第32話 発進

 ヘリクゼンに乗り込んだ一基は、ヘリクゼンを起動させる。

 当然、その姿は宇宙服に身を包んでいた。


『ヘリクゼンの起動を確認』

『各種モニターは正常に作動』

『ヘリクゼンとの通信状況を確認。どうだ?聞こえるか?』

「十分聞こえてる」

『ヘリクゼン、第一ロックボルト解除!』


 それに合わせて、腰周辺を拘束していた安全装置が解除される。


『ヘリクゼン、第7ハッチに移動』

『背後のブースターに気をつけろ!』

『第二ロックボルト外せ!』


 肩周辺を固定していた拘束具が外される。

 残された拘束は足元のそれだけだ。


『ヘリクゼン、エアロックに進入』

『船内エアロック閉鎖』

『減圧開始』


 これにより、エアロック内部が真空に近い状態になる。

 ヘリクゼンのコックピットは、改造によって気密状態が保たれているだろう。


『減圧終了』

『第7ハッチ解放準備!』

『解放準備よし!』

『第7ハッチ、開きます!』


 上部甲板から謎の煙とともにヘリクゼンがせりあがる。


『ヘリクゼン、発射位置に固定完了』

『最終ロックボルト解除!』


 足を固定していた拘束具が解放される。

 これにより、ヘリクゼンは自由の身になった。


『ヘリクゼン、発進せよ!』


 その命令とともに、一基は補助操縦桿を思いっきり押し込む。

 操縦は考えずとも分かる。

 初めての無重力状態でも、一基は遜色変わらない操縦を見せた。


「行くぜ!あいつらをぶっ殺す!」


 そう言って突撃する。

 その頃、異星人のほうは混乱に陥っていた。


「くそっ!自衛用のミサイルすらまともに攻撃できんのか!?」

「これで万事休すか……」

「まだです!砲撃戦に持ち込めば、まだチャンスはあります!」

「せいぜい小惑星破壊用のレーザーしかないのに、どうやって戦うというのかね!?」


 そんなことを言っていると、ある報告が入ってくる。


「指揮官!敵艦から高エネルギー物体が接近中!」

「なんだと!?」

「このエネルギー波……間違いありません!該当者です!」


 ヘリクゼンは、あっという間に母艦との距離を縮める。


「いくぜぇ……!」


 そういって、熱光線砲を発射する。

 その出力は、以前のものに比べ遥かに高く、母艦の表面装甲を簡単に貫く。


「第13から24、31から55区画損傷!」

「気密ハッチ自動封鎖!」

「たったの一撃でこれか……?」

「化け物め……!」


 それに触発されたかのように、神武も攻撃を続行しようとしていた。


「主砲射撃準備完了!」

「主砲用レールガン、電力供給開始」

「自動装填、ヨシ!」

「艦長、攻撃準備完了しました」

「攻撃開始!」

「主砲、うちーかたーはじめ!」


 砲口から爆炎が上がる。

 それにより、砲弾が母艦へと飛んでいく。

 十数分後、着弾するものの当たり所が悪いのか、装甲によって阻まれる。


「攻撃が……」

「うろたえるな!攻撃が通るまで攻撃を続けるんだ!」


 艦長の指示により、次々と砲弾を発射する神武。

 それに押されるように、ヘリクゼンは母艦へと突撃する。


「ミサイル発射!」


 ヘリクゼンの全身からミサイルが発射される。

 無尽蔵に発射されるミサイルの群れは、母艦を包み込まんとしていた。

 そのまま弾着する。

 一発一発は微々たるものであるが、それを何十発、何百発も食らえば、ダメージは蓄積されていく。


「指揮官!このままでは持ちません!」

「クソッ!もうなんでもいい!攻撃に使えるものはすべて出せ!」


 残弾少ないミサイル。小惑星破壊用のレーザー。レーダーの出力を調整した高周波攻撃。

 試せる手段はなんでも試す。

 しかしそれでも、ヘリクゼン、一基を止めるには至らない。

 母艦とヘリクゼンの距離はすでに500kmを切っていた。


「熱光線砲、発射!」


 2度目のヘリクゼル熱光線砲。

 これによって、母艦にはさらに穴が空く。


「もうだめです!これ以上持ちそうにありません!」

「どうして……どうしてこうなった……!」


 異星人の指揮官はうなだれるほかなかった。

 その間にも、ヘリクゼンは依然接近しつつある。

 そしてその距離は10kmを切った。


「うおおお!」


 ヘリクゼンは、握りこぶしを作り、そのまま母艦衝突と同時にぶん殴る。

 それにより、ヘリクゼンは衝撃とともに母艦の内部へと侵入した。


「おら出てこい野郎ども!俺がきれいに潰してやる!」


 そのまま一基は、異星人の母艦の内部で大暴れする。

 そのうち、一基はある空間へと出た。


「これは……動力炉か?」


 いつぞやで見た異星人の動力炉がそこにはあった。


「ということは、こいつをぶっ壊せば俺の勝利だな!」


 そういって、一基は補助用操縦桿を強く握る。

 すると、ヘリクゼンの全身から、緑色の光があふれ出た。


「うぁぁぁ!」


 一基の声とともに、ヘリクゼンの全身から熱光線砲が発射される。

 外部からの攻撃にはそこそこ強い母艦でも、内部からの攻撃には弱い。

 この攻撃によって、異星人の母艦はありとあらゆる所で爆発を起こす。

 そしてその影響は動力炉にも起こる。

 熱光線砲が直撃した動力炉は、異様な振動を起こしながら、光り輝く。

 それを確認した一基は、突っ込んできた道を戻りながら、母艦から脱出する。

 母艦を飛び出し、いくらか離れたところで、異星人の母艦は大爆発を起こした。


「これで終わりか。もう少し手ごたえがあると思ったんだがな」


 そういって一基は、ヘリクゼンを神武へと向かわせるのだった。

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