてのロックボルトをした所で、一基がヘリクゼンのコックピットから降りる。
すると、整備員やオペレーターまで、その場にいた全員が拍手で一基のことを出迎える。
「お疲れ様でした、一基様」
一基の世話人がやってくる。
「それはいいんだけど、これは?」
「当然、一基様の活躍により、敵を排除なされたので、そのお祝いでしょう」
遠くのほうから、一基に声をかける人もいた。
「そんな大騒ぎすることでもないだろ」
「いえ、人類にとって大きな勝利を得たのですから、当然の反応かと思われます」
「……あっそ」
一基は興味なさそうに、ヘリクゼンを降りて行った。
それから神武は、地球を一周し、大気圏に突入する。
減速をしながらの降下であったため、大気との摩擦や圧縮は行われず、燃えずに降下していった。
そのまま神武は、自衛隊百里基地に着陸する。どうやら陸に上げることも可能らしい。
そのまま神武の乗組員は、式典で大河内総理から祝福の言葉をもらったり、式典終わりにはヘリクゼンを降ろして点検に入った。
ヘリクゼンの点検を指揮するフラメタックスジャパンの技術部主任は、宇宙へ行ったヘリクゼンの状態を見て驚く。
「あれだけの戦闘をしておいて、傷一つついてないとは……!」
そう、異星人の母艦への突入、破壊、その他もろもろの行動をしているにも関わらず、ヘリクゼンの表面には目立った傷は残っていなかった。
表面には、であるが。
「班長!内部の配線がほとんど焼き切れています!こりゃ全部交換しないとダメです!」
「明らかに機械的、電気的に接続されていると思われるのに、何もありません。どうやって動かしたんだ?」
「どうもアプリケーションが書き変わっています。さらにOSもいつも使っているものと互換性がないようです」
「SSDを解析しようにも、記録が暗号化されていて読むことができません。これじゃあ次の戦闘で性能を活かしきれませんよ」
そのような報告ばかりが上がってくる。
「一体どうなっているんだ?」
技術者、科学者としては疑問に残るようなことばかりである。
今のヘリクゼンの様子を見れば、まるで……。
「まるで、金属そのものが動いているようじゃないか……」
残念ながら、この疑問は解決することはなかった。
どちらにせよ、結果としては、第二次異星人侵攻を食い止めることに成功したのである。
その後の新国際秩序を見てみよう。
まず、ヘリクゼルを利用した植物工場が新国際秩序に次々と建設された。もちろん、食料危機を脱出するためである。
まずは野菜に分類される植物を育成し、そしてジャガイモ、小麦、米などの穀物を生産する。
エネルギー供給に関しては、ヘリクゼルを使用しているため、実質無限だ。
そのため、エネルギーを使いまくって、第一次産業を復興させた。
食料の問題が解決したならば、次は第二次産業を拡充させる。
まともな技術を保有しているのは、日本、イギリス、アメリカ西海岸だ。
これらの地域に、優先的に資源を分配する。
特に、一定のエネルギーを供給すれば増殖するヘリクゼルは、日本やイギリスを中心に分配された。
そのヘリクゼルを、日常のいたる所に使用し、見せかけだけは復興したようにさせる。
こうして技術は復活を遂げた。
そしてここからが問題である。
新国際秩序総会は、今後も新たな異星人の侵攻があるという可能性を考えた。
当然の結果だろう。すでに二度にわたって異星人の侵略があったからだ。
となれば、早急に軍拡を行うことは必須だろう。
そこで、新国際秩序総会は、秩序軍と称して軍備拡大を目的とした計画を始める。
これには、主にヘリクゼルを使用した兵器の製造や量産計画が盛り込まれた。
さらに、深宇宙特殊攻撃艦である神武をベースに、艦隊建造計画がスタートする。
これは、陸海空軍の機能をすべて宇宙軍に集約し、統合的な作戦行動をとれるようにする狙いがあった。
とにもかくにも、ヘリクゼルを使用した新しい世界の再構築は、順調に推し進められる。
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