第24話 進化
ベコッ、ベコッといやな音を立てて、コックピットが凹んでいく。
各種モニターが破損し、外の様子が確認出来なくなってくる。
『ははははっ!おしまいだな該当者!』
一基は最後の抵抗と言わんばかりに補助用操縦桿を動かすものの、ゼシリュフク級の出力が高いのかヘリクゼンはまったく動かない。
それどころか、ヘリクゼンの腕が破損し、エラーを吐き出すようになった。
「畜生!」
一基は画面を叩く。
それは、一基の苛立ちを表していた。
「俺に、ヘリクゼンにもっと力があれば……!」
一基は、強く願った。
力。全てを制するための方法。
一基はそれを欲した。
その瞬間、ヘリクゼンの様子に変化が見られる。
その様子は、ヘリクゼンそのものに現れた。
『な、何だ!?』
ゼシリュフク級は、その様子に驚く。
それもそうだろう。ヘリクゼン全体が光を放って輝きだしたのだから。
それはまるで、投光器のように強い光を放つ。
すると、ヘリクゼンから甲高い金属音が聞こえてくる。
それと同時に、ゼシリュフク級の手に異変が起きた。
手の中からヘリクゼンが膨張してくるようである。
いや、実際に膨張していた。
一基とヘリクゼルの特殊な性質として、ヘリクゼルそのものが増殖するというものがある。
しかしそれは、一基の手の届く場所までという制約があるのだ。
それにも関わらず、ヘリクゼン全てが光り輝いている。
「うぉぉぉ!」
一基は精神力を高める。
それに反応するように、ヘリクゼルは輝きを増していた。
そして質量保存の法則を無視して、質量を増加させていく。
それは、ゼシリュフク級の手を破壊しながら、どんどん大きくなってく。
『な、なんだこれは!』
敵は驚いている。
そんな敵を置き去りにして、ヘリクゼンは巨大化を続けていた。
それはヘリクゼンの形を保ちながらも、ヘリクゼンとは違うような形となっていく。
『こ、こいつ……!』
敵は驚くばかりである。
ヘリクゼンはゼシリュフク級と同じ程度に巨大化した。
ヘリクゼンはよりヒト型に、そしてよりシャープになる。
「一基様……」
世話人は遠くからヘリクゼンの様子を見る。
一基はコックピットの中で、力を込めていた。
「俺に……もっと力を……!」
そして巨大化が終わる。
それは、以前のヘリクゼンとは似ても似つかぬ姿であった。
ヘリクゼンの新しい形態、ヘリクゼンver.2、対大型兵器対応型である。
「うぉぉぉ!」
何もかもがパワーアップしたヘリクゼンは、そのままゼシリュフク級に襲い掛かる。
顔面に向かってパンチを繰り出す。
それに対して、ゼシリュフク級は対応することが出来ず、まともに食らってしまう。
『ぐぁっ!』
それを食らった敵は、そのまま吹き飛ばされる。
その衝撃によって、敵のゼシリュフク級の頭部が破損した。
『クソ、メインカメラが……!』
「てめぇ!絶対ぶっ殺す!」
一基の殺意が表に出てくる。
それを体現するように、ヘリクゼンの戦闘力は大幅に向上した。
ゼシリュフク級と対等に戦うことが出来る。
そのまま格闘戦に入る。
「おらぁ!」
『クソがぁ!』
ボクシングのような殴り合いになる。
しかし、互角の戦いだ。お互い決定打に欠けていた。
一基は再び願う。
「俺に……、俺にもっと力を!」
そう願った。
その時、頭の中にある情報が流れこむ。
新しい武器である。
出力の上がったヘリクゼル熱光線砲。ヘリクゼル製誘導ミサイル。近接戦闘用の刀剣。
それらがヘリクゼンの体から生成出来ることを知る。
「使えってことか……!」
そういって、一基はヘリクゼンの能力を最大限に引き出そうとした。
まずは熱光線砲だ。
これまで以上の出力のレーザーを放射する。
熱光線砲がゼシリュフク級に命中した。その瞬間、命中した肩部が文字通り消滅する。
『な……!?』
敵は驚く。
それもそうだろう。これまで焦げ目がつく程度の出力でしかなかった光線が、何倍にもなっていたからだ。
敵は一瞬で悟る。これは負けると。
敵のゼシリュフク級は思わず後ずさりしてしまう。
その瞬間を、一基は見逃さなかった。
一基は腰から、刀剣を生成しながら引き抜く。
そしてそれを構えて、ゼシリュフク級に突っ込む。
「うぉぉぉ!」
ヘリクゼンが構えて、振りかざす。
そのまま脚部の付け根に命中する。
それによって、ゼシリュフク級は脚部の配線系を絶たれた。
『こ、こんなことがあってたまるか……!』
敵は混乱する。
そのままゼシリュフク級の機体をどんどん叩いて、斬って、破壊しまくる。
これによって、敵のゼシリュフク級は壊れていった。
そして一基は、そのまま敵のコックピットと思われる場所に向かって、刀剣を振り下ろす。
それによって、ゼシリュフク級は動かなくなった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
そういって、ヘリクゼンの勝利に終わった。
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